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ネオジムの情報をまとめました。

希土類は「少ない」のではなく「分けにくい」

レアアース(希土類)という名前から、地球上にほとんど存在しない元素だと思われがちです。しかし実際には、ありふれた金属より多く存在するものもあります。困るのは量ではなく、仲間同士を分離するのが極端に難しいことです。

理由は電子の入り方にあります。希土類では、増えていく電子がいちばん外側ではなく内側の4f軌道に入ります。化学結合を担うのは外側の電子なので、原子番号が1つ違っても、化学的なふるまいがほとんど変わらないのです。

ふつうの元素 希土類
原子番号が変わると外側の電子数が変わる 増えた電子は内側の4f軌道に入る
隣の元素と性質がはっきり違う 隣の元素とほとんど見分けがつかない
沈殿や溶解度の差で簡単に分けられる イオン半径のわずかな差を何百回も積み上げて分ける
どれが何かすぐ分かる ほとんど全部が +3 のイオンになる
希土類の工業的な価値は、採掘よりも分離技術にあります。鉱石から取り出すところまでは難しくなく、混ざっている希土類を1種類ずつに分ける工程がコストと技術のほとんどを占めます。「レアアースの供給が偏っている」と言われるのは、この分離を大規模にやれる設備が限られているからです。

ネオジムとプラセオジムは、もともと1つの元素だと思われていた

この2つの語源を並べると、事情が見えてきます。ネオジムは「新しい双子」、プラセオジムは「緑の双子」。どちらにも「双子(ジディモス)」が入っています。

19世紀、ある鉱物から取り出された成分がジジム(didymium)という1つの新元素だと考えられていました。ところがのちに、これが2種類の元素の混合物だと分かります。そこで一方を「緑色の塩をつくる双子」=プラセオジム、もう一方を「新しい双子」=ネオジムと名づけ直したのです。

「ジジムを単一の元素だと取り違えた」のは、ミスではなく希土類の性質そのものです。4f電子が内側にあるために化学的な性質がほとんど同じで、当時の分析では分けられませんでした。いまでもジジムガラスという名前が溶接用レンズの材料に残っています。

世界最強の永久磁石——なぜネオジムが要るのか

ネオジム磁石(Nd2Fe14B)は、実用になっている永久磁石の中でもっとも強力です。ただしネオジムが磁石の磁力そのものを担っているわけではありません。役割分担を見ると分かります。

成分 担っている役割
鉄 Fe 磁石としての強さ(大きな磁化)を出す
ネオジム Nd 4f電子が磁化の向きを結晶の特定方向に固定する(磁気異方性)→外から逆向きの磁場をかけても簡単に消えない
ホウ素 B この3者が組み合わさった結晶構造をつくる
永久磁石に必要なのは「強いこと」と「消えないこと」の両方です。鉄だけでは磁化は大きくても向きが簡単に乱れてしまい、永久磁石になりません。ネオジムの4f電子が磁化を1方向に縛りつけることで、小さくても強く、しかも減磁しない磁石が成立します。

弱点は熱——だからジスプロシウムが要る

ネオジム磁石には明確な弱点が2つあります。熱に弱いことと、錆びやすいことです。

弱点 何が起こるか 対策
温度が上がると磁力が落ちる 熱で原子の振動が激しくなり、揃えていた磁化の向きが乱れる。限界を超えると磁石として働かなくなる ジスプロシウム(Dy)やテルビウム(Tb)を少量加える→磁化を固定する力が強まり、高温でも耐える
鉄を多く含むため錆びる 表面から酸化が進み、磁石がぼろぼろになる ニッケルめっきや樹脂で表面を完全に覆う

この「熱対策にジスプロシウムが要る」という点が、電気自動車や風力発電の普及とレアアース問題が結びつく理由です。モーターは運転中に高温になるので、車載用の磁石には耐熱性が欠かせません。ところがジスプロシウムは産出が偏っていて供給が不安定なため、できるだけ使わずに耐熱性を出す技術の開発が進められています。

磁石以外の用途

用途 ネオジムの働き
レーザー(Nd:YAG) 結晶中のネオジムイオンが赤外のレーザー光を出す。金属の加工・医療・計測に広く使われている
ガラスの着色 ネオジムを混ぜると紫〜赤紫に発色する。光の種類によって色が変わって見える
溶接・ガラス細工用の保護レンズ プラセオジムとともにナトリウムの黄色い光を吸収する(ジジムガラス)→眩しさを抑え、手元が見やすくなる

基本情報

和名 ネオジム
英名 Neodymium
語源 ギリシャ語「新しい双子(neos+didymos)」
元素記号 Nd
原子番号 60
原子量 144.2
常温(25℃)での状態 固体(金属)
色 銀白色
密度 7.007 g/cm3(20℃)
融点 1021℃
沸点 3068℃
発見者 ウェルスバッハ(オーストリア)[1885年]
含有鉱物 サマルスキー石

よくある質問

ネオジム磁石が強いのは、ネオジムが強い磁性をもつからですか?

少し違います。磁石としての強さ(磁化の大きさ)を出しているのは主に鉄で、ネオジムの役目はその磁化の向きを結晶の特定方向に固定することです。4f電子が磁化を1方向に縛りつけるため、外から逆向きの磁場をかけても磁力が消えません。永久磁石には「強いこと」と「消えないこと」の両方が必要で、ネオジムは後者を担当しています。

電気自動車のモーターにジスプロシウムが必要なのはなぜですか?

ネオジム磁石は温度が上がると磁力が落ちるという弱点があり、モーターは運転中に高温になるからです。ジスプロシウムやテルビウムを少量加えると磁化を固定する力が強まり、高温でも磁力を保てます。ただしジスプロシウムは産出が偏っていて供給が不安定なため、これを使わずに耐熱性を出す技術の開発が進んでいます。

レアアースは本当に希少なのですか?

存在量はそれほど少なくありません。ありふれた金属より多く存在するものもあります。問題は量ではなく、仲間同士を分離するのが極端に難しいことです。希土類では増えた電子が外側ではなく内側の4f軌道に入るため、原子番号が1つ違っても化学的な性質がほとんど変わりません。供給が偏って見えるのは、この分離を大規模にやれる設備が限られているからです。

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