大学で学ぶ有機化学は、暗記量が多く見えて実は少数の原理の組み合わせでできています。構造と結合から始まり、立体化学・反応機構・官能基ごとの反応・構造決定を経て、生体分子と高分子にたどり着く——この流れを一度通しで押さえると、個々の反応が「覚えるもの」から「導けるもの」に変わります。

このページは、大学有機化学の全範囲を章立てで日本語解説するシリーズのまとめページです。第1章「構造と結合」から第31章「合成高分子」まで、各章の解説記事へのリンクを分野別・難易度付きで整理しています。大学の定期試験対策にも院試対策にも使える順序で並べました。

このページの使い方
・授業・定期試験の範囲に対応する章をクリックして詳細記事へ
・独学の方は下の「学習ロードマップ」の順番で読み進める
・院試対策は反応機構の章(第6〜11章・第16章・第19〜23章)を優先
・各記事は反応機構・比較表・頻出ポイントを収録
このページはカズ塾有機化学(全3巻)の目次です。第1巻「基礎編」は電子がどこにあるかを、第2巻「反応編」は電子がどこへ流れるかを扱います(この2巻ぶんの目次が下にあります)。第3巻「応用編」は答えの側から原因を当てる(構造決定・合成計画・生体分子・高分子)を扱います。順に第1巻 → 第2巻 → 第3巻と通すのが最短です。
Contents
  1. 第1巻「基礎編」— 電子はどこにあるか
  2. 第2巻「反応編」— 電子はどこへ流れるか
  3. 第3巻「応用編」— 答えの側から読む
  4. 参考 — 大学有機化学 全章の解説一覧
  5. 学習ロードマップ:全章一覧をどの順番で読むか
  6. 関連シリーズ:反応・試薬の横断整理
  7. よくある質問(FAQ)

第1巻「基礎編」— 電子はどこにあるか

第1巻は個別の反応を一切扱いません。反応を読むための道具を先に全部そろえる、という構成です。遠回りに見えますが、ここを固めると第2巻以降で覚える量が激減します。

まずここから
・序章:有機化学は暗記科目ではない— なぜこの順で学ぶのか、全3巻の地図
・読み終えたら 終章:電子が動く8つの舞台— 17章の道具がどこで効くかの対応表

第1部 分子を描く(第1〜4章)

章 読み終えたときにできること 解説記事
第1章
構造式という言語
構造式を読み書きし、分子式から候補を絞れる 構造式の書き方/官能基の種類/IUPAC命名法/不飽和度
第2章
ルイス構造と形式電荷
ルイス構造を書き、形式電荷を正しく置ける オクテット則/ルイス構造の描き方/形式電荷
第3章
原子軌道から混成軌道へ
混成から結合の性質を説明できる 混成軌道/σ結合とπ結合/電子配置と分子軌道
第4章
分子の形と物性
分子の形を決め、極性を値として扱える VSEPR/分子間力/双極子モーメント

第2部 電子のかたより(第5〜8章)

章 読み終えたときにできること 解説記事
第5章
極性と電子効果
どこがδ+でどこがδ−かを読める 電気陰性度と極性/誘起効果と共鳴効果
第6章
共鳴と共役
電子がどこまで広がっているかを判断できる 共鳴/共役
第7章
分子軌道とフロンティア軌道
軌道の高さで反応性を語れる HOMOとLUMO/分子軌道法
第8章
酸と塩基 — 有機化学最強の物差し
pKaで反応の向きを数値で決められる 酸と塩基/pKa表の使い方/ルイス酸とルイス塩基/HSAB則

第3部 反応中間体(第9〜10章)

章 読み終えたときにできること 解説記事
第9章
炭素の反応中間体
どの中間体を通るかを安定性から選べる カルボカチオンの安定性/カルボアニオン(カルバニオン)の安定性/ラジカル反応/結合解離エネルギー
第10章
そのほかの活性種
カルベン・ナイトレン・ベンザインを見分けられる カルベン/ベンザイン機構/ナイトレン

第4部 三次元で考える(第11〜13章)

章 読み終えたときにできること 解説記事
第11章
配座 — 結合は回る
回る結合と回らない結合を区別できる 立体配座/配置と配座の違い/立体障害
第12章
配置とキラリティー
R/S・E/Zを機械的に判定できる キラリティー/E/Z表記とCIP順位則/フィッシャー投影式/異性体
第13章
光学活性と不斉
光学活性と不斉を測定の言葉で扱える 旋光性/エナンチオマー/ラセミ体と光学分割/プロキラリティー

第5部 反応を読む言語(第14〜17章)

章 読み終えたときにできること 解説記事
第14章
巻矢印の文法
巻矢印を自分の手で正しく引ける 巻矢印の文法/求核剤と求電子剤
第15章
反応の型とエネルギー図
エネルギー図を読み、遷移状態を推定できる 有機反応の分類/ハモンドの仮説/遷移状態/反応座標図の読み方
第16章
速度を決めるもの
速度と平衡を分けて考えられる 反応速度と化学平衡/速度論支配と熱力学支配/律速段階と反応次数/同位体効果
第17章
反応を左右する脇役
脱離基・溶媒・触媒を判断材料に使える 脱離基/プロトン性・非プロトン性溶媒/有機化合物の酸化数/酸触媒と塩基触媒

第1巻の通読版(PDF)——上の表の解説はすべて無料で読めます。これを1冊に通して読めるよう全面的に書き直したのがPDF版です(A4・395ページ/図102枚)。記事どうしの重複を統合して順序を組み替えたうえで、章末演習147問と解答・部末の「型の総括」5本・pKa表・巻矢印チートシート・索引を書き下ろしで加えてあります。1記事1トピックのWeb版には構造上置けない部分です。→ 第1巻「基礎編」(500円)

第2巻「反応編」— 電子はどこへ流れるか

第2巻は反応を8つの舞台に分けます。反応名で数えると数百ありますが、電子がどこで動くかで数えると8つです。舞台ごとに判断の急所は1つか2つしかないので、名前を知らない反応でも機構が書けるようになります。

まずここから
・電子が動く8つの舞台— 第1巻の終章であり、第2巻の入口。初見の反応から舞台を決める手順
・第1巻をまだ読んでいない方へ— 第2巻は第1巻の道具(共鳴・酸塩基・巻矢印・立体)を前提にしています。上の第1巻の目次から先に通してください。

第1部 sp3炭素の舞台(第1〜6章)

脱離基が去るとき、何が起きるか

章 読み終えたときにできること 解説記事
第1章
舞台をつくる — アルキルハライドと脱離基
C−X を見たら級数を数え、脱離基の良し悪しを言える アルキルハライドの基本/有機ハロゲン化合物/ハロアルカンの作り方
第2章
求核置換 — SN2 と SN1
基質・求核剤・溶媒から、どちらの機構かを決められる SN1 と SN2 の違い/立体障害と SN2
第3章
脱離 — E2・E1・E1cB
3つの脱離を見分け、どちらのアルケンができるか言える E1 と E2/anti 脱離と環の配座/E1cB と4経路の整理/ザイツェフ則
第4章
4つの経路を判定する
置換か脱離か、一次か二次かを手順で決められる 4つの経路の判定/生体内の求核置換/比較問題の解き方
第5章
アルコールを舞台に載せる — OH を脱離基に変える
去れない OH を、脱離基に作り変えられる アルコールの反応/塩化チオニル/光延反応/アルコールとフェノール
第6章
エーテルとエポキシド
エポキシドの開環が、条件でどちら側になるか言える エーテルとエポキシド/エポキシドの開環/クラウンエーテル/ペイン転位

第2部 π結合の舞台(第7〜10章)

電子が余っている炭素は、自分から攻める

章 読み終えたときにできること 解説記事
第7章
π結合はなぜ自分から攻めるのか — 求電子付加とマルコフニコフ則
マルコフニコフ則を「より安定なカチオンを経る」と言い直せる アルケンへの求電子付加/マルコフニコフ則/アルケンの構造と反応性
第8章
付加の立体化学 — syn か anti か
どちらの炭素に、どちらの面から入るかを同時に決められる ハロゲン化と anti 付加/水和の2つの道/ヒドロホウ素化・酸化/付加の立体化学
第9章
π結合に酸素を入れる・切る
syn ジオールと anti ジオールを作り分けられる mCPBA によるエポキシ化/ジヒドロキシ化/オゾン分解/カルベンの付加
第10章
アルキンの舞台 — sp 炭素の酸性度を武器にする
アセチリドで炭素鎖を伸ばし、還元をどこで止めるか選べる 末端アルキンの酸性度/アセチリドのアルキル化/アルキンの還元と酸化/アルキンへの付加

第3部 カルボニル炭素の舞台(第11〜17章)

電子が足りない炭素へ、何が来るか

章 読み終えたときにできること 解説記事
第11章
カルボニル炭素はなぜ攻撃されるのか — 求核付加の型
四面体形中間体から何が出ていけるかで、付加と置換を分けられる アルデヒドとケトンの求核付加/反応性の序列/カニッツァロ反応
第12章
炭素求核剤 — Grignard 試薬と有機金属
極性の反転を使って、炭素で炭素を攻められる グリニャール試薬と Grignard 反応
第13章
オレフィン化 — C=O を C=C に変える
二重結合を狙った位置に置ける Wittig 反応/Julia-Kocienski オレフィン化/Zweifel オレフィン化
第14章
ヘテロ原子求核剤 — 水和・アセタール・イミン・エナミン
可逆な付加を、保護基として使える アセタールの生成/イミン/エナミン/還元的アミノ化
第15章
求核アシル置換 — カルボン酸誘導体の階段
誘導体の反応性を脱離基の良さで並べ、階段を上れる カルボン酸誘導体/付加-脱離機構/エステル化/カルボン酸とニトリル
第16章
還元と酸化 — C=O と C−OH を行き来する
何段動かすか・止めたいか・ほかを残したいかで試薬を選べる アルコールの酸化/酸化試薬の比較/DIBAL 還元/C=O をメチレンまで落とす
第17章
骨格が組み替わる — カルボニルからの1,2-転位
6つの人名反応を1つの型に畳める Baeyer-Villiger 酸化/Beckmann 転位/Hofmann 転位/Curtius 転位

第4部 α位の舞台(第18〜21章)

攻められる側だった炭素を、攻める側に変える

章 読み終えたときにできること 解説記事
第18章
エノールとエノラート — 隣の炭素が求核剤に変わる
塩基を「全部作る側」か「少しだけ作る側」かで振り分けられる ケト-エノール互変異性/エノラートとα置換/LDA
第19章
α位の置換 — ハロゲン化とアルキル化
止まる反応と止まらない反応を、使い分けられる マロン酸エステル合成/アセト酢酸エステル合成/ヨードホルム反応
第20章
アルドール反応と Claisen 縮合
付加か置換かを、脱離基の有無だけで決められる カルボニル縮合反応/アルドール反応/Claisen 縮合/向山アルドール反応
第21章
共役付加とその先 — Michael・Mannich・Robinson
求核剤の硬さから 1,2-付加と 1,4-付加を判定できる Michael 付加/Mannich 反応/Gilman 試薬

第5部 芳香環の舞台(第22〜25章)

安定であることが、どうやって道筋を決めるか

章 読み終えたときにできること 解説記事
第22章
芳香族性 — 電子は豊富なのに、なぜ付加しないのか
芳香族・反芳香族・非芳香族を手順で判定できる ベンゼンと芳香族性/Hückel の 4n+2 則/芳香族イオン/ピリジンとピロール
第23章
芳香族求電子置換 — 5つの反応は同じ型
5つの反応を「求電子剤の作り方の違い」に畳める 求電子芳香族置換/ニトロ化・スルホン化・ハロゲン化/Friedel-Crafts の2つ
第24章
配向性 — 多置換ベンゼンを設計する
配向性を覚えずに中間体から導き、入れる順番を決められる 置換基効果と配向性/多置換ベンゼンの合成戦略/効果の加算性
第25章
芳香環のそのほかの舞台 — SNAr・ベンザイン・側鎖
求電子置換以外の道を見分けられる 求核芳香族置換(SNAr)/ベンザイン機構/芳香族化合物の酸化と還元/ジアゾニウム塩と Sandmeyer 反応

第6部 協奏の舞台(第26〜27章)

中間体を経ないとき、何が結果を決めるか

章 読み終えたときにできること 解説記事
第26章
ペリ環状反応の文法 — 軌道の対称性が許すかどうか
選択則を表ではなく1行の規則から作れる 周辺環状反応と Woodward-Hoffmann 則/ペリ環状反応の基本/共役系と分子軌道
第27章
Diels-Alder 反応とシグマトロピー転位
生成物を立体まで書き、逆合成で切る場所を決められる Diels-Alder 反応/Claisen 転位/クリック反応

第7部 ラジカルの舞台(第28〜29章)

電子が1個ずつ動くとき、何が行き先を決めるか

章 読み終えたときにできること 解説記事
第28章
ラジカル連鎖の文法 — 巻矢印が片羽になる
連鎖を3段で書き、成長段の和で検算できる 極性反応とラジカル反応/結合解離エネルギー(BDE)/アリル位の安定性
第29章
ラジカルを使う反応
条件(光・過酸化物・濃度)から舞台を読める NBS によるラジカル臭素化/ラジカル付加と重合/Barton-McCombie 脱酸素化/Hunsdiecker 反応/自動酸化

第8部 金属中心の舞台(第30〜32章)

金属の上で、結合はどう作られるか

章 読み終えたときにできること 解説記事
第30章
触媒サイクルの読み方 — 金属の上で結合を作る
サイクルを輪として読み、酸化数の帳尻で検算できる 有機金属カップリングの基本
第31章
クロスカップリング — 6種はどこが違うのか
基質と官能基に応じて、使うカップリングを選べる 鈴木-宮浦カップリング/根岸カップリング/薗頭カップリング/Heck 反応/Buchwald-Hartwig アミノ化
第32章
メタセシスと、金属がひらくそのほかの舞台
「この舞台では起こらない」を「別の舞台なら起こる」に言い換えられる オレフィンメタセシス/NHK 反応/Wacker 酸化
第2巻の各部の終わりには「型の総括」(その部の判断を N 手順にまとめたもの)が入ります。章を読んだだけでは手順にならないので、部を読み終えたら必ず通してください。—— 上の表からは113本の解説記事へ進めます。

第2巻の通読版(PDF)——A4・上下2分冊 計516ページ/図89枚。章末演習275問と解答と、各部末の「型の総括」8本(その部の判断を N 手順に固めた書き下ろし)、付録2種(酸化剤・還元剤の選択表/結合から引く反応早見表)・索引つき。上巻だけでは⑤芳香環・⑥協奏・⑦ラジカル・⑧金属中心の4舞台が欠けるので、上下セットです。→ 第2巻「反応編」(500円)

第3巻「応用編」— 答えの側から読む

第3巻は矢印を反対に向けます。第1巻・第2巻は「構造 → 性質」「試薬 → 生成物」という一方通行でしたが、ここでは結果を渡されて原因を当てます——スペクトルから構造を、目標分子から経路を、欲しい性質から材料を。新しい原理はほとんど出てきません。出てくるのは、使う順序です。

まずここから
・第1巻・第2巻をまだ読んでいない方へ——第3巻は逆向きの読みなので、順方向の知識が全部必要です。IR の 1715 cm−1 をケトンと読めるのは C=O の性質を知っているから、アルドール切断ができるのはアルドール反応を知っているからです。上の第1巻 → 第2巻の目次から先に通してください。

第1部 見る — 分子を見ずに構造を決める(第1章〜第7章)

スペクトルのデータから、構造を1つに絞る。数えるものは4つ(原子数・不飽和度・官能基・環境の数)で、全部の帳尻が合って初めて構造が決まります。

章 読み終えたときにできること 解説記事
第1章
分子式を決める — 質量分析と不飽和度
精密質量と同位体ピークから分子式を1つに決め、不飽和度で候補を絞れる 構造決定(MS・IR)/不飽和度/質量分析の基礎/機器分析の全体像
第2章
骨格を推理する — フラグメンテーション
α開裂・McLafferty 転位・特徴的なフラグメントから骨格の断片を読める フラグメンテーション解析
第3章
官能基を当てる — IR は結合のばねを見ている
C=O の位置を 1715 から上下に動かして、官能基の種類まで言える 基準振動数の表/IR 分光法の原理
第4章
共役を測る — UV-Vis と色
λmax と ε から共役の長さを読み、π→π* と n→π* を見分けられる 共役化合物と紫外分光/芳香族化合物の分光
第5章
1H NMR — 化学シフト・積分・分裂
化学シフト・積分比・n+1 則から水素の種類と隣接関係を決められる 構造決定(NMR)/NMR化学シフト一覧表と読み方
第6章
13C・DEPT・2D NMR — 炭素をつなぐ
DEPT で級数を決め、HMBC で四級炭素と C=O までつなげる 13C NMR と DEPT/2次元 NMR
第7章
立体を決める — 相対配置と絶対配置
J 値・NOE で相対配置を、X線・Mosher 法で絶対配置を決められる 絶対配置と相対配置の決め方/キラル医薬品

第2部 作る — 目標分子から原料へ(第8章〜第12章)

作りたい分子を渡されて、出発物と手順を決める。切ってよいのは、その結合の作り方を知っている場所だけです。

章 読み終えたときにできること 解説記事
第8章
逆合成という考え方 — どこを切るか
官能基の位置関係から、使うべき反応と切断点を選べる 逆合成解析/逆合成の基本概念/合成計画と戦略
第9章
シントンと合成等価体 — 切った先を試薬に翻訳する
紙の上の断片(シントン)を実在の試薬に翻訳でき、極性の反転も使える ビルディングブロックの選び方/有機試薬ガイド
第10章
官能基変換の地図 — 酸化数で行き先を選ぶ
何段動かすかで試薬を選び、行き過ぎを止める工夫まで設計できる 官能基変換(FGI)/DMSO 酸化の比較/官能基の反応性
第11章
保護基 — 反応させない技術
外し方で保護基を分類し、直交性を使って脱保護の順序を設計できる 保護基と直交性/PMB 保護基/シリル保護基
第12章
計画を実行に移す — 天然物・医薬品・院試問題
収率・スケール・後処理・原子効率まで含めた実行可能な計画にできる ボンビコールの合成(東大院試2025)/カスケード反応/抽出(後処理)/創薬とコンビナトリアル化学/環境に優しい有機反応

第3部 生きる — 自然が選んだ分子(第13章〜第18章)

生体分子の反応を第2巻の舞台番号に翻訳して読みます。生化学の暗記に戻さないことが、この部の存在理由です。

章 読み終えたときにできること 解説記事
第13章
糖 — 立体が機能を決める
Fischer 投影式とアノマーを扱い、J 値1つで α/β を決められる 糖質(生体分子)/Schmidt グリコシル化
第14章
アミノ酸とペプチド — 酸と塩基が主役
等電点を「中性種を先に決める」手順で出し、固相合成の直交性を読める アミノ酸・ペプチド・タンパク質/アミノ酸
第15章
タンパク質と酵素 — 形が機能になる
酵素が「していないこと」を言え、クエン酸シンターゼを舞台番号で説明できる アミノ酸・ペプチド・タンパク質
第16章
脂質とテルペン — 鎖の形と C5 単位
融点を鎖の折れで説明し、炭素数が5の倍数ならテルペノイドを疑える 脂質(油脂・セッケン・テルペノイド・ステロイド)/テルペン/Liebermann-Burchard 反応
第17章
核酸 — 4文字で書かれた分子
DNA の伸長を「リン上の求核置換」と書け、2′-OH の有無が何を決めるか言える 核酸(DNA・RNA・PCR)
第18章
代謝 — 体内で起きている有機反応
約50段の代謝反応を9つの型に畳み、不利な段の共役を特定できる 代謝経路の有機化学

第4部 つなぐ — 高分子と材料(第19章〜第21章)

欲しい性質から、構造と作り方を逆算します。最良の高分子はなく、どの性質を捨てるかを決めるのが設計です。

章 読み終えたときにできること 解説記事
第19章
重合の型 — 連鎖成長と逐次成長
モノマーの置換基を見て開始剤を選び、重合の型から構造を言える 合成高分子(連鎖成長・逐次成長)/重合反応の種類/アルケンへのラジカル付加と重合
第20章
分子量分布と物性 — 同じ繰り返し単位でも別物になる
Tg と結晶性を独立な2軸として扱い、性質から主鎖の構造を逆算できる 高分子の熱的性質/高分子の耐熱性/高分子の溶解性/高分子の耐薬品性/TG-DTA(熱分析)
第21章
機能を設計する — 材料としての有機分子
欲しい機能(導電・発光・配向・分解)から必要な電子の状態と構造を決められる 医薬品と材料科学への応用/高分子材料の性質と応用
第3巻の各部の終わりにも「型の総括」が入ります——第1部は7手順(データ → 構造)、第2部は6手順(目標 → 経路)、第3部は5手順(分子 → ふるまい)、第4部は4手順(性質 → 構造)。手順の数が減っていくのは、逆問題の答えが1つに決まるか、複数あるかの違いです。

第3巻の通読版(PDF)——A4・326ページ/図35枚。章末演習193問と解答、部末の「型の総括」4本(7手順・6手順・5手順・4手順)、付録A〜D(官能基の優先順位と pKa表/スペクトル早見表/保護基の選択と脱保護条件/有機化学の英語)・索引つき。付録Bの数値は本文で使った値とすべて一致させてあるので、演習の答え合わせにそのまま使えます。→ 第3巻「応用編」(980円)
3巻の関係——第1巻「電子はどこにあるか」→ 第2巻「電子はどこへ流れるか」→ 第3巻「答えの側から原因を当てる」。第3巻は逆向きの読みなので、前2巻の知識を全部使います。3巻そろえて 1,980円です(教材ページにまとめてあります)。

参考 — 大学有機化学 全章の解説一覧

ここから先は参考です(第1〜3巻の素材でもあります)。大学の授業やほかの教科書に合わせて読みたい場合は、こちらの章立てのまま進めても構いません。第2巻では、この中の反応を8つの舞台の順に並べ替えて扱います。

全章を分野別に8つのブロックに分けて整理しました。難易度(★)は本シリーズでの目安で、★が多いほど前提知識を必要とします。

基礎編:構造・結合・立体化学(第1〜6章)

有機化学全体の土台となるブロックです。特に第2章の酸塩基(pKa)と共鳴、第6章の反応機構の考え方は、以降のすべての章で繰り返し使います。

章 記事 難易度
序章 有機化学は暗記科目ではない|数百の反応を8つの型に畳む勉強法 ★☆☆☆
第1章 構造と結合|sp3・sp2・sp 混成軌道の違い ★☆☆☆
第2章 極性共有結合・酸と塩基|電気陰性度・共鳴・pKa ★★☆☆
第3章 アルカンと立体化学|IUPAC命名法・コンフォメーション ★★☆☆
第4章 シクロアルカンと立体化学|環ひずみ・イス形配座 ★★★☆
第5章 四面体中心の立体化学|R/S配置・ジアステレオマー・メソ化合物 ★★★☆
第6章 有機反応の概観|反応の種類・機構・エネルギー図 ★★☆☆

炭化水素の反応(第7〜11章)

アルケン・アルキン・ハロゲン化アルキルの反応を学ぶブロックです。第11章のSN1・SN2・E1・E2は大学有機化学で最重要の単元で、院試でも頻出です。

章 記事 難易度
第7章 アルケン:構造と反応性|マルコフニコフ則・カルボカチオン ★★☆☆
第8章 アルケンの反応と合成|ハロゲン化・水和・酸化・還元 ★★★☆
第9章 アルキンと有機合成入門|アセチリドアニオン・逆合成解析 ★★★☆
第10章 有機ハロゲン化合物|ラジカルハロゲン化・Grignard試薬 ★★★☆
第11章 アルキルハライドの反応|SN1・SN2・E1・E2・E1cB ★★★★

構造決定と共役(第12〜14章)

「作った化合物の構造をどう確かめるか」を学ぶブロックです。MS・IR・NMRのスペクトル読解は院試の構造決定問題に直結します。第14章では共役系の化学としてDiels-Alder反応が初登場します。

章 記事 難易度
第12章 質量分析・赤外分光法による構造決定|MS・IRの読み方 ★★★☆
第13章 NMR分光法による構造決定|化学シフト・スピン-スピン分裂 ★★★☆
第14章 共役化合物と紫外分光法|Diels-Alder反応・UV分光法 ★★★☆

芳香族化学(第15〜16章)

ベンゼンを中心とする芳香族化合物のブロックです。ヒュッケル則による芳香族性の判定と、求電子芳香族置換(EAS)の配向性は定期試験・院試の定番テーマです。

章 記事 難易度
第15章 ベンゼンと芳香族性|ヒュッケル則・芳香族イオン・複素環 ★★★☆
第16章 求電子芳香族置換反応|Friedel-Crafts・置換基の配向性 ★★★☆

アルコール・エーテル(第17〜18章)

酸素官能基のブロックです。アルコールの酸化・還元・保護基、エポキシドの開環反応の位置選択性(酸性条件と塩基性条件の違い)が頻出ポイントです。

章 記事 難易度
第17章 アルコールとフェノール|酸化・Grignard反応・保護基 ★★★☆
第18章 エーテルとエポキシド|Williamson合成・エポキシド開環 ★★★☆

カルボニル化学(第19〜23章)

シリーズ後半の山場です。求核付加・求核アシル置換・α置換・縮合という4つの反応型でカルボニル化学の全体を体系化します。院試の合成問題はこのブロックからの出題が最も多く、5章連続でじっくり学ぶ価値があります。

章 記事 難易度
第19章 アルデヒドとケトン|求核付加・イミン/エナミン・Wittig反応 ★★★★
第20章 カルボン酸とニトリル|酸性度・Henderson-Hasselbalch ★★★☆
第21章 カルボン酸誘導体|求核アシル置換・エステル・アミド ★★★★
第22章 カルボニルα置換反応|エノラート・マロン酸エステル合成 ★★★★
第23章 カルボニル縮合反応|アルドール・Claisen・Michael・Robinson ★★★★

アミンと生体分子(第24〜29章)

窒素官能基から生化学へつながるブロックです。糖・アミノ酸・脂質・核酸・代謝と、生命科学系の院試・薬学系の試験で重要度が高い章が並びます。

章 記事 難易度
第24章 アミンと複素環|塩基性・合成・反応 ★★★☆
第25章 炭水化物(糖質)|Fischer投影式・アノマー・二糖・多糖 ★★★☆
第26章 アミノ酸・ペプチド・タンパク質|等電点・Edman分解・酵素 ★★★★
第27章 脂質|けん化・リン脂質・プロスタグランジン・ステロイド ★★★★
第28章 核酸|DNA二重らせん・複製・転写・翻訳・PCR ★★★★
第29章 代謝経路の有機化学|β酸化・解糖系・クエン酸サイクル ★★★★

発展編(第30〜31章・付録)

物理有機化学・高分子化学の発展ブロックです。第30章のペリ環状反応(Woodward-Hoffmann則)は難関大学院の入試で差がつくテーマです。

章 記事 難易度
第30章 周辺環状反応|電子環状・付加環化・シグマトロピー転位 ★★★★★
第31章 合成高分子|連鎖成長重合・逐次成長重合・Ziegler-Natta触媒 ★★★☆
付録 多官能性化合物のIUPAC命名法|優先順位表とpKa一覧 ★★★☆

学習ロードマップ:全章一覧をどの順番で読むか

章番号が3種類あります。読み違えないように
・第1巻の第N章=「第1巻 基礎編」の17章(カズ塾の独自体系)
・第2巻の第N章=「第2巻 反応編」の32章(同じくカズ塾の独自体系)
・全章一覧の第N章=下の31章(大学の授業や一般的な教科書の並び)
・この節の章番号はすべて「全章一覧」のほうを指します
・迷ったら、まず第1巻・第2巻を順に通してから戻ってきてください

第1巻「基礎編」を先に通したうえで、全章一覧を目的別に読むなら次の順序をお勧めします。大学の授業が先に進んでいる場合は、授業の範囲をこの順で追いながら、つまずいたら第1巻の該当章へ戻るという使い方が現実的です。

【推奨学習順序】

STEP 1:土台づくり(第1・2・6章)
  └─ 混成軌道 → 酸塩基(pKa)・共鳴 → 反応機構の読み方
     ※ この3章の理解度が以降の全章の吸収効率を決める

STEP 2:立体化学(第3〜5章)
  └─ 命名法・配座解析 → イス形配座 → R/S・ジアステレオマー

STEP 3:反応各論の核心(第7〜11章)
  └─ アルケン・アルキンの付加反応 → SN1/SN2・E1/E2
     ※ 第11章は院試最頻出。時間をかけて完全習得する

STEP 4:構造決定(第12〜13章)
  └─ MS・IR → NMR(院試の構造決定問題に直結)

STEP 5:芳香族とカルボニル(第14〜23章)
  └─ Diels-Alder → 芳香族性・EAS → カルボニル4反応型
     ※ 第19〜23章は合成問題の宝庫。ここまでで院試範囲の大半をカバー

STEP 6:生体分子・発展(第24〜31章)
  └─ 専攻・志望分野に合わせて取捨選択
     (生命系→第25〜29章、物理有機・合成系→第30〜31章)
学習のヒント
・1周目は機構の丸暗記より「電子の流れ」の理解を優先する
・章末の比較表を自分で再現できるかで理解度を確認する
・院試対策はSTEP 3・5を繰り返し復習するのが効率的

演習用の問題集を選ぶときは有機化学の問題集・演習書おすすめ12冊を参考にしてください。

関連シリーズ:反応・試薬の横断整理

章別の解説が「体系に沿った縦の学習」だとすれば、以下のシリーズは反応・試薬ごとに横断整理した「横の学習」です。組み合わせて使うと理解が立体的になります。

シリーズ 内容 リンク
有機化学反応ガイド SN1/SN2・アルドール・Diels-Alderなど10大反応を機構別に深掘り 反応ガイドを見る
有機化学試薬ガイド LDA・DIBAL・mCPBA・Grignard試薬など頻出試薬の使い分け 試薬ガイドを見る
元素図鑑 有機化学の視点から周期表を再整理(電気陰性度・脱離基・触媒金属) 元素図鑑を見る

官能基ごと・人物ごとに整理した一覧もあります:官能基シリーズ総まとめと有機化学者列伝まとめ。

よくある質問(FAQ)

第1巻・第2巻の第N章と、全章一覧の第N章は何が違うのですか?

別々の章立てが3つ並んでいます。第1巻の17章と第2巻の32章はカズ塾が独自に組み直したもので、第1巻は「電子がどこにあるか」(構造・立体・共鳴・酸塩基・巻矢印)、第2巻は「電子がどこへ流れるか」(反応を8つの舞台に分ける)を扱います。一方の全章一覧31章は、大学の授業や一般的な教科書に近い並びで、構造決定や生体分子まで含みます。これから独学を始めるなら第1巻 → 第2巻の順に、授業の進度に合わせるなら全章一覧から入ってください。このページ内では、どちらの番号かが分かるように節ごとに明記しています。

大学の有機化学は独学で習得できますか?

可能です。有機化学は前提知識の積み上げが素直な科目で、順序どおりに進めれば独学でも十分に到達できます。本シリーズの章別解説記事は、各章の要点・反応機構・つまずきやすいポイントを日本語で整理しているため、講義や教科書の予習・復習と組み合わせると理解が速くなります。

院試対策ではどの章を優先すべきですか?

大学院入試の有機化学では、全章一覧の第11章(SN1・SN2・E1・E2)、第16章(求電子芳香族置換)、第19〜23章(カルボニル化学)からの出題が特に多い傾向があります。まずこの7章を完全に理解し、次に第12〜13章(MS・IR・NMRによる構造決定)を固めるのが効率的です。難関校を狙う場合は第30章(ペリ環状反応)まで押さえておくと安心です。

有機化学の勉強はどの章から始めればよいですか?

まず第1巻「基礎編」を通すのが最短ですが、全章一覧から入る場合は第1章(構造と結合)・第2章(酸と塩基・共鳴)・第6章(有機反応の概観)の3章から始めてください。この3章は有機化学全体の「文法」にあたる内容で、ここを固めると第7章以降の個別反応の理解が一気に速くなります。逆にこの土台を飛ばして反応の暗記に進むと、章が進むほど負担が大きくなります。

分光法の章(全章一覧の第12〜14章)は飛ばしてもよいですか?

定期試験の範囲外であれば一時的に飛ばして第15章以降の反応各論へ進んでも支障はありません。ただし大学院入試では未知化合物の構造決定問題(MS・IR・NMRスペクトルの読解)がほぼ必出のため、院試を受ける予定があるなら遅くとも試験の半年前までには第12〜13章を学習することをお勧めします。