※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれています。

アインスタイニウムは、アクチノイド元素で、原子番号99の元素です。

元素図鑑

どうやって作るのか——中性子を当てて1段ずつ重くする

ウランより重い元素(超ウラン元素)の多くは、原子炉の中で中性子を当てることで作られます。手順は意外に単純で、2つの段階の繰り返しです。

段階 何が起こるか 原子番号
① 中性子を吸う 原子核に中性子が入り、質量数が1増える 変わらない
② β崩壊する 核の中で中性子が陽子に変わり、電子が飛び出す 1増える=次の元素になる
③ ①②を繰り返す ウラン→ネプツニウム→プルトニウム→アメリシウム→… 階段を1段ずつ登っていける

ところが、フェルミウムで行き止まりになる

この方法は原子番号100のフェルミウムまでしか通用しません。理由は次の2つです。

行き止まりの理由 中身
β崩壊してくれない フェルミウムより先では、中性子を吸った核がβ崩壊で次の元素になる前に、α崩壊や自発核分裂で壊れてしまう
寿命が短すぎる 次の中性子が当たるのを待つ間に崩壊する→階段を1段登る時間が足りない

ここから先の元素を作るには方法を変えるしかありません。加速器で重い原子核同士をぶつけて融合させる——超重元素の合成がそれです。

「原子炉で作れる元素」と「加速器でしか作れない元素」の境目が、ちょうどフェルミウムにあります。壁の手前の元素は目に見える量まで溜められることがあり、プルトニウムやアメリシウムのように実用品にもなります。その先は1原子ずつ作って、壊れるのを観測するしかありません。

見つかった場所は、水爆実験の残骸だった

アインスタイニウムはアルベルト・アインシュタインが発見した元素ではありません。彼の名にちなんで命名されただけで、発見したのはアメリカの研究チームです。

そして見つかった場所が独特でした。水爆実験のあとに残った物質の中です。爆発の瞬間に生じた極端に強い中性子の流れが、ウランに一度に大量の中性子を吸わせたのです。

原子炉での合成 水爆実験の中
中性子の当たり方 少しずつ、時間をかけて 一瞬で大量に
何が起こるか 1段ずつ階段を登る 質量数が一気に増え、そのあとまとめてβ崩壊する
たどり着ける元素 時間をかければ重い元素まで 通常の経路では難しい核にも到達した
「一度に大量の中性子を当てる」という条件は、実験室ではつくれません。当時この元素が見つかったのは、意図した合成ではなく実験の副産物でした。同じ経路は星の中でも起きていると考えられており、重い元素が宇宙でどう作られたかを考える手がかりにもなっています。

化学的性質がほとんど分かっていない

アインスタイニウムは、性質を調べること自体がきわめて難しい元素です。理由は3つあります。

障害 中身
量が足りない 得られるのはごく微量で、ふつうの化学分析には足りない
半減期が短い 測っている間に別の元素へ変わっていく
自分の放射線が邪魔をする 強い放射線で容器や溶媒そのものが壊れていく→何を測っているのか分からなくなる

そのため基本的な性質の測定でさえ近年になってようやく報告されたものがあります。周期表に名前が載っていても、中身がほとんど埋まっていない元素が実際に存在するということです。

アインスタイニウムの基本情報

和名 アインスタイニウム
英名 Einsteinium
語源 理論物理学者アインシュタイン (Einstein)
元素記号 Es
原子番号 99
原子量 (252)
常温(25℃)での状態 ー
色 ー
臭い ー
密度 ー
融点 860±30℃
沸点 ー
発見者 ギオルソ 他(アメリカ)[1952年]
含有鉱物 ー

アインスタイニウムの主な特徴

  • 原子番号99のアクチニウム系人工元素であり、周期表のアクチニド系に属す
  • 高度に放射性で、自然界には存在せず人工合成によってのみ得られる元素
  • 銀白色の金属と考えられますが、強い放射線によって試料が自己加熱・変質しやすいため、外観や物理的性質の詳細は限定的
  • 化学的には+3価が安定で、アクチニドの典型的性質を示す

アインスタイニウムの歴史

発見

アインスタイニウムは1952年、アメリカ合衆国のハワイ沖で行われた水素爆弾実験「アイビー作戦(Ivy Mike)」の放射性降下物の中から発見されました。

核分裂生成物および中性子捕獲反応により生成されたアインスタイニウム-253(Es-253)が最初に同定されました。

この発見は機密扱いとされ、1954年に正式に公表されました。

名前の由来

元素名は、相対性理論で知られる物理学者アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)に敬意を表して命名されました。

アインスタイニウムの主な用途

アインスタイニウムは極めて希少かつ強い放射能を持つため、実用的な用途はありません。
ただし、研究用として以下のような目的に利用されます。

  • 超重元素の合成: アインスタイニウム-254(Es-254)は、メンデレビウム(Md, Z=101)などの超重元素合成の標的核として使用
  • 核物理学研究: 崩壊特性や核構造の解析
  • アクチニド化学の比較研究: イオン半径や酸化状態の挙動分析

アインスタイニウムの生成方法

アインスタイニウムは高フルエンス中性子照射により、主に次のように生成されます。

  1. ウラン-238またはプルトニウム-239を中性子で照射してキュリウムやバークリウムを得る
  2. さらに中性子捕獲を繰り返すことでアインスタイニウムが生成される

世界でもごく少量しか生産されず、年間の総量は数百ナノグラム〜マイクログラム単位にとどまります。
主な生産施設はアメリカのオークリッジ国立研究所(ORNL)やロシアのドゥブナ合同原子核研究所(JINR)です。

アインスタイニウムを含む化合物

アインスタイニウムは+3価が安定し、アクチニウム系元素と類似した化合物を形成します。

  • Es2O3(酸化アインスタイニウム): 白色または淡黄色の酸化物
  • EsCl3(塩化アインスタイニウム): 吸湿性の固体
  • EsF3(フッ化アインスタイニウム): アクチニドフッ化物に類似した結晶構造を持つ

水溶液中では、Es3+イオンとして存在し、ランタニドやアクチニドとの分離が研究課題となっています。

アインスタイニウムに関わる研究事例

アインスタイニウムは希少で取り扱いが難しいものの、以下のような研究が行われています。

  • 超重元素合成: Es-254を用いたメンデレビウム(Md)やノーベリウム(No)の合成
  • 光学分光研究: Es3+イオンの電子遷移スペクトル測定による電子構造解析
  • 放射化学・分離科学: キュリウムやバークリウムとの分離プロセスの改良
  • 核物理学研究: α崩壊や自発核分裂の確率・エネルギー測定

参考図書

第1位

元素に関する問題がレベル別に多く掲載されており、一般的な知識からニッチな知識まで幅広く学べます。また、最後には全元素のデータが載っており、わからないことがあればすぐに調べることができます。

これを読めば、元素マスターに一歩も二歩も近づけます!

よくある質問

アインスタイニウムはアインシュタインが発見したのですか?

違います。彼の名にちなんで命名されただけで、発見したのはアメリカの研究チームです。見つかった場所も独特で、水爆実験のあとに残った物質の中でした。爆発の瞬間に生じた極端に強い中性子の流れが、ウランに一度に大量の中性子を吸わせたことで生成しました。

原子炉で作るのと、水爆実験の中でできるのとで何が違うのですか?

中性子の当たり方が違います。原子炉では少しずつ時間をかけて当たるので、1段ずつ階段を登ります。水爆実験の中では一瞬で大量に当たるため、質量数が一気に増え、そのあとまとめてβ崩壊します。この経路は星の中でも起きていると考えられており、重い元素が宇宙でどう作られたかを考える手がかりにもなっています。

アインスタイニウムの性質がほとんど分かっていないのはなぜですか?

3つの障害が重なっています。得られる量がごく微量でふつうの化学分析には足りず、半減期が短いので測っている間に別の元素へ変わり、さらに強い放射線で容器や溶媒そのものが壊れていくため何を測っているのか分からなくなるのです。基本的な性質の測定でさえ、近年になってようやく報告されたものがあります。

 

第2位

この本の一番の魅力は、とても美しい画像とともに学べるということです。

「こんなに美しい元素があったんだ、、!」という新しい発見がたくさんあると思います。

理系に限らず、文系にもおすすめの一冊です。

ランキング3位

実は鉱石好きだった宮沢賢治。

教科書にも作品を残す彼の科学者としての一面に注目した一冊です。