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プルトニウムは、アクチノイド元素で、原子番号94の元素です。

元素図鑑

どうやって作るのか——中性子を当てて1段ずつ重くする

ウランより重い元素(超ウラン元素)の多くは、原子炉の中で中性子を当てることで作られます。手順は意外に単純で、2つの段階の繰り返しです。

段階 何が起こるか 原子番号
① 中性子を吸う 原子核に中性子が入り、質量数が1増える 変わらない
② β崩壊する 核の中で中性子が陽子に変わり、電子が飛び出す 1増える=次の元素になる
③ ①②を繰り返す ウラン→ネプツニウム→プルトニウム→アメリシウム→… 階段を1段ずつ登っていける

ところが、フェルミウムで行き止まりになる

この方法は原子番号100のフェルミウムまでしか通用しません。理由は次の2つです。

行き止まりの理由 中身
β崩壊してくれない フェルミウムより先では、中性子を吸った核がβ崩壊で次の元素になる前に、α崩壊や自発核分裂で壊れてしまう
寿命が短すぎる 次の中性子が当たるのを待つ間に崩壊する→階段を1段登る時間が足りない

ここから先の元素を作るには方法を変えるしかありません。加速器で重い原子核同士をぶつけて融合させる——超重元素の合成がそれです。

「原子炉で作れる元素」と「加速器でしか作れない元素」の境目が、ちょうどフェルミウムにあります。壁の手前の元素は目に見える量まで溜められることがあり、プルトニウムやアメリシウムのように実用品にもなります。その先は1原子ずつ作って、壊れるのを観測するしかありません。

元素記号が「Pl」ではなく「Pu」になった理由

プルトニウムの元素記号はPuです。ふつうに決めるなら、綴りの頭2文字からPlになるはずでした。

命名したシーボーグは、あえて Pu を選んだと語っています。英語で「Pee-yoo」と読むと「うわ、臭い」という意味の間投詞になるからです。冗談のつもりで提案したところ、そのまま通ってしまったというのが経緯です。

名前の由来は冥王星(プルート)です。ひとつ前のネプツニウムが海王星(ネプチューン)、その前のウランが天王星(ウラヌス)——原子番号が上がるほど太陽から遠い惑星の名前になるという並びになっています。

固体の形が6通りもある——金属としては異常

プルトニウムには、ふつうの圧力のもとで6つの異なる固体の形(同素体)があります。元素のなかでもっとも多く、これが扱いにくさの最大の原因です。

何が問題になるか 中身
温度を変えると形が変わる 結晶構造が切り替わるたびに密度が大きく変わる
部品が勝手に変形する 膨らんだり縮んだりするので、寸法が保てず、割れることもある
自分の放射線で自分を壊す α崩壊で出た原子核が結晶の中を突き進み、格子を乱す→時間とともに性質が変わっていく

そこでとられる対策が合金化です。ガリウムを少量加えると、扱いやすい形(δ相)が常温でも安定になり、温度が変わっても構造が切り替わりません。「形を1つに固定する」ための添加です。

「金属の性質は元素だけでは決まらない」ことがよく分かる例です。同じプルトニウムでも、どの結晶構造をとっているかで密度も硬さも変わります。ガリウムを少し混ぜるだけで扱える材料になる——冶金学が必要とされる理由がここにあります。

プルトニウムの基本情報

和名 プルトニウム
英名 Plutonium
語源 冥王星 (Pluto)
元素記号 Pu
原子番号 94
原子量 (239)
常温(25℃)での状態 固体(金属)
色 銀白色
臭い ー
密度 19.840 g/cm3(25℃)
融点 639.5℃
沸点 3231℃
発見者 シーボーグ 他(アメリカ)[1940年]
含有鉱物 ー

プルトニウムの主な特徴

  • 原子番号94のアクチニド元素で、ウラン(U)の次に位置する超ウラン元素
  • 自然界に微量存在しますが、主に人工合成によって得られる放射性元素
  • 銀白色の金属であり、空気中で酸化して灰色や黒色に変色する
  • 金属的性質を持ちますが、6種類の同素体(α, β, γ, δ, δ′, ε相)があり、温度や圧力に応じて結晶構造が変化する
  • 最も重要な同位体はプルトニウム-239(Pu-239)で、核燃料や核兵器の主材料として利用されている

プルトニウムの歴史

発見

プルトニウムは1940年、アメリカ合衆国カリフォルニア大学バークレー校の研究チーム
(グレン・T・シーボーグ(Glenn T. Seaborg)ら)によって初めて人工合成されました。

反応は以下の通りです。

238U + 2H → 239Np → 239Pu

ウラン-238(U-238)に重陽子を照射してネプツニウム-239(Np-239)を生成し、そのβ崩壊によってプルトニウム-239が得られました。

名前の由来

元素名「プルトニウム(Plutonium)」は、天王星(ウラン)、海王星(ネプツニウム)の次にある天体冥王星(Pluto)にちなんで命名されました。

元素記号はPuですが、これはシーボーグのユーモアによる命名の一面もあります。

プルトニウムの主な用途

プルトニウムは、核分裂特性を活かして以下の分野で利用されています。

  • 核燃料: Pu-239は中性子を吸収して核分裂を起こしやすく、原子炉燃料として利用される(MOX燃料の主成分)
  • 核兵器: Pu-239の臨界質量が小さいため、核兵器の核分裂物質として用いられる
  • 放射性熱源: Pu-238はアルファ崩壊により大量の熱を放出し、探査機のRTG(放射性同位体熱電発電機)のエネルギー源となる

プルトニウムの生成方法

プルトニウムは主にウラン-238を原子炉で中性子照射することで合成されます。

  1. U-238が中性子を捕獲してU-239になる
  2. U-239がβ崩壊してNp-239(ネプツニウム)になる
  3. Np-239がβ崩壊してPu-239になる

原子炉で生産された燃料棒を再処理することで、プルトニウムを抽出します。

プルトニウムを含む化合物

プルトニウムは+3〜+7価の酸化状態を取り、様々な化合物を形成します。

  • PuO2(二酸化プルトニウム): 安定した酸化物で、核燃料やRTG用熱源として利用
  • PuF3, PuF4(フッ化プルトニウム): 精製工程や化学分離に使用
  • PuCl3(塩化プルトニウム): 高温溶融塩化学で利用
  • 硝酸プルトニウム: 再処理工程での中間体

水溶液中では、酸化還元反応により多様な価数が共存するため、化学分離が非常に難しい元素です。

プルトニウムに関わる研究事例

プルトニウムは核化学・物理学において重要な研究対象であり、以下の分野で研究が進められています。

  • 核燃料サイクル研究: MOX燃料の再利用や長寿命核種の変換技術
  • プルトニウム金属の物性研究: 多相性(同素体)や結晶構造の安定化研究
  • 放射性廃棄物管理: プルトニウムの安全な分離・固定化技術の開発
  • 核兵器解体と核不拡散: プルトニウムの管理と国際的監視体制の強化
  • Pu-238熱電発電機の改良: 宇宙探査機向けの長寿命電源開発

参考図書

第1位

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これを読めば、元素マスターに一歩も二歩も近づけます!

よくある質問

プルトニウムの元素記号がPlではなくPuなのはなぜですか?

命名したシーボーグが冗談で Pu を提案し、そのまま通ったと語っています。英語で「Pee-yoo」と読むと「うわ、臭い」という意味の間投詞になるからです。なお名前の由来は冥王星(プルート)で、ひとつ前のネプツニウムが海王星、その前のウランが天王星——原子番号が上がるほど太陽から遠い惑星の名前という並びになっています。

プルトニウムにガリウムを加えるのはなぜですか?

結晶構造を1つに固定するためです。プルトニウムはふつうの圧力のもとで6つもの固体の形をもち、温度が変わるたびに結晶構造が切り替わって密度が大きく変わります。そのため部品が勝手に変形し、寸法が保てず割れることもあります。ガリウムを少量加えると扱いやすいδ相が常温でも安定になり、温度が変わっても構造が切り替わらなくなります。

プルトニウムが「自分で自分を壊す」とはどういうことですか?

α崩壊で飛び出した原子核が結晶の中を突き進んで格子を乱すためです。放射性元素は外から何もしなくても崩壊し続けるので、時間とともに材料そのものの性質が変わっていきます。部品として長期間使う場合、この変化を見込んで設計する必要があります。

 

第2位

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