【第8章】付加反応とは?マルコフニコフ則とsyn/anti付加を中間体で理解
有機化学における付加反応(addition reaction)は、二重結合や三重結合などのπ結合をもつ化合物に新たな原子団が加わる反応を指します。π結合が1本切れ、その代わりにσ結合が2本できるので、分子の数は2つから1つに減ります。
付加反応は種類が多く、「HBr はマルコフニコフ則、でも過酸化物があると逆」「Br2 は anti 付加、ヒドロホウ素化は syn 付加」と、暗記事項の山に見えます。しかし、これらはばらばらの規則ではありません。最初に何がやって来て、どんな中間体ができるかが分かれば、どちらの炭素に付くか(位置選択性)も、同じ面から付くか反対の面から付くか(立体化学)も、すべてそこから決まります。
この章では、この1本の軸で、アルケン・アルキンの付加反応とカルボニル化合物への求核付加を整理します。個々の反応の詳しい機構は、各節からリンクした記事で扱っています。
付加反応の基本概念
付加反応とは、π結合の破壊とσ結合の形成によって進行する反応で、次のような特徴があります。
- 不飽和結合(C=C, C≡C, C=O)に対して起こる
- 2つの原子や原子団が、π結合の両端の原子にそれぞれ結合する
- 中間体としてカルボカチオン・ラジカル・環状のイオン(ハロニウムイオンなど)が生じることもあれば、中間体を経ず一段階で進むこともある
π結合はσ結合より弱いので、π結合1本をσ結合2本に置き換える付加反応は、多くの場合エネルギー的に有利です(σ結合とπ結合の違いはσ結合とπ結合の違いを参照)。
付加反応の主な分類
| 分類 | 最初に結合を作る種 | 代表例 |
|---|---|---|
| 求電子付加 | 求電子剤(H+、Br2 など) | HX付加、酸触媒水和、ハロゲン付加 |
| 求核付加 | 求核剤(H−、R−、CN− など) | カルボニルのヒドリド還元、グリニャール反応 |
| ラジカル付加 | ラジカル(Br· など) | 過酸化物存在下の HBr 付加、ラジカル重合 |
| 協奏的な付加(中間体を経ない) | 2つの結合がほぼ同時にできる | ヒドロホウ素化、OsO4によるジヒドロキシ化、エポキシ化、Diels–Alder反応 |
アルケンは求電子剤と、カルボニルは求核剤と反応する理由
同じ「二重結合への付加」でも、C=C と C=O では相手が逆になります。理由はπ電子の偏りです。
- C=C:両端が同じ炭素なのでπ電子は偏らず、結合の上下に電子雲が張り出している。この電子が電子不足の相手(求電子剤)を攻撃する。つまりアルケン自身が求核剤としてはたらく
- C=O:酸素の電気陰性度が大きく、π電子が酸素側へ引き寄せられている。炭素がδ+になるので、電子豊富な相手(求核剤)に攻撃される
詳しくはアルケンの求電子付加|π結合が攻める理由とカルボニルへの求核付加反応で扱っています。
中間体が位置選択性と立体化学を決める
この章の中心となる表です。各反応の詳しい説明は次の節で行いますが、「中間体」の列を見れば右の2列が説明できることを先に押さえておきましょう。
| 反応 | 中間体・遷移状態 | 位置選択性 | 立体化学 |
|---|---|---|---|
| HX付加・酸触媒水和 | カルボカチオン(平面) | マルコフニコフ(転位あり) | 選択性なし(両面から攻撃) |
| オキシ水銀化 | 橋かけ型のメルクリニウムイオン | マルコフニコフ(転位なし) | — |
| X2付加 | ハロニウムイオン(3員環) | —(同じ原子が付く) | anti付加 |
| ハロヒドリン生成 | ハロニウムイオン(3員環) | OH が置換基の多い炭素へ | anti付加 |
| ヒドロホウ素化・酸化 | 4中心遷移状態(中間体なし) | 逆マルコフニコフ | syn付加 |
| HBr+過酸化物 | 炭素ラジカル | 逆マルコフニコフ | 選択性なし |
| 接触水素化 | 金属表面に吸着 | — | syn付加 |
| OsO4ジヒドロキシ化 | 環状のオスミウム酸エステル | — | syn付加 |
| エポキシ化 → 酸で開環 | エポキシド(3員環) | — | 2つの OH は anti |
規則性ははっきりしています。平面の中間体(カルボカチオン、ラジカル)は上下どちらの面からも攻撃されるので立体を選ばず、3員環の中間体(ハロニウムイオン、エポキシド)は環が片面をふさぐので反対の面から攻撃されて anti になり、2つの原子が同じ側から一度に来る反応は syn になります。
アルケンの付加反応
① ハロゲン化水素(HX)の付加
アルケンにHCl、HBr、HIなどを付加する反応です。まず H+ がアルケンのπ電子に攻撃されて C–H 結合ができ、反対側の炭素がカルボカチオンになります。そこへ X− が結合して完成です。
エテンは左右対称なので、H と Br がどちらの炭素に付いても同じ化合物です。位置選択性が問題になるのは、プロペンのような非対称なアルケンのときです。
マルコフニコフ則
非対称なアルケンに HX が付加するとき、H は水素の多い(置換基の少ない)炭素に、X は置換基の多い炭素に付く――これがマルコフニコフ則です。プロペンと HBr からは、1-ブロモプロパンではなく 2-ブロモプロパンが主に生じます。
CH3–CH=CH2 + H+ → CH3–CH+–CH3(第二級カチオン) ← こちらができる × CH3–CH2–CH2+(第一級カチオン) → Br− が結合して CH3–CHBr–CH3(2-ブロモプロパン)
理由は、H+ がどちらに付くかで、できるカルボカチオンの安定性が違うからです。カルボカチオンは第三級 > 第二級 > 第一級の順に安定です。正電荷をもつ炭素の隣に C–H 結合や C–C 結合が多いほど、そのσ結合の電子が空の p 軌道へ流れ込んで(超共役)、正電荷が分散するからです。さらにハモンドの仮説により、この段階の遷移状態はカルボカチオンに似ているので、安定なカチオンへ向かう経路ほど活性化エネルギーが低く、速く進みます。
つまりマルコフニコフ則は「H がどこに付くか」の規則ではなく、「より安定なカルボカチオンを経由する」という1つの原理の言い換えです。この見方なら、H+ 以外の求電子剤にも同じ考え方が使えます。詳しくはマルコフニコフ則(カルボカチオンで決まる理由)とカルボカチオンの安定性を参照してください。
カルボカチオンの転位
カルボカチオンを経る反応では、より安定なカチオンになれるなら、隣の炭素から H や アルキル基が結合電子対ごと移動する転位が起こります。たとえば 3-メチル-1-ブテンに HCl を付加させると、最初にできる第二級カチオンの隣の炭素から H が移って第三級カチオンになり、転位した 2-クロロ-2-メチルブタンが生成物に含まれます。「生成物の骨格が出発物と違う」という問題は、ほぼこの転位を疑います。
② 水の付加(酸触媒水和)
この反応もカルボカチオンを経るので、マルコフニコフ則に従い、転位も起こりえます。カルボカチオンの炭素は平面(sp2)なので、水は上下どちらの面からも同じように攻撃します。そのため、新しく不斉中心ができる場合はラセミ体になります。H+ は最初に付いて最後に外れる触媒です。
転位させずにマルコフニコフ型のアルコールを得る:オキシ水銀化
酢酸水銀(II) を使うオキシ水銀化(続いて NaBH4 で水銀を除く)でも、OH は置換基の多い炭素に付きます。しかし中間体は、Hg が2つの炭素に橋をかけた3員環型のイオンで、自由なカルボカチオンができません。そのため転位が起こりません。2つの水和法の比較はアルケンの水和:オキシ水銀化とヒドロホウ素化にまとめています。
③ ヒドロホウ素化(BH3)→ 酸化
逆マルコフニコフ付加が起こり、ヒドロキシ基がより水素の多い炭素に結合します。立体的にはsyn付加(同じ面からの付加)です。どちらも機構から説明できます。
- ホウ素が求電子剤:BH3 のホウ素は空の p 軌道をもち、アルケンのπ電子を受け取る。B–C 結合と C–H 結合が、4つの原子が環状に並んだ4中心遷移状態で同時にできる
- なぜ逆マルコフニコフか:かさ高いホウ素は立体的に空いた置換基の少ない炭素に付く。また遷移状態では置換基の多い炭素にわずかに正電荷が生じ、そこへ H が付くほうが有利(電子的要因)
- なぜ syn か:B と H が同じ B–H 結合から、同じ面に一度に付くから
- 酸化:H2O2/NaOH で C–B 結合が C–OH 結合に置き換わる。このとき炭素の立体配置は保持されるので、syn の関係がそのまま OH に引き継がれる
たとえば 1-メチルシクロペンテンからは、H と OH が syn に付いた trans-2-メチルシクロペンタノールが得られます(メチル基と OH が環の反対側に来る)。詳しくはヒドロホウ素化・酸化とは?を参照してください。
④ ハロゲン(Br2、Cl2)の付加
アルケンにBr2を反応させると、ハロニウムイオン中間体を経て、anti付加が起こります。
Br2 がアルケンに近づくと、π電子に押されて Br–Br 結合が分極し、手前の Br が2つの炭素の両方と結合した3員環のブロモニウムイオンができます。このとき Br− は、環の Br がふさいでいる面からは近づけません。反対側の面から炭素を攻撃し(SN2 と同じ背面攻撃)、環を開きます。だから2つの Br は反対の面に付く anti 付加になります。
立体化学の結果は次のようになります(エテンでは区別できないので、置換基のあるアルケンで考えます)。
- シクロヘキセン → trans-1,2-ジブロモシクロヘキサン(cis 体はできない)
- (E)-2-ブテン → メソ体の 2,3-ジブロモブタン
- (Z)-2-ブテン → 2,3-ジブロモブタンのラセミ体
出発物の E/Z が生成物の立体を決めるこの性質を立体特異性といいます。カルボカチオンを経る反応では、こうはなりません。
ハロヒドリンの生成
水の中で Br2 を反応させると、ブロモニウムイオンを開くのは大量にある水になり、Br と OH が anti に付いたブロモヒドリンが生じます。このとき OH は置換基の多い炭素に付きます。ブロモニウムイオンでは、置換基の多い炭素との C–Br 結合のほうが長く弱く、その炭素に正電荷が多く偏っているからです。完全なカルボカチオンではないので転位は起こらず、それでいてカルボカチオンに近い性格が位置選択性に現れる、という中間的な姿です。詳しくはアルケンのハロゲン化:X2付加とハロヒドリン生成を参照してください。
⑤ HBr のラジカル付加(過酸化物効果)
過酸化物が存在すると、HBr は逆マルコフニコフに付加し、Br が置換基の少ない炭素に付きます。これは規則の例外ではなく、中間体が違うだけです。過酸化物から生じたラジカルが HBr から Br· を作り、この Br· が先にアルケンに付きます。Br· は、より安定な(置換基の多い)炭素ラジカルができる側、つまり置換基の少ない炭素に付き、その後ラジカルが HBr から H を引き抜きます。
「より安定な中間体を経由する」という原理はイオン反応と同じで、先に付く原子が H+ から Br· に変わったために、結果が逆になっているのです。この反応が実用的に起こるのは HBr だけで、HCl や HI では連鎖の段階のどれかが不利になり進みにくくなります。詳しくはアルケンのラジカル付加と重合を参照してください。
⑥ 水素化と、酸化剤による付加(ジヒドロキシ化・エポキシ化)
- 接触水素化(H2、Pd/C や Pt):アルケンが金属表面に吸着し、表面の H が同じ面から2つ付くので syn 付加になる
- OsO4 によるジヒドロキシ化:OsO4 の2つの酸素が同じ面から同時に付いて環状のエステルを作り、加水分解で2つの OH が syn に並んだ 1,2-ジオールになる。「アルケンに OH を2つ付けたい」ときの基本反応(アップジョンジヒドロキシル化)
- エポキシ化(mCPBA など):過酸の酸素1つが協奏的に付いてエポキシドになる(mCPBA)。これを酸性の水で開環すると、水が背面から攻撃するので2つの OH は anti になる(エポキシドの開環反応)
同じ 1,2-ジオールでも、OsO4 なら syn、エポキシド経由なら anti と、中間体の形で立体が作り分けられます。還元・酸化の全体像はアルケンの還元と酸化を参照してください。
アルキンの付加反応
アルキンはπ結合が2本あるため、付加反応が2回連続で起こることがあります。アルキンの付加で問われるのは、ほとんどが「1回目で止められるか」「2回目はどこに付くか」です。
① 水素化:どこで止めるかを触媒で選ぶ
- H2 + Pd/C:アルケンで止まらず、2回付加してアルカンまで還元される
- H2 + リンドラー触媒:活性を落とした(被毒させた)パラジウム触媒で、アルキンは反応するがアルケンはほとんど反応しないため、1回目で止まる。H は同じ面から付くのでcis-アルケンになる
- Na(またはLi)/液体アンモニア:電子が1つずつ移る機構で進み、途中で生じるビニルラジカルとビニルアニオンが置換基どうしの反発の小さい配置をとるため、trans-アルケンになる
詳しくはアルキンの還元と酸化:cis/trans アルケンと開裂反応を参照してください。
② HXの付加
1当量の HX では、マルコフニコフ則に従ってハロゲン化ビニル(C=C に X が付いたもの)が得られます。2当量加えると2回目の付加が起こり、2つの X が同じ炭素に付いたジェミナルジハロゲン化物が得られます。
2つ目の X も同じ炭素に付くのは、2回目のプロトン化で、すでに X が付いている炭素にカチオンができるほうが有利だからです。そのカチオンは、隣の X の孤立電子対が共鳴で正電荷を分け持つことで安定化されます。
③ 水の付加 → ケトン生成(ケト–エノール互変異性)
Hg2+触媒と硫酸の存在下で水を付加させると、マルコフニコフ則に従って OH が置換基の多い炭素に付いたエノールができ、これがケト–エノール互変異性ですばやくケトンに変わります。末端アルキンからはメチルケトンが得られます。
一方、末端アルキンをかさ高いボランでヒドロホウ素化してから酸化すると、逆マルコフニコフに OH が末端に付いたエノールを経てアルデヒドが得られます。アルケンの場合と同じく、「マルコフニコフ型か逆か」を試薬で選べるわけです。アルキンの付加反応全体はアルキンの付加反応:HX・X2付加と水和にまとめています。
カルボニル化合物への求核付加
C=O基(カルボニル基)は、Oが電気陰性度が高く電子を引っ張るため、Cが求電子中心となります。ここに求核剤が電子を提供して結合するのが求核付加反応です。
求核剤が炭素を攻撃すると、C=O のπ電子が酸素へ移り、炭素は平面の sp2 から四面体の sp3 に変わってアルコキシドイオンになります。これがプロトンを受け取るとアルコールです。アルケンへの求電子付加とは、最初に来るのが求電子剤か求核剤かが逆になっているだけで、「π結合1本がσ結合2本になる」点は同じです。
アルデヒドはケトンより反応しやすいのが一般的です。ケトンの炭素には電子を押し出すアルキル基が2つ付いていてδ+が弱められ、さらに求核剤が近づく空間も狭いからです。また、カルボニル炭素は平面なので求核剤は上下どちらの面からも攻撃でき、新しい不斉中心ができるとき、特別な工夫がなければラセミ体になります。
① ヒドリド還元
NaBH4 の B–H 結合の電子が、ヒドリド(H−)としてカルボニル炭素に渡ります。アルデヒドからは第一級アルコール、ケトンからは第二級アルコールが得られます。
② グリニャール反応(RMgX)
マグネシウムは炭素より電気陰性度がずっと小さいので、C–Mg 結合では炭素の側がδ−になります。ふだんは求電子的な炭素が、ここでは求核剤としてはたらき、カルボニル炭素と新しい C–C 結合を作ります。詳しくはグリニャール試薬(RMgX)完全解説を参照してください。
③ シアン化物イオンの付加
CN− が付加してシアノヒドリンになります。この付加は可逆で、ヒドリドやグリニャール試薬の付加と違って逆反応も起こります。
このような付加反応は、アルデヒド・ケトンをアルコールや新しいC–C結合を持つ化合物へ変換する上で重要です。全体像はカルボニルへの求核付加反応を完全解説とアルデヒドとケトン:求核付加反応で扱っています。
発展:α,β-不飽和カルボニルへの1,4-付加
C=C と C=O が共役したα,β-不飽和カルボニル化合物では、C=O の電子求引が C=C まで伝わり、β位の炭素もδ+になります。そのため、アミンや、マロン酸エステル由来のような安定化されたエノラートなど穏やかな求核剤はβ炭素に付加します(1,4-付加、共役付加)。アミノ基が C=C に付加するように見える反応の多くはこの型で、炭素求核剤の場合がマイケル付加です。「アルケンは求電子剤と反応する」の例外ではなく、電子求引基によって C=C のπ電子の偏りが変わった結果です。
立体化学と選択性
| 付加の型 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| syn付加 | 2つの原子団が同じ面に結合 | ヒドロホウ素化、接触水素化、OsO4、リンドラー還元 |
| anti付加 | 2つの原子団が反対の面に結合 | Br2付加、ハロヒドリン生成、エポキシドの開環 |
| 立体を選ばない | 平面の中間体が両面から攻撃される | HX付加、酸触媒水和、ラジカル付加 |
位置選択性では、マルコフニコフ則(安定なカルボカチオンを経由)と逆マルコフニコフ(ホウ素が先に少置換側へ付く、または Br· が先に付く)の区別が、反応の設計において重要な指針となります。基質がもともとキラルな場合の面選択性も含めた詳しい扱いは、アルケン付加反応の立体化学を参照してください。
付加反応の応用例
① アルコールの合成:OH を付けたい位置で反応を選ぶ
- 置換基の多い炭素に OH(マルコフニコフ型):酸触媒水和(転位に注意)、またはオキシ水銀化(転位なし)
- 置換基の少ない炭素に OH(逆マルコフニコフ型):ヒドロホウ素化・酸化
- カルボニル基への NaBH4 還元 → アルコール
アルコールの作り方の全体像はアルコールの合成法まとめを参照してください。
② 炭素–炭素結合の形成
- グリニャール反応
- シアン化物による付加
③ 官能基導入による反応性の変化
- カルボニルへの付加 → ヒドロキシ基 → さらなる誘導体合成へ
試験での問われ方
- 主生成物を書かせる:同じアルケンに「HBr」「HBr+過酸化物」「BH3→H2O2/NaOH」「H3O+」を作用させ、位置選択性の違いを問う
- 立体を書かせる:シクロアルケンや (E)/(Z)-2-ブテンへの Br2 付加・OsO4・ヒドロホウ素化の生成物の立体(メソ体かラセミ体か、cis/trans)
- 転位を見抜かせる:生成物の骨格が出発物と違う問題では、カルボカチオンの転位を書けるか
- 理由を説明させる:マルコフニコフ則をカルボカチオンの安定性(超共役)で、anti 付加をハロニウムイオンの背面攻撃で説明できるか
まとめ:付加反応は有機化学の展開力を支える
次章では、付加反応以外の有機反応タイプとして、酸化・還元反応を中心に学びます。電子数の増減に注目したアプローチで、アルコール・ケトン・カルボン酸の変換を読み解いていきましょう。
よくある質問
起こりません。臭素はアルケンの反対の面から付くanti付加です。最初に3員環のブロモニウムイオンができ、環のBrが一方の面をふさぐため、Br−は反対側の面から炭素を攻撃します。その結果、シクロヘキセンからはtrans-1,2-ジブロモシクロヘキサンが、(E)-2-ブテンからはメソ体の2,3-ジブロモブタンが生じます。
H+が付加する段階で、より安定なカルボカチオンができる向きのほうが速く進むからです。カルボカチオンは第三級、第二級、第一級の順に安定で、これは隣接するC–H結合やC–C結合の電子が超共役で正電荷を分散させるためです。そのためHは置換基の少ない炭素に付き、Xは置換基の多い炭素に付きます。
カルボカチオンを経ず、ホウ素と水素が4中心遷移状態で同時に付くからです。かさ高いホウ素は立体的に空いた置換基の少ない炭素に付き、遷移状態でわずかに正電荷を帯びる置換基の多い炭素には水素が付きます。続く酸化でホウ素がOHに置き換わるので、OHは置換基の少ない炭素に付いた形になります。BとHが同じ面から付くのでsyn付加でもあります。
2つのBrが同じ炭素に付いたジェミナルジブロモ化合物ができます。1回目の付加でブロモアルケンができ、2回目のプロトン化では、すでにBrが付いた炭素にカチオンができる向きが有利です。そのカチオンはBrの孤立電子対の共鳴で安定化されるためです。
四酸化オスミウム(OsO4)でジヒドロキシ化すると、2つのOHが同じ面に付いたsyn-1,2-ジオールが得られます。反対の面に付いたanti-1,2-ジオールが欲しい場合は、mCPBAなどでエポキシドにしてから酸性の水で開環します。水がエポキシドの背面から攻撃するので、2つのOHがanti配置になります。
🧭 関連リンク
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- 👉 【第7章】SN1・SN2・E1・E2反応の比較
- 👉 【第9章】酸化還元反応の基礎|酸化剤・還元剤の見分け方と使い分け方
- 👉 アルケンの反応と合成 完全解説
