大学有機化学の完全攻略ガイド【全3巻70章・独学の学習ロードマップ】
大学で学ぶ有機化学は、暗記量が多く見えて実は少数の原理の組み合わせでできています。構造と結合から始まり、立体化学・反応機構・官能基ごとの反応・構造決定を経て、生体分子と高分子にたどり着く——この流れを一度通しで押さえると、個々の反応が「覚えるもの」から「導けるもの」に変わります。
このページは、大学有機化学の全範囲を章立てで日本語解説するシリーズのまとめページです。第1章「構造と結合」から第31章「合成高分子」まで、各章の解説記事へのリンクを分野別・難易度付きで整理しています。大学の定期試験対策にも院試対策にも使える順序で並べました。
第1巻「基礎編」— 電子はどこにあるか
第1巻は個別の反応を一切扱いません。反応を読むための道具を先に全部そろえる、という構成です。遠回りに見えますが、ここを固めると第2巻以降で覚える量が激減します。
第1部 分子を描く(第1〜4章)
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第1章 構造式という言語 |
構造式を読み書きし、分子式から候補を絞れる | 構造式の書き方/官能基の種類/IUPAC命名法/不飽和度 |
| 第2章 ルイス構造と形式電荷 |
ルイス構造を書き、形式電荷を正しく置ける | オクテット則/ルイス構造の描き方/形式電荷 |
| 第3章 原子軌道から混成軌道へ |
混成から結合の性質を説明できる | 混成軌道/σ結合とπ結合/電子配置と分子軌道 |
| 第4章 分子の形と物性 |
分子の形を決め、極性を値として扱える | VSEPR/分子間力/双極子モーメント |
第2部 電子のかたより(第5〜8章)
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第5章 極性と電子効果 |
どこがδ+でどこがδ−かを読める | 電気陰性度と極性/誘起効果と共鳴効果 |
| 第6章 共鳴と共役 |
電子がどこまで広がっているかを判断できる | 共鳴/共役 |
| 第7章 分子軌道とフロンティア軌道 |
軌道の高さで反応性を語れる | HOMOとLUMO/分子軌道法 |
| 第8章 酸と塩基 — 有機化学最強の物差し |
pKaで反応の向きを数値で決められる | 酸と塩基/pKa表の使い方/ルイス酸とルイス塩基/HSAB則 |
第3部 反応中間体(第9〜10章)
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第9章 炭素の反応中間体 |
どの中間体を通るかを安定性から選べる | カルボカチオンの安定性/カルボアニオン(カルバニオン)の安定性/ラジカル反応/結合解離エネルギー |
| 第10章 そのほかの活性種 |
カルベン・ナイトレン・ベンザインを見分けられる | カルベン/ベンザイン機構/ナイトレン |
第4部 三次元で考える(第11〜13章)
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第11章 配座 — 結合は回る |
回る結合と回らない結合を区別できる | 立体配座/配置と配座の違い/立体障害 |
| 第12章 配置とキラリティー |
R/S・E/Zを機械的に判定できる | キラリティー/E/Z表記とCIP順位則/フィッシャー投影式/異性体 |
| 第13章 光学活性と不斉 |
光学活性と不斉を測定の言葉で扱える | 旋光性/エナンチオマー/ラセミ体と光学分割/プロキラリティー |
第5部 反応を読む言語(第14〜17章)
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第14章 巻矢印の文法 |
巻矢印を自分の手で正しく引ける | 巻矢印の文法/求核剤と求電子剤 |
| 第15章 反応の型とエネルギー図 |
エネルギー図を読み、遷移状態を推定できる | 有機反応の分類/ハモンドの仮説/遷移状態/反応座標図の読み方 |
| 第16章 速度を決めるもの |
速度と平衡を分けて考えられる | 反応速度と化学平衡/速度論支配と熱力学支配/律速段階と反応次数/同位体効果 |
| 第17章 反応を左右する脇役 |
脱離基・溶媒・触媒を判断材料に使える | 脱離基/プロトン性・非プロトン性溶媒/有機化合物の酸化数/酸触媒と塩基触媒 |
第2巻「反応編」— 電子はどこへ流れるか
第2巻は反応を8つの舞台に分けます。反応名で数えると数百ありますが、電子がどこで動くかで数えると8つです。舞台ごとに判断の急所は1つか2つしかないので、名前を知らない反応でも機構が書けるようになります。
第1部 sp3炭素の舞台(第1〜6章)
脱離基が去るとき、何が起きるか
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第1章 舞台をつくる — アルキルハライドと脱離基 |
C−X を見たら級数を数え、脱離基の良し悪しを言える | アルキルハライドの基本/有機ハロゲン化合物/ハロアルカンの作り方 |
| 第2章 求核置換 — SN2 と SN1 |
基質・求核剤・溶媒から、どちらの機構かを決められる | SN1 と SN2 の違い/立体障害と SN2 |
| 第3章 脱離 — E2・E1・E1cB |
3つの脱離を見分け、どちらのアルケンができるか言える | E1 と E2/anti 脱離と環の配座/E1cB と4経路の整理/ザイツェフ則 |
| 第4章 4つの経路を判定する |
置換か脱離か、一次か二次かを手順で決められる | 4つの経路の判定/生体内の求核置換/比較問題の解き方 |
| 第5章 アルコールを舞台に載せる — OH を脱離基に変える |
去れない OH を、脱離基に作り変えられる | アルコールの反応/塩化チオニル/光延反応/アルコールとフェノール |
| 第6章 エーテルとエポキシド |
エポキシドの開環が、条件でどちら側になるか言える | エーテルとエポキシド/エポキシドの開環/クラウンエーテル/ペイン転位 |
第2部 π結合の舞台(第7〜10章)
電子が余っている炭素は、自分から攻める
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第7章 π結合はなぜ自分から攻めるのか — 求電子付加とマルコフニコフ則 |
マルコフニコフ則を「より安定なカチオンを経る」と言い直せる | アルケンへの求電子付加/マルコフニコフ則/アルケンの構造と反応性 |
| 第8章 付加の立体化学 — syn か anti か |
どちらの炭素に、どちらの面から入るかを同時に決められる | ハロゲン化と anti 付加/水和の2つの道/ヒドロホウ素化・酸化/付加の立体化学 |
| 第9章 π結合に酸素を入れる・切る |
syn ジオールと anti ジオールを作り分けられる | mCPBA によるエポキシ化/ジヒドロキシ化/オゾン分解/カルベンの付加 |
| 第10章 アルキンの舞台 — sp 炭素の酸性度を武器にする |
アセチリドで炭素鎖を伸ばし、還元をどこで止めるか選べる | 末端アルキンの酸性度/アセチリドのアルキル化/アルキンの還元と酸化/アルキンへの付加 |
第3部 カルボニル炭素の舞台(第11〜17章)
電子が足りない炭素へ、何が来るか
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第11章 カルボニル炭素はなぜ攻撃されるのか — 求核付加の型 |
四面体形中間体から何が出ていけるかで、付加と置換を分けられる | アルデヒドとケトンの求核付加/反応性の序列/カニッツァロ反応 |
| 第12章 炭素求核剤 — Grignard 試薬と有機金属 |
極性の反転を使って、炭素で炭素を攻められる | グリニャール試薬と Grignard 反応 |
| 第13章 オレフィン化 — C=O を C=C に変える |
二重結合を狙った位置に置ける | Wittig 反応/Julia-Kocienski オレフィン化/Zweifel オレフィン化 |
| 第14章 ヘテロ原子求核剤 — 水和・アセタール・イミン・エナミン |
可逆な付加を、保護基として使える | アセタールの生成/イミン/エナミン/還元的アミノ化 |
| 第15章 求核アシル置換 — カルボン酸誘導体の階段 |
誘導体の反応性を脱離基の良さで並べ、階段を上れる | カルボン酸誘導体/付加-脱離機構/エステル化/カルボン酸とニトリル |
| 第16章 還元と酸化 — C=O と C−OH を行き来する |
何段動かすか・止めたいか・ほかを残したいかで試薬を選べる | アルコールの酸化/酸化試薬の比較/DIBAL 還元/C=O をメチレンまで落とす |
| 第17章 骨格が組み替わる — カルボニルからの1,2-転位 |
6つの人名反応を1つの型に畳める | Baeyer-Villiger 酸化/Beckmann 転位/Hofmann 転位/Curtius 転位 |
第4部 α位の舞台(第18〜21章)
攻められる側だった炭素を、攻める側に変える
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第18章 エノールとエノラート — 隣の炭素が求核剤に変わる |
塩基を「全部作る側」か「少しだけ作る側」かで振り分けられる | ケト-エノール互変異性/エノラートとα置換/LDA |
| 第19章 α位の置換 — ハロゲン化とアルキル化 |
止まる反応と止まらない反応を、使い分けられる | マロン酸エステル合成/アセト酢酸エステル合成/ヨードホルム反応 |
| 第20章 アルドール反応と Claisen 縮合 |
付加か置換かを、脱離基の有無だけで決められる | カルボニル縮合反応/アルドール反応/Claisen 縮合/向山アルドール反応 |
| 第21章 共役付加とその先 — Michael・Mannich・Robinson |
求核剤の硬さから 1,2-付加と 1,4-付加を判定できる | Michael 付加/Mannich 反応/Gilman 試薬 |
第5部 芳香環の舞台(第22〜25章)
安定であることが、どうやって道筋を決めるか
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第22章 芳香族性 — 電子は豊富なのに、なぜ付加しないのか |
芳香族・反芳香族・非芳香族を手順で判定できる | ベンゼンと芳香族性/Hückel の 4n+2 則/芳香族イオン/ピリジンとピロール |
| 第23章 芳香族求電子置換 — 5つの反応は同じ型 |
5つの反応を「求電子剤の作り方の違い」に畳める | 求電子芳香族置換/ニトロ化・スルホン化・ハロゲン化/Friedel-Crafts の2つ |
| 第24章 配向性 — 多置換ベンゼンを設計する |
配向性を覚えずに中間体から導き、入れる順番を決められる | 置換基効果と配向性/多置換ベンゼンの合成戦略/効果の加算性 |
| 第25章 芳香環のそのほかの舞台 — SNAr・ベンザイン・側鎖 |
求電子置換以外の道を見分けられる | 求核芳香族置換(SNAr)/ベンザイン機構/芳香族化合物の酸化と還元/ジアゾニウム塩と Sandmeyer 反応 |
第6部 協奏の舞台(第26〜27章)
中間体を経ないとき、何が結果を決めるか
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第26章 ペリ環状反応の文法 — 軌道の対称性が許すかどうか |
選択則を表ではなく1行の規則から作れる | 周辺環状反応と Woodward-Hoffmann 則/ペリ環状反応の基本/共役系と分子軌道 |
| 第27章 Diels-Alder 反応とシグマトロピー転位 |
生成物を立体まで書き、逆合成で切る場所を決められる | Diels-Alder 反応/Claisen 転位/クリック反応 |
第7部 ラジカルの舞台(第28〜29章)
電子が1個ずつ動くとき、何が行き先を決めるか
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第28章 ラジカル連鎖の文法 — 巻矢印が片羽になる |
連鎖を3段で書き、成長段の和で検算できる | 極性反応とラジカル反応/結合解離エネルギー(BDE)/アリル位の安定性 |
| 第29章 ラジカルを使う反応 |
条件(光・過酸化物・濃度)から舞台を読める | NBS によるラジカル臭素化/ラジカル付加と重合/Barton-McCombie 脱酸素化/Hunsdiecker 反応/自動酸化 |
第8部 金属中心の舞台(第30〜32章)
金属の上で、結合はどう作られるか
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第30章 触媒サイクルの読み方 — 金属の上で結合を作る |
サイクルを輪として読み、酸化数の帳尻で検算できる | 有機金属カップリングの基本 |
| 第31章 クロスカップリング — 6種はどこが違うのか |
基質と官能基に応じて、使うカップリングを選べる | 鈴木-宮浦カップリング/根岸カップリング/薗頭カップリング/Heck 反応/Buchwald-Hartwig アミノ化 |
| 第32章 メタセシスと、金属がひらくそのほかの舞台 |
「この舞台では起こらない」を「別の舞台なら起こる」に言い換えられる | オレフィンメタセシス/NHK 反応/Wacker 酸化 |
第3巻「応用編」— 答えの側から読む
第3巻は矢印を反対に向けます。第1巻・第2巻は「構造 → 性質」「試薬 → 生成物」という一方通行でしたが、ここでは結果を渡されて原因を当てます——スペクトルから構造を、目標分子から経路を、欲しい性質から材料を。新しい原理はほとんど出てきません。出てくるのは、使う順序です。
第1部 見る — 分子を見ずに構造を決める(第1章〜第7章)
スペクトルのデータから、構造を1つに絞る。数えるものは4つ(原子数・不飽和度・官能基・環境の数)で、全部の帳尻が合って初めて構造が決まります。
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第1章 分子式を決める — 質量分析と不飽和度 |
精密質量と同位体ピークから分子式を1つに決め、不飽和度で候補を絞れる | 構造決定(MS・IR)/不飽和度/質量分析の基礎/機器分析の全体像 |
| 第2章 骨格を推理する — フラグメンテーション |
α開裂・McLafferty 転位・特徴的なフラグメントから骨格の断片を読める | フラグメンテーション解析 |
| 第3章 官能基を当てる — IR は結合のばねを見ている |
C=O の位置を 1715 から上下に動かして、官能基の種類まで言える | 基準振動数の表/IR 分光法の原理 |
| 第4章 共役を測る — UV-Vis と色 |
λmax と ε から共役の長さを読み、π→π* と n→π* を見分けられる | 共役化合物と紫外分光/芳香族化合物の分光 |
| 第5章 1H NMR — 化学シフト・積分・分裂 |
化学シフト・積分比・n+1 則から水素の種類と隣接関係を決められる | 構造決定(NMR)/NMR化学シフト一覧表と読み方 |
| 第6章 13C・DEPT・2D NMR — 炭素をつなぐ |
DEPT で級数を決め、HMBC で四級炭素と C=O までつなげる | 13C NMR と DEPT/2次元 NMR |
| 第7章 立体を決める — 相対配置と絶対配置 |
J 値・NOE で相対配置を、X線・Mosher 法で絶対配置を決められる | 絶対配置と相対配置の決め方/キラル医薬品 |
第2部 作る — 目標分子から原料へ(第8章〜第12章)
作りたい分子を渡されて、出発物と手順を決める。切ってよいのは、その結合の作り方を知っている場所だけです。
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第8章 逆合成という考え方 — どこを切るか |
官能基の位置関係から、使うべき反応と切断点を選べる | 逆合成解析/逆合成の基本概念/合成計画と戦略 |
| 第9章 シントンと合成等価体 — 切った先を試薬に翻訳する |
紙の上の断片(シントン)を実在の試薬に翻訳でき、極性の反転も使える | ビルディングブロックの選び方/有機試薬ガイド |
| 第10章 官能基変換の地図 — 酸化数で行き先を選ぶ |
何段動かすかで試薬を選び、行き過ぎを止める工夫まで設計できる | 官能基変換(FGI)/DMSO 酸化の比較/官能基の反応性 |
| 第11章 保護基 — 反応させない技術 |
外し方で保護基を分類し、直交性を使って脱保護の順序を設計できる | 保護基と直交性/PMB 保護基/シリル保護基 |
| 第12章 計画を実行に移す — 天然物・医薬品・院試問題 |
収率・スケール・後処理・原子効率まで含めた実行可能な計画にできる | ボンビコールの合成(東大院試2025)/カスケード反応/抽出(後処理)/創薬とコンビナトリアル化学/環境に優しい有機反応 |
第3部 生きる — 自然が選んだ分子(第13章〜第18章)
生体分子の反応を第2巻の舞台番号に翻訳して読みます。生化学の暗記に戻さないことが、この部の存在理由です。
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第13章 糖 — 立体が機能を決める |
Fischer 投影式とアノマーを扱い、J 値1つで α/β を決められる | 糖質(生体分子)/Schmidt グリコシル化 |
| 第14章 アミノ酸とペプチド — 酸と塩基が主役 |
等電点を「中性種を先に決める」手順で出し、固相合成の直交性を読める | アミノ酸・ペプチド・タンパク質/アミノ酸 |
| 第15章 タンパク質と酵素 — 形が機能になる |
酵素が「していないこと」を言え、クエン酸シンターゼを舞台番号で説明できる | アミノ酸・ペプチド・タンパク質 |
| 第16章 脂質とテルペン — 鎖の形と C5 単位 |
融点を鎖の折れで説明し、炭素数が5の倍数ならテルペノイドを疑える | 脂質(油脂・セッケン・テルペノイド・ステロイド)/テルペン/Liebermann-Burchard 反応 |
| 第17章 核酸 — 4文字で書かれた分子 |
DNA の伸長を「リン上の求核置換」と書け、2′-OH の有無が何を決めるか言える | 核酸(DNA・RNA・PCR) |
| 第18章 代謝 — 体内で起きている有機反応 |
約50段の代謝反応を9つの型に畳み、不利な段の共役を特定できる | 代謝経路の有機化学 |
第4部 つなぐ — 高分子と材料(第19章〜第21章)
欲しい性質から、構造と作り方を逆算します。最良の高分子はなく、どの性質を捨てるかを決めるのが設計です。
| 章 | 読み終えたときにできること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 第19章 重合の型 — 連鎖成長と逐次成長 |
モノマーの置換基を見て開始剤を選び、重合の型から構造を言える | 合成高分子(連鎖成長・逐次成長)/重合反応の種類/アルケンへのラジカル付加と重合 |
| 第20章 分子量分布と物性 — 同じ繰り返し単位でも別物になる |
Tg と結晶性を独立な2軸として扱い、性質から主鎖の構造を逆算できる | 高分子の熱的性質/高分子の耐熱性/高分子の溶解性/高分子の耐薬品性/TG-DTA(熱分析) |
| 第21章 機能を設計する — 材料としての有機分子 |
欲しい機能(導電・発光・配向・分解)から必要な電子の状態と構造を決められる | 医薬品と材料科学への応用/高分子材料の性質と応用 |
参考 — 大学有機化学 全章の解説一覧
ここから先は参考です(第1〜3巻の素材でもあります)。大学の授業やほかの教科書に合わせて読みたい場合は、こちらの章立てのまま進めても構いません。第2巻では、この中の反応を8つの舞台の順に並べ替えて扱います。
全章を分野別に8つのブロックに分けて整理しました。難易度(★)は本シリーズでの目安で、★が多いほど前提知識を必要とします。
基礎編:構造・結合・立体化学(第1〜6章)
有機化学全体の土台となるブロックです。特に第2章の酸塩基(pKa)と共鳴、第6章の反応機構の考え方は、以降のすべての章で繰り返し使います。
| 章 | 記事 | 難易度 |
|---|---|---|
| 序章 | 有機化学は暗記科目ではない|数百の反応を8つの型に畳む勉強法 | ★☆☆☆ |
| 第1章 | 構造と結合|sp3・sp2・sp 混成軌道の違い | ★☆☆☆ |
| 第2章 | 極性共有結合・酸と塩基|電気陰性度・共鳴・pKa | ★★☆☆ |
| 第3章 | アルカンと立体化学|IUPAC命名法・コンフォメーション | ★★☆☆ |
| 第4章 | シクロアルカンと立体化学|環ひずみ・イス形配座 | ★★★☆ |
| 第5章 | 四面体中心の立体化学|R/S配置・ジアステレオマー・メソ化合物 | ★★★☆ |
| 第6章 | 有機反応の概観|反応の種類・機構・エネルギー図 | ★★☆☆ |
炭化水素の反応(第7〜11章)
アルケン・アルキン・ハロゲン化アルキルの反応を学ぶブロックです。第11章のSN1・SN2・E1・E2は大学有機化学で最重要の単元で、院試でも頻出です。
| 章 | 記事 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第7章 | アルケン:構造と反応性|マルコフニコフ則・カルボカチオン | ★★☆☆ |
| 第8章 | アルケンの反応と合成|ハロゲン化・水和・酸化・還元 | ★★★☆ |
| 第9章 | アルキンと有機合成入門|アセチリドアニオン・逆合成解析 | ★★★☆ |
| 第10章 | 有機ハロゲン化合物|ラジカルハロゲン化・Grignard試薬 | ★★★☆ |
| 第11章 | アルキルハライドの反応|SN1・SN2・E1・E2・E1cB | ★★★★ |
構造決定と共役(第12〜14章)
「作った化合物の構造をどう確かめるか」を学ぶブロックです。MS・IR・NMRのスペクトル読解は院試の構造決定問題に直結します。第14章では共役系の化学としてDiels-Alder反応が初登場します。
| 章 | 記事 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第12章 | 質量分析・赤外分光法による構造決定|MS・IRの読み方 | ★★★☆ |
| 第13章 | NMR分光法による構造決定|化学シフト・スピン-スピン分裂 | ★★★☆ |
| 第14章 | 共役化合物と紫外分光法|Diels-Alder反応・UV分光法 | ★★★☆ |
芳香族化学(第15〜16章)
ベンゼンを中心とする芳香族化合物のブロックです。ヒュッケル則による芳香族性の判定と、求電子芳香族置換(EAS)の配向性は定期試験・院試の定番テーマです。
| 章 | 記事 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第15章 | ベンゼンと芳香族性|ヒュッケル則・芳香族イオン・複素環 | ★★★☆ |
| 第16章 | 求電子芳香族置換反応|Friedel-Crafts・置換基の配向性 | ★★★☆ |
アルコール・エーテル(第17〜18章)
酸素官能基のブロックです。アルコールの酸化・還元・保護基、エポキシドの開環反応の位置選択性(酸性条件と塩基性条件の違い)が頻出ポイントです。
| 章 | 記事 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第17章 | アルコールとフェノール|酸化・Grignard反応・保護基 | ★★★☆ |
| 第18章 | エーテルとエポキシド|Williamson合成・エポキシド開環 | ★★★☆ |
カルボニル化学(第19〜23章)
シリーズ後半の山場です。求核付加・求核アシル置換・α置換・縮合という4つの反応型でカルボニル化学の全体を体系化します。院試の合成問題はこのブロックからの出題が最も多く、5章連続でじっくり学ぶ価値があります。
| 章 | 記事 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第19章 | アルデヒドとケトン|求核付加・イミン/エナミン・Wittig反応 | ★★★★ |
| 第20章 | カルボン酸とニトリル|酸性度・Henderson-Hasselbalch | ★★★☆ |
| 第21章 | カルボン酸誘導体|求核アシル置換・エステル・アミド | ★★★★ |
| 第22章 | カルボニルα置換反応|エノラート・マロン酸エステル合成 | ★★★★ |
| 第23章 | カルボニル縮合反応|アルドール・Claisen・Michael・Robinson | ★★★★ |
アミンと生体分子(第24〜29章)
窒素官能基から生化学へつながるブロックです。糖・アミノ酸・脂質・核酸・代謝と、生命科学系の院試・薬学系の試験で重要度が高い章が並びます。
| 章 | 記事 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第24章 | アミンと複素環|塩基性・合成・反応 | ★★★☆ |
| 第25章 | 炭水化物(糖質)|Fischer投影式・アノマー・二糖・多糖 | ★★★☆ |
| 第26章 | アミノ酸・ペプチド・タンパク質|等電点・Edman分解・酵素 | ★★★★ |
| 第27章 | 脂質|けん化・リン脂質・プロスタグランジン・ステロイド | ★★★★ |
| 第28章 | 核酸|DNA二重らせん・複製・転写・翻訳・PCR | ★★★★ |
| 第29章 | 代謝経路の有機化学|β酸化・解糖系・クエン酸サイクル | ★★★★ |
発展編(第30〜31章・付録)
物理有機化学・高分子化学の発展ブロックです。第30章のペリ環状反応(Woodward-Hoffmann則)は難関大学院の入試で差がつくテーマです。
| 章 | 記事 | 難易度 |
|---|---|---|
| 第30章 | 周辺環状反応|電子環状・付加環化・シグマトロピー転位 | ★★★★★ |
| 第31章 | 合成高分子|連鎖成長重合・逐次成長重合・Ziegler-Natta触媒 | ★★★☆ |
| 付録 | 多官能性化合物のIUPAC命名法|優先順位表とpKa一覧 | ★★★☆ |
学習ロードマップ:全章一覧をどの順番で読むか
第1巻「基礎編」を先に通したうえで、全章一覧を目的別に読むなら次の順序をお勧めします。大学の授業が先に進んでいる場合は、授業の範囲をこの順で追いながら、つまずいたら第1巻の該当章へ戻るという使い方が現実的です。
【推奨学習順序】
STEP 1:土台づくり(第1・2・6章)
└─ 混成軌道 → 酸塩基(pKa)・共鳴 → 反応機構の読み方
※ この3章の理解度が以降の全章の吸収効率を決める
STEP 2:立体化学(第3〜5章)
└─ 命名法・配座解析 → イス形配座 → R/S・ジアステレオマー
STEP 3:反応各論の核心(第7〜11章)
└─ アルケン・アルキンの付加反応 → SN1/SN2・E1/E2
※ 第11章は院試最頻出。時間をかけて完全習得する
STEP 4:構造決定(第12〜13章)
└─ MS・IR → NMR(院試の構造決定問題に直結)
STEP 5:芳香族とカルボニル(第14〜23章)
└─ Diels-Alder → 芳香族性・EAS → カルボニル4反応型
※ 第19〜23章は合成問題の宝庫。ここまでで院試範囲の大半をカバー
STEP 6:生体分子・発展(第24〜31章)
└─ 専攻・志望分野に合わせて取捨選択
(生命系→第25〜29章、物理有機・合成系→第30〜31章)
演習用の問題集を選ぶときは有機化学の問題集・演習書おすすめ12冊を参考にしてください。
関連シリーズ:反応・試薬の横断整理
章別の解説が「体系に沿った縦の学習」だとすれば、以下のシリーズは反応・試薬ごとに横断整理した「横の学習」です。組み合わせて使うと理解が立体的になります。
| シリーズ | 内容 | リンク |
|---|---|---|
| 有機化学反応ガイド | SN1/SN2・アルドール・Diels-Alderなど10大反応を機構別に深掘り | 反応ガイドを見る |
| 有機化学試薬ガイド | LDA・DIBAL・mCPBA・Grignard試薬など頻出試薬の使い分け | 試薬ガイドを見る |
| 元素図鑑 | 有機化学の視点から周期表を再整理(電気陰性度・脱離基・触媒金属) | 元素図鑑を見る |
官能基ごと・人物ごとに整理した一覧もあります:官能基シリーズ総まとめと有機化学者列伝まとめ。
よくある質問(FAQ)
別々の章立てが3つ並んでいます。第1巻の17章と第2巻の32章はカズ塾が独自に組み直したもので、第1巻は「電子がどこにあるか」(構造・立体・共鳴・酸塩基・巻矢印)、第2巻は「電子がどこへ流れるか」(反応を8つの舞台に分ける)を扱います。一方の全章一覧31章は、大学の授業や一般的な教科書に近い並びで、構造決定や生体分子まで含みます。これから独学を始めるなら第1巻 → 第2巻の順に、授業の進度に合わせるなら全章一覧から入ってください。このページ内では、どちらの番号かが分かるように節ごとに明記しています。
可能です。有機化学は前提知識の積み上げが素直な科目で、順序どおりに進めれば独学でも十分に到達できます。本シリーズの章別解説記事は、各章の要点・反応機構・つまずきやすいポイントを日本語で整理しているため、講義や教科書の予習・復習と組み合わせると理解が速くなります。
大学院入試の有機化学では、全章一覧の第11章(SN1・SN2・E1・E2)、第16章(求電子芳香族置換)、第19〜23章(カルボニル化学)からの出題が特に多い傾向があります。まずこの7章を完全に理解し、次に第12〜13章(MS・IR・NMRによる構造決定)を固めるのが効率的です。難関校を狙う場合は第30章(ペリ環状反応)まで押さえておくと安心です。
まず第1巻「基礎編」を通すのが最短ですが、全章一覧から入る場合は第1章(構造と結合)・第2章(酸と塩基・共鳴)・第6章(有機反応の概観)の3章から始めてください。この3章は有機化学全体の「文法」にあたる内容で、ここを固めると第7章以降の個別反応の理解が一気に速くなります。逆にこの土台を飛ばして反応の暗記に進むと、章が進むほど負担が大きくなります。
定期試験の範囲外であれば一時的に飛ばして第15章以降の反応各論へ進んでも支障はありません。ただし大学院入試では未知化合物の構造決定問題(MS・IR・NMRスペクトルの読解)がほぼ必出のため、院試を受ける予定があるなら遅くとも試験の半年前までには第12〜13章を学習することをお勧めします。
