【元素図鑑】プラセオジム Pr【溶接マスクの窓が黄色い光を消す仕組み】
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プラセオジムの情報をまとめました。
希土類は「少ない」のではなく「分けにくい」
レアアース(希土類)という名前から、地球上にほとんど存在しない元素だと思われがちです。しかし実際には、ありふれた金属より多く存在するものもあります。困るのは量ではなく、仲間同士を分離するのが極端に難しいことです。
理由は電子の入り方にあります。希土類では、増えていく電子がいちばん外側ではなく内側の4f軌道に入ります。化学結合を担うのは外側の電子なので、原子番号が1つ違っても、化学的なふるまいがほとんど変わらないのです。
| ふつうの元素 | 希土類 |
|---|---|
| 原子番号が変わると外側の電子数が変わる | 増えた電子は内側の4f軌道に入る |
| 隣の元素と性質がはっきり違う | 隣の元素とほとんど見分けがつかない |
| 沈殿や溶解度の差で簡単に分けられる | イオン半径のわずかな差を何百回も積み上げて分ける |
| どれが何かすぐ分かる | ほとんど全部が +3 のイオンになる |
ネオジムとプラセオジムは、もともと1つの元素だと思われていた
この2つの語源を並べると、事情が見えてきます。ネオジムは「新しい双子」、プラセオジムは「緑の双子」。どちらにも「双子(ジディモス)」が入っています。
19世紀、ある鉱物から取り出された成分がジジム(didymium)という1つの新元素だと考えられていました。ところがのちに、これが2種類の元素の混合物だと分かります。そこで一方を「緑色の塩をつくる双子」=プラセオジム、もう一方を「新しい双子」=ネオジムと名づけ直したのです。
溶接マスクの窓——黄色い光だけを抜き取る
プラセオジムのいちばん分かりやすい用途が、溶接工やガラス職人が使う保護レンズです。ネオジムとともにガラスへ混ぜたものをジジムガラスと呼びます。
狙いは、明るさを一律に落とすことではありません。特定の波長だけを狙って吸収することです。
| ふつうの濃い色のレンズ | ジジムガラス | |
|---|---|---|
| 仕組み | 可視光をまとめて減らす | ナトリウムの黄色い光(波長589nm付近)を選んで吸収する |
| 見え方 | 全体が暗くなり、手元が見づらくなる | 眩しさだけが消え、形や色はよく見える |
| なぜ効くのか | — | ガラスやろう付けで加熱すると、含まれるナトリウムが強い黄色の光(ナトリウムD線)を出す。これが眩しさの正体 |
ネオジム磁石にも入っている
プラセオジムはネオジムと隣同士で、磁石の中でも似た働きをします。4f電子によって磁化の向きを固定する役目を、ネオジムの代わりに務められるのです。
そして希土類の宿命がここで効いてきます——ネオジムとプラセオジムは分離がとくに難しい。ならば分けずに使えばよい、という発想で、両者を分離しないまま合金にしたジジム合金(PrNd)が磁石の原料として流通しています。分離工程を省けるぶん安く作れるというわけです。
その他の用途
| 用途 | プラセオジムの働き |
|---|---|
| 黄色の顔料 | ジルコニウムの化合物に取り込むと鮮やかな黄色を出す。タイルや陶磁器の釉薬に使われ、高温でも色が変わらない |
| ガラス・陶器の緑色 | プラセオジムのイオンそのものは緑色。語源の「緑の双子」はここから |
| マグネシウム合金への添加 | 少量加えると強度が上がり、航空機部品などに使われる |
| 光ファイバーの増幅 | 4f電子の発光を利用して、減衰した光信号を増幅する |
基本情報
| 和名 | プラセオジム |
|---|---|
| 英名 | Praseodymium |
| 語源 | ギリシャ語「緑の双子(prasios+didymos)」 |
| 元素記号 | Pr |
| 原子番号 | 59 |
| 原子量 | 140.9 |
| 常温(25℃)での状態 | 固体(金属) |
| 色 | 銀白色 |
| 密度 | 6.773 g/cm3(20℃) |
| 融点 | 931℃ |
| 沸点 | 3512℃ |
| 発見者 | ウェルスバッハ(オーストリア)[1885年] |
| 含有鉱物 | サマルスキー石 |
よくある質問
ナトリウムが出す黄色い光(波長589nm付近)だけを狙って吸収できるからです。ガラス細工やろう付けで加熱すると、含まれるナトリウムが強い黄色の光を出し、これが眩しさの正体になります。プラセオジムとネオジムの4f電子は非常に鋭い吸収線をもつため、この波長だけを抜き取れます。ふつうの濃い色のレンズのように全体を暗くしないので、眩しさだけが消えて手元はよく見えるという利点があります。
プラセオジムとネオジムを分離しないまま混合物として使う合金のことです。この2つは隣同士の希土類で化学的性質がほとんど同じため分離が非常に難しい一方、磁石の中では似た働きをします。そこで分けずに使えば分離工程を省けて安くなる、という考え方です。19世紀の化学者がジジムを1つの元素だと取り違えたのと同じ理由で、現代の磁石工場は混合物のまま使っています。
存在量はそれほど少なくありません。ありふれた金属より多く存在するものもあります。問題は量ではなく、仲間同士を分離するのが極端に難しいことです。希土類では増えた電子が外側ではなく内側の4f軌道に入るため、原子番号が1つ違っても化学的な性質がほとんど変わりません。供給が偏って見えるのは、この分離を大規模にやれる設備が限られているからです。
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