VSEPRとは?電子対反発で分子の形と結合角を解説

水はなぜ「折れ線」なのでしょう。酸素に水素が2つ付くだけなら、まっすぐ180°でもよさそうです。ところが実際は約104.5°に折れ曲がっています。この形を、たった一つの原理——電子対どうしはできるだけ離れたがる——から言い当てるのがVSEPR(電子対反発則)です。分子模型を暗記しなくても、電子対の数を数えるだけで形が読めるようになります。
分子の形は、極性・双極子モーメント・反応性のすべてに関わります。VSEPRはその形を予測する最初の道具であり、混成軌道の考え方とも深くつながります。院試や大学入試でも「結合角を答えよ」「分子の形を示せ」という設問は定番です。
この記事は、分子構造を学び始めた人から、院試で立体構造を問われる人までを対象に、VSEPRを解説します。原理は1つだけ。そこから形と結合角を導く流れを身につけましょう。
この記事は、混成軌道と表裏一体です。VSEPRで「形」を、混成軌道で「軌道の言葉」をつかむと理解が立体的になります。あわせて読むのがおすすめです。
VSEPRの原理——電子対は離れたがる
VSEPR(Valence Shell Electron Pair Repulsion、原子価殻電子対反発)の考え方はシンプルです。中心原子のまわりの電子対(結合電子対と孤立電子対)は、負電荷どうしで反発するので、互いにできるだけ離れた配置をとります。この「最も離れる配置」が、そのまま分子の形を決めます。
ポイントは、結合している原子の数ではなく、電子対(電子群)の数で配置が決まることです。孤立電子対も1つの電子群として数え、反発に加わります。
電子対の数と基本の形
中心原子のまわりの電子群の総数(結合+孤立電子対)で、基本の骨格が決まります。
| 電子群の数 | 基本の配置 | 結合角 | 混成 |
|---|---|---|---|
| 2 | 直線 | 180° | sp |
| 3 | 平面三角形 | 120° | sp2 |
| 4 | 正四面体 | 109.5° | sp3 |
たとえばCO2は中心炭素に電子群が2つ(二重結合は1群と数える)で直線180°、BF3は3つで平面三角形120°、メタンCH4は4つで正四面体109.5°です。二重結合や三重結合は、まとめて1つの電子群として数えるのがコツです。
孤立電子対が結合角を狭める
ここがVSEPRの面白いところです。孤立電子対は原子核1つに引きつけられているぶん、結合電子対より広がって強く反発します。そのため孤立電子対があると、結合電子対どうしが押しやられ、結合角がやや狭くなります。
電子群4つで比べると、この効果がはっきり見えます。
| 分子 | 結合+孤立電子対 | 形 | 結合角 |
|---|---|---|---|
| メタン CH4 | 結合4+孤立0 | 正四面体 | 109.5° |
| アンモニア NH3 | 結合3+孤立1 | 三角錐 | 約107° |
| 水 H2O | 結合2+孤立2 | 折れ線 | 約104.5° |
どれも電子群は4つで骨格は四面体ですが、孤立電子対が増えるほど結合角が109.5°→107°→104.5°と狭まります。水が折れ線になるのは、2組の孤立電子対が水素どうしを強く押し込むからです。
よくある質問
VSEPR(原子価殻電子対反発則)は、中心原子まわりの電子対が反発でできるだけ離れた配置をとることを利用して、分子の立体的な形を予測する考え方です。結合電子対と孤立電子対の総数(電子群の数)から、直線・平面三角形・四面体などの骨格を導きます。
中心原子のまわりの電子群の数で決まります。結合している原子の数だけでなく、孤立電子対も1つの電子群として数えます。二重結合や三重結合はまとめて1つの電子群として数え、電子群が2なら直線、3なら平面三角形、4なら四面体が基本骨格になります。
酸素のまわりに結合電子対2組と孤立電子対2組の計4つの電子群があり、骨格は四面体ですが、2組の孤立電子対が結合電子対を強く押し込むためです。その結果、H−O−H角は正四面体の109.5度より狭い約104.5度になり、折れ線の形をとります。
孤立電子対は原子核1つだけに引きつけられているぶん空間的に広がって存在し、結合電子対より強く反発するからです。この強い反発が結合電子対を押しやるため、孤立電子対が多いほど結合角は狭くなります。メタン109.5度、アンモニア約107度、水約104.5度がその例です。
電子群の数がそのまま混成の種類に対応します。電子群2はsp混成で直線、3は平面三角形、4は四面体に対応します。VSEPRは形と結合角を反発から予測し、混成軌道はその形を原子軌道の混ざり方の言葉で説明します。両者は同じ立体構造を別の角度から見たものです。








