たとえば、同じ試料溶液を GC に2回注入して、目的物のピーク面積が 18,240 と 14,592 で2割も違ったとします。試料が変わったわけではありません。マイクロシリンジで入った量が違っただけです。クロマトグラフィーの検出器が返すのは「どれだけの量が通ったか」に比例する信号で、濃度そのものではありません。信号を濃度に読み替える「ものさし」が検量線で、そのものさしの作り方によって、どんな誤差に強いかが変わります。

この記事の答え
検量線は、濃度既知の標準で応答と濃度の関係を求めた線です。絶対検量線法は面積そのもの、内部標準法は内部標準物質との面積比、標準添加法は試料に標準を足した応答で検量し、打ち消せる誤差が違います。

3つの方法は、教科書では手順が並べて書かれているだけのことが多く、「結局どれを使えばいいのか」がわかりにくいところです。けれども、それぞれの方法がどの誤差を打ち消すために考え出されたかを押さえると、選び方は自然に決まります。注入量がばらつくなら比をとる、試料の中で感度が変わるなら試料そのものに標準を足す。この記事では、その理屈を式と図で追い、仮の数値で3つの計算を最後までやってみます。

この記事で学ぶこと
・検量線とは何か(感度を決める作業・直線性・内挿で使い外挿しない理由)
・絶対検量線法・内部標準法・標準添加法の手順と、縦軸・横軸に何をとるか
・注入量のばらつき・前処理の損失・マトリックス効果のうち、どれを何が消すか
・HPLC・GC・LC-MS での使い分け(安定同位体標識内部標準まで)
・3つの方法の計算例(計算練習用の仮の数値)

検量線とは——信号を濃度に読み替える「ものさし」

HPLC や GC のピーク面積、吸光度(ランベルト・ベールの法則)、原子吸光の吸収など、分析装置が返す値をまとめて応答(信号)と呼びます。応答 S と目的物の濃度 C の関係は、検出器が直線的に働く範囲では、比例定数 k を使って S = kC と書けます。この k が感度です。

感度は、化合物によっても装置によっても違います。同じ 1 μg でも、紫外吸収の強い化合物は大きなピークになり、弱い化合物は小さなピークになります。同じ化合物でも、検出波長やランプの状態、カラムの状態で変わります。だから「面積が 50,000 なら何 μg」と覚えておくことはできず、測るたびに濃度のわかった標準を同じ条件で測って k を決める必要があります。この作業が検量(キャリブレーション)で、濃度と応答の関係を描いた線が検量線です。

HPLC の記事では、保持時間で成分を見分け、ピーク面積で量を測るところまでを扱いました。この記事は、その「ピーク面積で量を測る」の中身です。

標準は数段階:1点で決めない理由

標準を1つだけ測って k = S標準 ÷ C標準 とする方法(1点検量)もあります。けれども、この方法では標準1本の調製の誤差がそのまま結果に入り、しかも「応答が濃度に比例する」ことを確かめないまま使うことになります。Harvey の教科書は、1点検量を最も望ましくない方法としています。

そこで、濃度を変えた標準を数段階(JIS K 0124 では3段階以上)測り、最小二乗法で直線を当てはめます。1本の標準の誤差がほかの点で薄まり、直線になっているかどうかも点の並びで確かめられます。JIS K 0124 は「検量線は測定点を代表するように引く」としています。直線の当てはめ方、切片を0に固定してよいか、R2 の読み方はExcelの近似曲線の記事で詳しく扱っています。

なお、日本薬局方の医薬品各条では、検量線が直線になる濃度範囲がわかっている前提で、1つの標準溶液とそれに近い濃度の試料溶液を比べる形がよく使われます(〈2.01〉)。これは、直線性と原点を通ることが別に確かめられている場合の簡略形です(JIS K 0124 注20 も同じ趣旨)。

検量線は内挿で使い、外挿しない

検量線で試料の濃度を読むときは、試料の応答が標準の範囲の中に入っていなければなりません。理由は2つあります。

1つ目は、直線性は確かめた範囲でしか保証されないからです。濃度を上げすぎると、UV 検出器の吸光度が大きくなりすぎたり、検出器の信号が頭打ちになったりして、線が寝てきます。低濃度側では、ガラスやカラムへの吸着で、少量のときほど失われる割合が大きくなることもあります。範囲の外で同じ直線が続く保証はありません。

2つ目は、読み取った濃度の不確かさが、標準の平均(重心)の付近で最小になり、そこから離れるほど大きくなるからです。最小二乗法で決めた直線は、標準の平均の点(重心)のまわりで最もよく決まり、傾きのわずかな誤差が、重心から離れるほど大きなずれになって現れます。Harvey の教科書は、試料の信号が標準の信号の平均に近いとき不確かさが最小になるので、試料が検量線の真ん中に来るように標準を設計するよう勧めています。

だから標準は、試料の予想濃度を挟むように用意します。試料の応答が最高濃度の標準より大きかったら、線を延ばして読むのではなく、試料を正確に希釈して範囲に入れ直します。JIS K 0124 の内部標準法も、試料の面積比が「検量線の範囲内になるようにする」としています。どれくらい小さい濃度まで測れるか(検出限界・定量限界)は、検量線の傾きとばらつきから別に決める量です。求め方は検出限界と定量限界の記事で説明しています。

よくある間違い
・最高濃度の標準より大きい応答を、線を延ばして読む(希釈して測り直す)
・R2 が 0.999 だから範囲の外でも直線だと考える
・標準を試料の濃度と離れた範囲だけで作る(試料が端に来ると不確かさが大きい)

誤差を2種類に分けると、3つの方法の違いが見える

検量線法を比べる前に、誤差を2種類に分けておきます。

  • 比例的な誤差:応答が本来の何倍かになる誤差。注入量が2割少ない、前処理で目的物の1割を失う、試料に含まれる別の成分のせいで感度が2割下がる、といったものです。検量線で言えば傾きが変わる誤差です。
  • 一定の誤差:濃度に関係なく、決まった量が上乗せされる誤差。検量線で言えば切片がずれる誤差です。上乗せの出どころで、さらに2つに分けておきます。1つは試料にだけある上乗せで、試料由来の別の成分が目的物と同じ時間に出て重なるピークです。もう1つは標準液にも同じだけ入る上乗せで、試薬や溶媒に由来するブランクの信号です。

この先で見るように、内部標準法と標準添加法は、どちらも比例的な誤差を打ち消すための方法です。ただし、打ち消せる比例的な誤差の種類が違います。一定の誤差のうち、試料にだけある重なるピークはどの方法でも打ち消せません。標準液にも同じだけ入るブランクは、絶対検量線法と内部標準法では検量線の切片に吸収されますが、標準添加法では先に差し引いておかなければなりません。これが3つの方法の比較の骨組みになります。

3つの方法の全体像

3つの方法の違いは、検量線の縦軸と横軸に何をとるかに表れます。絶対検量線法は、縦軸に目的物のピーク面積、横軸に標準液の濃度をとります。内部標準法は、縦軸に目的物と内部標準物質の面積の比、横軸に両者の濃度(量)の比をとります。標準添加法は、試料そのものに標準を足していき、縦軸にピーク面積、横軸に足した濃度をとって、線を左に延ばした x 切片から濃度を読みます。

絶対検量線法・内部標準法・標準添加法の検量線の比較。絶対検量線法は縦軸ピーク面積・横軸標準液の濃度、内部標準法は縦軸面積比・横軸濃度比で、どちらも試料の値を内挿で読む。標準添加法は縦軸ピーク面積・横軸添加した濃度で、線を延ばした x 切片から読む

絶対検量線法(外部標準法)

絶対検量線法は、いちばん素直な方法です。目的物の標準液を数段階の濃度に調製し、一定量ずつ注入してピーク面積を測り、「濃度(または注入された量)と面積」の検量線を作ります。次に試料を同じ条件で注入し、その面積から検量線で濃度を読みます。標準を試料の外で別に測るので、外部標準法とも呼ばれます(JIS K 0124 は「外標準法ともいう」としています)。

手順が単純で、1本の検量線で多数の試料を測れるのが利点です。標準液には目的物だけを溶かせばよく、ほかの物質を加える必要もありません。

弱点:注入量と前処理が、すべて結果に乗る

絶対検量線法が成り立つのは、標準と試料とで、感度 k も注入量も同じときだけです。面積をそのまま濃度に換算するので、面積を変える原因はすべて濃度の誤差になります。日本薬局方〈2.01〉が、標準溶液を「一定量ずつを正確に,再現性よく注入する」とし、この方法は「注入操作など測定操作の全てを厳密に一定の条件に保って行う」と念を押しているのはこのためです。

弱点を具体的に並べると、次の3つです。

  • 注入量のばらつき:注入量が2割少なければ、面積も2割小さくなり、濃度も2割低く出ます。
  • 前処理での損失:抽出・濃縮・ろ過などで目的物の一部が失われても、検量線は標準液(損失なし)で作っているので、失われた分だけ低く出ます。
  • マトリックス効果:試料に含まれる目的物以外の成分(マトリックス)のせいで、試料の中での感度 k が標準液の中での感度と違うと、比例的な誤差になります。

3つ目への対策として、標準液を試料と同じような組成にそろえる方法があります。Harvey の教科書はこれをマトリックスマッチングと呼んでいます。JIS K 0136 も、目的物を含まない試料が手に入るなら、そこに目的物を段階的に加えて検量線を作ると、試料由来の夾雑物の影響を補正できるとしています。ただし、目的物を含まない「同じような試料」が手に入るとは限りません。

裏を返すと、注入の再現性が高く、前処理が単純で、マトリックス効果が小さいなら、絶対検量線法で十分です。オートサンプラーでループに一定量を満たして注入する HPLC は、注入量のばらつきが手動のシリンジ注入より小さくしやすく、きれいな溶液の分析では絶対検量線法が使われます。日本薬局方〈2.01〉も、内部標準法と絶対検量線法を並べて定めています。

内部標準法

内部標準法は、試料にも標準液にも、目的物とは別の化合物(内部標準物質)を一定量加え、目的物の面積を内部標準物質の面積で割った面積比で検量する方法です。日本薬局方や JIS では「内標準法」「内標準物質」と書きますが、同じ方法です。

比をとると何が消えるのか

なぜ比をとると誤差が消えるのかを、式で確かめます。注入された溶液の割合を f(予定どおりなら 1、2割少なければ 0.8)とすると、目的物 A と内部標準物質 IS の面積は次のようになります。

SA  = kA × CA × f
SIS = kIS × CIS × f

SA ÷ SIS = (kA ÷ kIS) × (CA ÷ CIS)    ← f が消える

目的物と内部標準物質は同じ溶液の中にいるので、注入量がずれれば両方が同じ割合で増減します。だから比をとると f が約分されて消えます。残るのは、2つの化合物の感度の比 kA/kIS(相対感度)と、濃度の比 CA/CIS だけです。相対感度は化合物の組み合わせと測定条件で決まるので、同じ測定の中で標準液から決めれば、試料の濃度比が求まります。

内部標準法の模式クロマトグラム。1.0 µL 注入と 0.8 µL 注入で目的物と内部標準物質のピーク面積はどちらも2割変わるが、面積比はどちらも1.249で変わらない

f と同じ形で両方にかかる誤差なら、注入量でなくても消えます。スプリット注入で分割される割合の変動、溶媒の蒸発による濃縮、内部標準物質を加えたあとの抽出での損失(両者が同じ割合で失われるなら)などです。JIS K 0124 は、内部標準法で「導入誤差の補正,前処理誤差の補正を行うことができる」としています。

もう1つ、見落としやすい利点があります。同じ内部標準溶液(同じ調製ロット)を同じ量標準液と試料に加え、その測定の中で検量線を作るなら、その内部標準溶液の濃度が少しずれていても結果に効きません。検量線も試料も同じ CIS を基準にして比をとっているので、CIS の誤差は両方に同じように入り、目的物の濃度を求める段階で打ち消し合うからです。ただし、打ち消し合うのはこの場合に限ります。別の機会に決めた相対感度を、新しく調製した内部標準溶液に流用すると、その溶液の濃度の誤差はそのまま結果に入ります。同じ測定の中で大事なのは、内部標準物質の濃度が正確なことよりも、毎回同じ量を正確に加えることです。

手順

日本薬局方〈2.01〉・JIS K 0124 に沿うと、手順は次のとおりです。

  • 一定量の内部標準物質を含み、目的物の濃度を段階的に変えた標準液を数種類(JIS では3段階以上)調製する
  • それぞれを注入し、「目的物の面積 ÷ 内部標準物質の面積」を縦軸、「目的物の量(濃度)÷ 内部標準物質の量(濃度)」を横軸にとって検量線を作る。日本薬局方は、この検量線は通例、原点を通る直線になるとしている
  • 試料溶液に、標準液と同じ濃度になるように内部標準物質を加え、同じ条件で測る
  • 試料の面積比から検量線で濃度比を読み、加えた内部標準物質の濃度を掛けて目的物の濃度を出す

内部標準物質の選び方

日本薬局方〈2.01〉〈2.02〉は、内部標準物質に「被検成分になるべく近い保持時間を持ち,いずれのピークとも完全に分離する安定な物質」を選ぶとしています。JIS K 0124 は、これに加えて「分析対象成分及び化学的性状が類似した」物質であることを挙げています。条件を、理由と一緒に整理します。

条件 なぜ必要か
試料にもともと含まれていない 含まれていると、加えた量より面積が大きくなり、比が狂う
ほかのどのピークとも完全に分離する 重なると内部標準物質の面積が大きく見え、面積比が小さくなるので、結果が一定の割合で低く出る(比例的な誤差)
目的物に近い保持時間に出る 近い時間に出るほど、溶出中の条件(移動相組成・温度・検出器の状態)の変化を同じように受ける
化学的性質が目的物に似ている 抽出・誘導体化・吸着での失われ方が似るので、前処理の損失まで同じ割合になる
安定で、試料と反応しない 分解や沈殿で量が変わると、基準そのものが動く(JIS K 0124 注22)
目的物と同程度の大きさのピークになる量を加える 極端に小さいピークは面積のばらつきが大きく、比の精度が落ちる

「似ている」ことと「分離する」ことは、少し矛盾した要求です。似ているほど同じ時間に出やすくなるからです。実際には、目的物の同族体(メチル基が1つ多いもの)や位置異性体、ハロゲンを置き換えたものなど、性質は近いがカラムでは分かれる化合物が選ばれます。LC-MS では、質量で見分けられるので、後で述べる安定同位体標識体という、目的物とほぼ同じ性質をもつ化合物が使えます。

いつ加えるかで、消える誤差が変わる

内部標準物質が打ち消せるのは、加えたあとに起きた誤差だけです。加える前に失われた目的物は、内部標準物質の面積には何の影響もないからです。JIS K 0136 は、加える時期を目的別に3つに分けています。

  • 試料採取時(サンプリングスパイク):採取から分析までの回収率をまるごと補正する
  • 前処理の直前(クリーンアップスパイク):前処理工程の回収率を補正する
  • 注入の直前(シリンジスパイク):注入量の変動だけを補正する

前処理の損失まで打ち消したいなら、損失が起こる工程より前に加えます。注入直前に加えたのでは、抽出で何割失っていても補正されません。

内部標準法でも消えないもの

  • 内部標準物質と目的物で違う割合の損失・感度変化:目的物だけが吸着する、目的物だけがマトリックスでイオン化を抑えられる、といった場合は、比をとっても消えません。
  • 試料にだけある上乗せ:試料由来の別の成分が目的物のピークに重なっていると、その分は内部標準物質とは無関係に目的物の面積に乗るので残ります。分離を改善して対処します。なお、試薬や溶媒のブランクのように標準液にも同じだけ入る上乗せは、検量線の切片に吸収されるので、切片を0に固定しなければ打ち消されます。
  • 内部標準物質を加える量の誤差:試料ごとに加える量がずれると、そのまま結果がずれます。ホールピペットなどで正確に加えます。
NMR の「内部標準」と TMS の違い
・有機合成では、1H NMR に量のわかった化合物を加え、積分比から収率を出すことがある。これも内部標準法の考え方
・テトラメチルシラン(TMS)は化学シフトの基準物質で、量を測るためのものではない
・同じ「試料に加える物質」でも、役割が違う

標準添加法

標準添加法は、試料をいくつかに分け、そのそれぞれに目的物の標準を段階的に足して測り、「足した量と応答」の関係線から、もともと入っていた量を逆算する方法です。標準液ではなく試料そのものの中で検量するのが、ほかの2つとの決定的な違いです。

マトリックス効果とは

標準添加法が必要になる理由は、マトリックス効果です。試料には、目的物のほかに、溶媒・塩・タンパク質・脂質・ほかの有機物など、さまざまな成分が含まれています。これらをマトリックスと呼びます。マトリックスが目的物の感度 k を変えてしまうことをマトリックス効果といいます。

代表例が LC-MS のイオン化抑制です。ESI では、イオンは噴霧した液滴の中で作られるので、目的物と一緒に溶出した成分が液滴の電荷を奪い合い、目的物のイオンができにくくなります(LC-MSの記事で詳しく扱っています)。血液や環境水、食品のような複雑な試料では、きれいな標準液で作った検量線の傾きと、試料の中での傾きが違ってしまいます。Harvey の教科書は、マトリックス効果が比例的な系統誤差を生むと整理しています。注入量や前処理とは違い、これは目的物の応答そのものが変わる誤差なので、内部標準物質が目的物と同じ影響を受けない限り、比をとっても消えません。

手順

JIS K 0124 と日本薬局方〈2.02〉に沿うと、手順は次のとおりです。

  • 試料溶液から、同じ量の液を複数(JIS K 0124 では3個以上、日本薬局方〈2.02〉では無添加の1個を含めて4個以上)正確にとる
  • 1個はそのままにし、残りに目的物の標準液を、濃度が段階的に異なるように正確に加える
  • すべてを同じ一定量に希釈して、測定用の溶液にする
  • それぞれを測り、横軸に「添加による目的物の濃度の増加」、縦軸にピーク面積をとって関係線を作る
  • 関係線と横軸の交点(x 切片)の絶対値から、無添加の溶液に含まれていた目的物の濃度を求める

試料ごとに関係線を1本作るので、試料の数だけ手間がかかります。Harvey の教科書が指摘するように、ある試料で作った関係線は、マトリックスの違う別の試料には使えません。

なぜ x 切片で濃度がわかるのか

測定用溶液の中で、もともとの目的物の濃度を Cx、標準を足したことによる増加を C添加 とします。どの溶液も同じ試料を同じ量含み、同じ体積に希釈しているので、マトリックスは全部同じで、試料の中での感度 k試料 も共通です。応答は次のように書けます。

S = k試料 × (Cx + C添加)
  = k試料 × C添加 + k試料 × Cx
       傾き                 切片

S = 0 とおくと  C添加 = −Cx

横軸を C添加 にとると、傾きは試料の中での感度 k試料、切片は k試料Cx です。線を左へ延ばして応答が0になる点は C添加 = −Cx なので、x 切片の絶対値がもともとの濃度になります。式の上では「切片 ÷ 傾き」と同じです。

ここで大事なのは、k試料 がマトリックス効果を含んだ感度だということです。マトリックスで感度が2割下がっていれば、傾きも切片も2割小さくなり、その比である Cx は変わりません。感度を試料の中で測っているので、感度の違いが消える。これが標準添加法の仕組みです。JIS K 0124 も、標準添加法は「試料マトリックスの影響が補正できる特長がある」としています。

標準添加法の関係線。無添加の試料と、標準を0.50・1.00・1.50 µg/mL 添加した点を通る直線を左に延ばし、x 切片 −0.75 から測定溶液中 0.75 µg/mL、もとの試料に直して 1.50 µg/mL。同じ試料をきれいな標準液の検量線で読むと 1.20 µg/mL と2割低く出る

弱点:外挿と、切片に入る上乗せ

標準添加法にも前提と弱点があります。

1つ目は、外挿で読むことです。測定点があるのは添加量0から右側だけで、x 切片は測定点の無い領域にあります。前の節で見たとおり、読み取りの不確かさは重心から離れるほど大きくなるので、Harvey の教科書は、標準添加法の濃度は内挿ではなく外挿で決めるため、不確かさが一般に大きくなるとしています。ただし、Ellison と Thompson は、標準添加法を最適に実施すれば、精度の目立った低下は無いと報告しています。添加量が小さすぎて点が0の近くに固まると、傾きが決まらず、延ばした先の x 切片が大きくぶれます。

2つ目は、直線であることが前提だということです。JIS K 0124 と JIS K 0136 は、標準添加法を「関係線が直線の場合にだけ適用する」としています。添加した側で曲がっていると、延ばした線は0側の本当の関係を表しません。

3つ目は、一定量の上乗せは消せないことです。標準添加法では切片そのものが答え(k試料Cx)なので、目的物に関係なく決まった量が上乗せされていると、その分は切片に入り、x 切片は目的物の濃度として読まれてしまいます。試料由来の重なるピークだけでなく、絶対検量線法なら切片に吸収されて害の無かった試薬・溶媒のブランクも、ここでは結果を高くします。Ellison と Thompson は、標準添加法は感度を変える(回転的な)マトリックス効果を除く方法で、一定量を上乗せする(並進的な)効果は扱えず、別に処理する必要があるとしています。日本薬局方〈2.02〉が、標準添加法を「絶対検量線法で被検成分の検量線を作成するとき,検量線が,原点を通る直線であるときに適用できる」としているのも、この上乗せが無いことを前提にしているからです。ブランクの値は先に差し引き、重なるピークは分離で除きます。Excelの近似曲線の記事の「切片を0に固定してよいか」で、吸光度 0.040 の上乗せが、切片を求める当てはめでは結果に響かず、切片を0に固定すると濃度がずれる例を扱っています。標準添加法は、その上乗せがそのまま答えに入る方法だと考えると違いがはっきりします。

4つ目に、加えた標準が、もともと試料に含まれていた目的物と同じようにふるまうことが前提です。試料の中で目的物が別の物質に強く結合していたり、加えた標準液で沈殿ができたりすると、足した分と元からある分で応答が変わります。JIS K 0124 は、標準液を加えたときに沈殿や錯形成などの化学反応が起こらないことを、あらかじめ確かめるよう求めています。

3つの方法を比べる:どの誤差を何が消すか

ここまでの内容を、誤差の種類ごとに並べます。○は打ち消せる、△は条件つき、×は打ち消せない、です。

誤差・特徴 絶対検量線法 内部標準法 標準添加法
注入量のばらつき ×(注入を厳密に一定にする) ○ ×(各溶液を再現性よく注入する)
前処理での損失 × △(損失の前に加え、同じ割合で失われるとき) △(前処理の前に添加し、元の目的物と同じ割合で失われるとき)
マトリックス効果(感度の変化) ×(マトリックスマッチングで軽減) △(内部標準物質が同じ影響を受けるとき。安定同位体標識体) ○
試料由来の重なるピーク(試料にだけある上乗せ) ×(分離で除く) ×(分離で除く) ×(分離で除く)
試薬・溶媒のブランク(標準液にも同じだけ入る上乗せ) ○(切片に入る。切片を0に固定しない) ○(同) ×(切片そのものが答えなので、先に差し引く)
試料の値の読み方 内挿 内挿 外挿(x 切片)
試料が多いときの手間 少ない(検量線1本で多数) 少ない(内部標準物質を加える手間だけ) 多い(試料ごとに関係線)
必要なもの 目的物の標準品 標準品+適切な内部標準物質 標準品+試料を複数に分けられる量

表から読み取れる選び方は、次のようにまとめられます。

  • きれいな溶液で、注入の再現性も高い:絶対検量線法で足りる
  • 注入や前処理で量がばらつく:内部標準法。適切な内部標準物質があることが条件
  • 試料の中で感度が変わる(マトリックス効果):標準添加法。または、マトリックスの影響まで目的物と同じように受ける内部標準物質を使う
  • 試料由来の重なるピーク:どの方法でも消えないので、分離を改善する
  • 試薬・溶媒のブランク:絶対検量線法・内部標準法では切片を求める当てはめで吸収される。標準添加法では先に差し引く

方法を組み合わせることもできます。標準添加法の各溶液に内部標準物質を加え、縦軸を面積比にすれば、マトリックス効果と注入量のばらつきを両方打ち消せます。

HPLC・GC・LC-MS での使い分け

装置 効いてくる誤差 よく使われる方法
HPLC(UV 検出) オートサンプラーで注入量はそろえやすい。前処理の損失と、重なるピーク 絶対検量線法・内部標準法(日本薬局方〈2.01〉は両方を規定)
GC 手動のシリンジ注入・スプリットでの分割の変動 内部標準法が通例(日本薬局方〈2.02〉)。共存成分の影響が無視できなければ標準添加法
LC-MS ESI のイオン化抑制・促進(マトリックス効果) 安定同位体標識体を使う内部標準法、標準添加法、マトリックスをそろえた検量線

HPLC

HPLC はオートサンプラーで注入量をそろえやすいので、医薬品の含量試験のようなきれいな溶液では絶対検量線法も使われます。抽出などの前処理が入る試料や、より高い精度が要る場合には内部標準法を使います。UV 検出で問題になりやすいのは、試料由来で同じ時間に出てきて吸収が重なる成分(試料にだけある一定の誤差)です。これは検量法では消せないので、分離条件で解決します。HPLC で同じ化合物かどうかを確かめる方法はHPLCの記事で扱っています。

GC

GC では、日本薬局方〈2.02〉が定量を「通例,内標準法によるが,適当な内標準物質が得られない場合は絶対検量線法による」としたうえで、「定量結果に対して被検成分以外の成分の影響が無視できない場合は標準添加法による」と続けています。内部標準法が基本になるのは、マイクロシリンジで 1 μL 前後を注入すると入る量が毎回少しずつ違い、スプリット注入では分割の割合も変わりうるからです(GCの記事)。FID は有機化合物の多くに応答しますが、感度は化合物ごとに違うので、面積の比がそのまま重量の比になるわけではありません。内部標準法の検量線の傾き(相対感度)が、その違いを補正しています。

LC-MS:イオン化抑制と安定同位体標識内部標準

LC-MS は、マトリックス効果の影響を受けやすい装置です。JIS K 0136 は、LC/MS のイオン化は多くの場合ソフトなイオン化なので、内部標準を含めて共存物質によるイオン化の抑制または促進を受けやすいとしています。

そこで使われるのが、目的物の水素を重水素(D)に、炭素を 13C に置き換えた安定同位体標識体を内部標準物質にする方法です。標識体は化学的性質が目的物とほぼ同じなので、前処理で同じように失われ、ほぼ同じ時間に溶出し、同じ液滴の中で同じようにイオン化の影響を受けます。それでいて質量が違うので、質量分析(MS)では別々に測れます。「性質が似ている」と「分離して測れる」という、さきほど矛盾すると言った2つの要求を、質量の違いで両立させているわけです。JIS K 0136 は、同位体標識化合物を用いた内部標準法には、マトリックス効果の影響を補正する効果があるとしています。

ただし、同じ JIS は、共存物質によるイオン化の影響とクロマトグラフィーでの分離挙動は、目的物と標識体とで一般に異なると注意しています。標識体が目的物とわずかにずれた時間に溶出し、その間にイオン化を抑える成分の量が変わっていれば、補正は完全ではありません。実際に Wang らは、ヒト血漿中のカルベジロールの LC-MS/MS 定量で、重水素標識体の保持時間が重水素同位体効果でわずかにずれ、目的物と標識体でイオン化抑制の程度が違ったために、面積比が血漿のロットによって変わった例を報告しています。逆相 LC では、重水素標識体が目的物よりわずかに早く溶出することがあり、13C や 15N で標識した内部標準物質は目的物とほぼ同時に溶出するとされます(Bowman ら)。手に入るなら、13C・15N 標識体のほうが望ましいわけです。標識体が手に入らない場合や、試料ごとのマトリックスの違いが大きい場合には、標準添加法やマトリックスをそろえた検量線を使います。

もう1つ、標識体の同位体純度にも注意します。標識体に非標識の目的物がわずかに混じっていると、内部標準物質を加えるたびに、目的物の信号が決まった量だけ上乗せされます。標準液にも試料にも同じ量の内部標準物質を加えるので、これは「標準液にも同じだけ入る上乗せ」で、切片を求める当てはめなら吸収されます。それでも、目的物がごく微量の試料では、上乗せが目的物そのものの信号と比べて無視できなくなります。標識体には、非標識体の含量が十分に低いことが求められます(Grocholska・Bąchor の総説)。

元素分析の ICP-MS でも、内部標準元素を加えて信号の比で検量する内部標準法が基本になります。ICP-MS での使い方はICP-MS の記事で説明しています。

計算例(計算練習用の仮の数値)

以下の数値はすべて、手順を練習するための仮の数値で、実際の測定値ではありません。直線は最小二乗法で当てはめています(Excel なら SLOPE 関数と INTERCEPT 関数で同じ値が出ます)。

例1:絶対検量線法(HPLC-UV)

目的物の標準液 5 段階を同じ量ずつ注入して、次の面積を得た。

濃度(μg/mL) 10 20 40 60 80
ピーク面積 15,300 30,200 61,100 90,800 121,900

最小二乗法で直線を当てはめると、y = 1521.5x − 41.5(y:面積、x:濃度 μg/mL)になります。試料の面積が 52,400 なら、

x = (52,400 + 41.5) ÷ 1521.5 = 34.5 μg/mL

34.5 μg/mL は標準の範囲(10〜80 μg/mL)の中なので、このまま報告できます。もし試料の面積が 150,000 なら、式に入れると約 98.6 μg/mL で、最高濃度の 80 μg/mL を超えます。線を延ばして読まず、試料を正確に2倍に希釈して測り直し、得た濃度を2倍します。

例2:内部標準法(GC-FID)

内部標準物質の濃度をどの標準液でも 50.0 μg/mL にそろえ、目的物の濃度を 25・50・100・150 μg/mL と変えた。濃度比(目的物 ÷ 内部標準物質)は 0.50・1.00・2.00・3.00 になる。

濃度比 0.50 1.00 2.00 3.00
面積比 0.41 0.83 1.64 2.47

当てはめると y = 0.8220x + 0.0017(y:面積比、x:濃度比)です。傾き 0.822 は相対感度 kA/kIS にあたり、同じ濃度でも目的物のピークは内部標準物質の約0.82倍の大きさになることを表します。

試料溶液に内部標準物質を 50.0 μg/mL になるように加えて 1.0 μL 注入したところ、目的物の面積 18,240、内部標準物質の面積 14,600 だった。

面積比  = 18,240 ÷ 14,600 = 1.249
濃度比  = (1.249 − 0.0017) ÷ 0.8220 = 1.518
目的物  = 1.518 × 50.0 μg/mL = 75.9 μg/mL

同じ溶液を注入し直し、今度は 0.8 μL しか入らなかったとします。面積は 14,592 と 11,680 に減りますが、比は 14,592 ÷ 11,680 = 1.249 で変わらず、答えも 75.9 μg/mL のままです。面積だけで読む絶対検量線法なら、2回目は2割低い値になっていました(内部標準法の節の模式クロマトグラムの図と同じ数値です)。

例3:標準添加法(LC-MS)

試料溶液 5.00 mL ずつを4本の 10 mL メスフラスコにとり、10.0 μg/mL の標準液を 0・0.50・1.00・1.50 mL 加えて、すべて 10.0 mL にした。添加による濃度の増加は、たとえば 0.50 mL × 10.0 μg/mL ÷ 10.0 mL = 0.50 μg/mL なので、順に 0・0.50・1.00・1.50 μg/mL になる。

添加した濃度(μg/mL) 0 0.50 1.00 1.50
ピーク面積 2,400 4,010 5,590 7,210

当てはめると y = 3202x + 2401 です。

x 切片          = −2401 ÷ 3202 = −0.750 μg/mL
測定溶液中の濃度 = 0.750 μg/mL
もとの試料      = 0.750 × (10.0 mL ÷ 5.00 mL) = 1.50 μg/mL

最後の希釈の補正を忘れやすいので注意します。x 切片が表すのは、10.0 mL に薄めた測定用溶液の中の濃度です。

比較のため、マトリックスを含まないきれいな標準液で作った検量線の傾きが 4,000(原点を通る)だったとします。無添加の試料の面積 2,400 をこの検量線で読むと 2,400 ÷ 4,000 = 0.600 μg/mL、もとの試料に直して 1.20 μg/mL で、標準添加法の 1.50 μg/mL より2割低くなります。試料の中での傾き 3,202 は、きれいな標準液の 4,000 の約8割で、イオン化抑制で感度が約2割下がっていたことがわかります。標準添加法は、この下がった感度で検量しているので、正しい値が出ます。

練習問題:内部標準法の計算

内部標準物質を 20.0 μg/mL ずつ含む標準液で、面積比(目的物 ÷ 内部標準物質)と濃度比の関係が y = 1.250x(切片 0)になった。内部標準物質を同じ 20.0 μg/mL になるように加えた試料溶液で、目的物の面積 30,000、内部標準物質の面積 24,000 だった。目的物の濃度は?

解答:面積比 = 30,000 ÷ 24,000 = 1.250。濃度比 = 1.250 ÷ 1.250 = 1.000。目的物 = 1.000 × 20.0 = 20.0 μg/mL。面積比が1.25でも濃度比は1.00になるのは、目的物の感度が内部標準物質の1.25倍だから(数値は計算練習用の仮の数値)。

試験・院試での問われ方

分析化学や機器分析の試験、大学院入試でこのテーマが問われるときの形としては、次のようなものがあります。どれも「比例的な誤差か一定の誤差か(一定なら、試料にだけあるのか標準液にも入るのか)」「何が両方に同じ割合でかかるか」で答えを組み立てられます。

  • 計算:内部標準法の面積比から濃度を出す、標準添加法の x 切片から濃度を出す。標準添加法では、希釈の倍率を掛け戻すところまでが問われます。
  • 理由の説明:「内部標準法で注入量の誤差が消えるのはなぜか」。目的物と内部標準物質が同じ溶液に入っているので、注入量が変わると両方の面積が同じ割合で変わり、比では打ち消される、と答えます。
  • 方法の選択:「血漿中の薬物を LC-MS で定量する」ならマトリックス効果を考え、安定同位体標識体の内部標準法か標準添加法。「GC で手動注入する」なら内部標準法。
  • 内部標準物質の条件:試料に含まれない・完全に分離する・近い保持時間・性質が似ている・安定、を理由とセットで。
  • 標準添加法の限界:切片そのものが答えなので、重なるピークやブランクのような一定量の上乗せがそのまま結果に入る(ブランクは先に差し引く)、外挿なので直線性が前提、試料ごとに手間がかかる。

まとめ

検量線法の要点
・検量線は、試料と同じ条件で感度を決めるための線。標準は試料を挟むように数段階用意し、内挿で読む
・絶対検量線法は面積をそのまま使う。注入・前処理・マトリックスのずれは結果に乗るが、試薬・溶媒のブランクは切片に吸収される(切片を0に固定しない。内部標準法も同じ)
・内部標準法は面積比を使う。両方に同じ割合でかかる誤差(注入量・加えたあとの損失)が消える
・標準添加法は試料の中で感度を測る。マトリックス効果が消えるが、x 切片は外挿で、ブランクや重なるピークの上乗せはそのまま結果に入る
・LC-MS では、安定同位体標識体の内部標準でイオン化抑制もおおむね打ち消せる(溶出時間がずれると不完全)

3つの方法は、どれが優れているという序列ではありません。注入がばらつくのか、前処理で失うのか、試料の中で感度が変わるのか。いま自分の測定で効いている誤差がどれかを考えれば、どの方法を使い、何を対照にすればよいかが決まります。

よくある質問

内部標準法と絶対検量線法の違いは何ですか?

絶対検量線法(外部標準法)は、目的物のピーク面積をそのまま濃度に換算する方法です。手順は単純ですが、注入量や前処理での損失のずれがそのまま結果の誤差になります。内部標準法は、試料と標準液の両方に一定量の別の化合物(内部標準物質)を加え、目的物の面積を内部標準物質の面積で割った比で検量します。注入量がずれても両方の面積が同じ割合で変わるので、比をとると打ち消されます。日本薬局方や JIS では内部標準法を「内標準法」と書きますが、同じ方法です。

内部標準物質はどのように選びますか?

試料にもともと含まれていないこと、ほかのどのピークとも完全に分離すること、目的物に近い保持時間に出ること、化学的性質が目的物に似ていること、安定で試料と反応しないことが条件です。日本薬局方は「被検成分になるべく近い保持時間を持ち,いずれのピークとも完全に分離する安定な物質」としています。目的物の同族体や位置異性体がよく使われ、LC-MS では重水素や炭素13で標識した目的物(安定同位体標識体)が使えます。前処理の損失も補正したいときは、損失が起こる工程より前に加えます。

標準添加法はどんなときに使いますか?

試料に含まれる目的物以外の成分(マトリックス)のせいで、試料の中での感度が標準液の中での感度と違うとき、つまりマトリックス効果があるときに使います。LC-MS の ESI でのイオン化抑制が代表例です。試料そのものに標準を足して検量するので、感度の違いが打ち消されます。ただし、切片そのものが答えになるので、重なるピークや試薬・溶媒のブランクのような一定量の上乗せは消せず(ブランクは先に差し引く)、x 切片を外挿で読むので関係線が直線であることが前提になり、試料ごとに関係線を作る手間もかかります。

標準添加法ではなぜ x 切片から濃度がわかるのですか?

もともとの濃度を Cx、添加による増加を C添加、試料の中での感度を k とすると、応答は S = k(Cx + C添加) と書けます。横軸を C添加 にとると、傾きは k、切片は kCx です。応答が0になる点は C添加 = −Cx なので、x 切片の絶対値がもともとの濃度になります。感度 k がマトリックス効果で変わっていても、傾きと切片が同じ割合で変わるので、その比である Cx は変わりません。求まるのは測定用溶液の中の濃度なので、希釈した倍率を掛けて元の試料の濃度に戻します。

試料の応答が検量線の範囲を超えたらどうすればよいですか?

検量線を延ばして読まず、試料を正確に希釈して範囲の中に入れてから測り直し、得た濃度に希釈倍率を掛けます。直線であることは標準で確かめた範囲でしか保証されず、高濃度では検出器の信号が頭打ちになることがあります。また、最小二乗法で決めた直線は標準の平均の付近で最もよく決まり、範囲から離れるほど読み取りの不確かさが大きくなります。標準は、試料の予想濃度を挟むように用意するのが基本です。

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分析機器の全体像は機器分析総まとめ、分液・カラム・TLC などの操作は有機化学実験の基本操作まとめにまとめています。検量線をレポートに載せるときの体裁は表・グラフの書き方を参照してください。