共役ジエンの1,2-付加と1,4-付加|速度論支配と熱力学支配で決まる理由
1,3-ブタジエンに HBr を1分子だけ付加させると、生成物が2つできます。ふつうのアルケンと同じように隣り合った2つの炭素に H と Br が付いた1,2-付加体と、両端の炭素に H と Br が付き、二重結合が真ん中へ移った1,4-付加体です。しかも McMurry の教科書によると、この比は温度で逆転します。0 °C では 1,2-付加体が 71 %、40 °C では 1,4-付加体が 85 % です。
同じ原料と同じ試薬なのに、なぜ生成物が2つに分かれるのか。なぜ温度を40度上げただけで主生成物が入れ替わるのか。この2つの「なぜ」は、どちらも反応の途中でできるアリルカチオンの性質から説明できます。この記事では、1,3-ブタジエン+HBr を軸に、共鳴で正電荷が2か所に分かれる理由、1,2-付加体が速くできる理由、1,4-付加体が安定な理由を順に追い、最後にエネルギー図1枚にまとめます。
共役ジエンとは——二重結合が単結合1本をはさんで並ぶ
共役ジエンは、2本の C=C 二重結合が単結合1本をはさんで並んだジエンです。1,3-ブタジエン(CH2=CH–CH=CH2)が最も簡単な例です。二重結合のあいだに sp3 炭素が入った 1,4-ペンタジエンのようなジエンは非共役ジエン(孤立ジエン)と呼んで区別します。
共役ジエンでは、4つの炭素の p 軌道が横に途切れずに並ぶので、π電子が C1 から C4 まで広がっています。この広がりは、構造にも数値にも表れます。McMurry によると、1,3-ブタジエンの中央の C2–C3 単結合は 147 pm で、ブタンの C2–C3 結合(153 pm)より短く、水素化熱から見積もると、二重結合2本を別々に足し合わせた予想より約 16 kJ/mol 安定です。共役による安定化の仕組みは共役とは、分子軌道での説明は共役化合物と紫外分光法の章記事で扱っています。
付加反応で違いがはっきり出ます。非共役ジエンの 1,4-ペンタジエンに HCl を2当量作用させると、2本の二重結合がそれぞれ独立にマルコフニコフ則どおりに反応して 2,4-ジクロロペンタンになります。二重結合どうしが互いの反応に関わらないからです。ところが共役ジエンでは、1本目の二重結合にプロトンが付いた瞬間に、もう1本の二重結合が反応に参加します。これが「1,4-付加」という、ふつうのアルケンにはない生成物を生みます。
1,2-付加と1,4-付加——番号はジエンの炭素に付ける
1,3-ブタジエンと HBr(1当量)の反応で得られる2つの生成物は次のとおりです。
1,2-付加は、ジエンの C1 に H、C2 に Br が付いたもので、ふつうのアルケンへの付加と同じ形です。1,4-付加は、C1 に H、C4 に Br が付いたもので、残った二重結合は C2–C3 の位置に移っています。
1,2-付加体で Br が付いた炭素(ジエンの C2。生成物名では3番の炭素)は不斉炭素ですが、平面のカチオンに Br− が両側から同じように近づけるので、ラセミ体として得られます。
機構——アリルカチオンが2つの出口を持つ
段階1:プロトンは末端の炭素(C1)に付く
反応の第一段階は、アルケンへの求電子付加と同じく、π電子が H+ を攻撃してカルボカチオンができる段階です(基本はアルケンの求電子付加)。1,3-ブタジエンでは、H+ が付く場所の候補は2つあります。
| H+ が付く炭素 | できるカルボカチオン | 安定性 |
|---|---|---|
| C1(末端) | C2 に正電荷。隣の C3=C4 と共役した第二級のアリルカチオン | 安定 |
| C2(内側) | C1 に正電荷。隣の C2 は sp3 になり、C3=C4 とは共役しない第一級の非アリル型カチオン | 不安定 |
C1 にプロトンが付くと、正電荷を持つ C2 の空の p 軌道が、すぐ隣の C3=C4 のπ軌道と横に重なります。正電荷が共鳴で分散するので、アリルカチオンはふつうのカルボカチオンよりずっと安定で、速くできます。C2 にプロトンが付くと、正電荷は C1 という第一級の炭素に乗り、二重結合とは sp3 炭素で隔てられて共鳴の助けも受けられません。より安定なカチオンを経る経路が速いというのはマルコフニコフ則と同じ考え方で、ジエンでは「末端にプロトンが付く」が答えになります。
段階2:アリルカチオンの共鳴——正電荷は C2 と C4 に分かれる
C1 にプロトンが付いてできたカチオンは、2つの共鳴構造で表されます。
ここで大事なのは、正電荷が乗るのは C2 と C4 で、間の C3 には乗らないことです。C2・C3・C4 の3つの p 軌道にπ電子2個が広がった状態が実際のカチオンで、2つの共鳴構造はその姿を紙の上で表すための書き方にすぎません。2種類のカチオンが行ったり来たりしているわけではありません。共鳴の書き方は共鳴とは、アリルカチオンとアリルラジカルの安定性はアリル位の安定性で扱っています。
もう1つ押さえたいのは、2つの共鳴構造が等価ではないことです。左の構造では正電荷が第二級炭素(C2)に、右の構造では第一級炭素(C4)にあります。第二級カチオンのほうが安定なので左の構造の寄与が大きく、実際のカチオンでもC2 のほうが C4 より大きな正電荷を持っています。McMurry はこれを静電ポテンシャル図で示し、Br− がより正の炭素(C2)と反応すると1,2-付加体になると説明しています。この差が、次の「どちらが速いか」の答えにつながります。
段階3:Br− は C2 にも C4 にも結合できる
最後に Br− が正電荷を持つ炭素に結合します。正電荷は C2 と C4 の両方にあるので、Br− が C2 に結合すれば1,2-付加体、C4 に結合すれば1,4-付加体になります。2つの生成物は、同じ1つの中間体の2つの出口です。だから共役ジエンへの求電子付加では、多くの場合、2種類の生成物ができます(2つの共鳴構造が等価なカチオンでは、1,2-付加体と1,4-付加体が同じ化合物になります。後の例題2を参照)。
温度で主生成物が入れ替わる——教科書のデータ
この反応の生成物比は、反応温度によって大きく変わります。McMurry(第14章 §14.3)は次の3つの事実を挙げています。
| 条件 | 1,2-付加体 : 1,4-付加体 | 主生成物 |
|---|---|---|
| 0 °C で反応させる | 71 : 29 | 1,2-付加体 |
| 40 °C で反応させる | 15 : 85 | 1,4-付加体 |
| 0 °C で得た混合物を、HBr の存在下で 40 °C に加熱する | 71 : 29 からゆっくり 15 : 85 へ変化 | 1,4-付加体 |
出典:McMurry, Organic Chemistry 9th Ed., §14.3。教科書によって挙げている温度と比の値は少しずつ異なりますが、「低温では1,2-付加体、高温では1,4-付加体が主になる」という向きは共通しています。
3つ目の事実が決定的です。0 °C でいったんできた1,2-付加体が、加熱すると1,4-付加体へ変わっていきます。生成物どうしが行き来できるということで、40 °C の結果は、行き来の末に落ち着いた平衡の比だと分かります。一方、0 °C の 71 : 29 は平衡の比ではなく、2つの出口から生成物が出てくる速さの比です。
前者を熱力学支配、後者を速度論支配(速度支配とも)と呼びます。それぞれを生んでいる理由を、順に見ていきます。
1,2-付加体はなぜ速くできるのか——速度論支配
低温で1,2-付加体が主になるのは、アリルカチオンの C2 に Br− が結合する段階の活性化エネルギーが、C4 に結合する段階より低いからです。その理由として、2つの説明がよく使われます。
1つ目は、正電荷の大きさの違いです。前の節で見たように、アリルカチオンの正電荷は C4 より C2(第二級炭素)に多く乗っています。陰イオンの Br− は、より大きな正電荷を持つ炭素と強く引き合うので、そちらとの結合形成の山が低くなります。McMurry(§14.2)の説明はこちらです。
2つ目は、Br− の位置です。H–Br から H+ が C1 に渡った直後、Br− はまだ C1 のすぐそばにいます。C1 の隣にあるのは C2 なので、Br− が C4 側へ回り込むより先に C2 と結合しやすい、という説明です(イオン対・近接効果による説明)。こちらは簡略化したモデルとして教えられることが多い説明で、1つ目と矛盾するものではありません。
どちらの説明でも結論は同じで、1,2-付加体へ向かう山のほうが低いということです。低温では、いったんできた生成物が中間体に戻る速さが無視できるほど遅いので、先にたくさんできた1,2-付加体がそのまま残ります。
1,4-付加体はなぜ安定なのか——熱力学支配
安定なのは1,4-付加体です。違いは残った二重結合にあります。
| 1,2-付加体 | 1,4-付加体 | |
|---|---|---|
| 構造 | CH3–CHBr–CH=CH2 | CH3–CH=CH–CH2Br |
| 二重結合 | 末端にある一置換アルケン | 内側にある二置換アルケン |
| 安定性 | 不安定 | 安定 |
アルケンは、二重結合の炭素に付いたアルキル基が多いほど安定です。McMurry は水素化熱でこれを示しており、一置換アルケンの水素化熱が約 −126 kJ/mol なのに対し、二置換アルケンは約 −119 kJ/mol と、約 7 kJ/mol 小さくなります(McMurry 表14.1 の 1-ブテンと 2-メチルプロペンの値。水素化で放出する熱が小さい=もともとエネルギーが低い)。1,4-付加体と同じ1,2-二置換の trans-2-ブテンでは約 −115 kJ/mol で、二置換アルケンの値はおよそ −115〜−119 kJ/mol の幅に入ります。アルキル基の C–H 結合とπ軌道の重なり(超共役)などがこの安定化の理由で、詳しくはアルケンの構造と反応性で扱っています。
1,4-付加体では二重結合が C2–C3 に移り、両側にメチル基と CH2Br 基を持つ二置換アルケンになります。1,2-付加体は二重結合が末端(C3=C4)に残った一置換アルケンです。この差が、平衡で1,4-付加体が多くなる理由です。
温度が逆転を起こす仕組み——鍵は可逆性
では、なぜ 40 °C では平衡に達するのでしょうか。カギは、生成物の C–Br 結合が切れてアリルカチオンに戻れるかどうかです。
1,2-付加体も1,4-付加体も、Br が二重結合の隣の炭素(アリル位)に付いたアリル型の臭化物です。C–Br 結合が切れて Br− が外れると、どちらからも共鳴で安定化された同じアリルカチオンに戻ります。アリルカチオンが安定なぶん、この逆戻りはふつうのハロゲン化アルキルの電離より起こりやすく、温度を上げると実際に起こるようになります。戻ったカチオンは再び C2 か C4 で Br− と結合するので、生成物どうしが中間体を経由して行き来できるのです。
行き来が始まると、どちらの生成物から戻りやすいかが効いてきます。1,2-付加体は「山が低く、谷が浅い」生成物なので、カチオンへ戻るのに越える山(逆反応の活性化エネルギー)が小さく、何度も中間体へ戻ります。1,4-付加体は「山が高いが、谷が深い」生成物なので、戻るための山が大きく、いったんできるとなかなか戻りません。行き来をくり返すうちに、生成物は深い谷の1,4-付加体へたまっていきます。
速度論支配と熱力学支配の一般論と、エノラートの位置選択や Diels–Alder 反応の endo/exo といったほかの例は、速度論支配と熱力学支配の記事にまとめています。この記事では、共役ジエンに固有の部分(アリルカチオンの2つの出口と、アリル型臭化物の逆戻り)に話を絞っています。
エネルギー図で見る1,2-付加と1,4-付加
ここまでの話は、1枚のエネルギー図に重ねられます(McMurry の図14.7と同じ構図)。
図の読み方のポイントは3つです。
- 最も高い山は第一段階(プロトン化)。この段階は2つの生成物に共通なので、生成物の比はここではなくアリルカチオンからの分かれ道で決まる
- 分かれ道の山の高さ(TS(1,2) と TS(1,4))が、速度論支配のときの比を決める。1,2-付加体へ向かう山のほうが低い
- 谷の深さ(生成物のエネルギー)が、熱力学支配のときの比を決める。1,4-付加体の谷のほうが深い
逆向きに見ると、生成物からアリルカチオンへ戻る山の高さは「TS のエネルギー − 生成物のエネルギー」です。1,2-付加体は TS が低いうえに谷が浅いので戻る山が小さく、1,4-付加体は TS が高いうえに谷が深いので戻る山が大きい——前の節で文章で説明したことが、図では一目で分かります。エネルギー図の基本的な読み方は反応エネルギー図の読み方で解説しています。
ほかのジエン・ほかの求電子剤でも考え方は同じ
生成物を書く手順
非対称なジエンでも、次の手順で生成物を漏れなく書けます。McMurry の例題もこの手順で解いています。
- ジエンのどちらの末端にプロトン(求電子剤)が付くかを考え、より安定なアリルカチオンができるほうを選ぶ
- そのアリルカチオンの共鳴構造を2つ書き、正電荷が乗る2つの炭素を確認する
- それぞれの正電荷の炭素に求核剤(Br− や Cl−)を結合させて、1,2-付加体と1,4-付加体を書く
- 2つの共鳴構造が等価なら、1,2-付加体と1,4-付加体は同じ化合物になる
例:イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)+ HBr
イソプレン(CH2=C(CH3)–CH=CH2)では、メチル基の付いた C2 側の末端(C1)にプロトンが付くと、正電荷が第三級の C2 に乗るアリルカチオンができます。反対側の末端(C4)に付いた場合は、正電荷が第二級の C3 に乗るカチオンにしかならないので、C1 へのプロトン化が有利です。
ここでも1,4-付加体のほうが二重結合の置換基が多い(三置換)ので、熱力学的には1,4-付加体が有利と予想できます。
臭素(Br2)の付加
求電子剤は H+ に限りません。McMurry によると、1,3-ブタジエンに Br2 を付加させても、3,4-ジブロモ-1-ブテン(1,2-付加体)と 1,4-ジブロモ-2-ブテン(1,4-付加体)の混合物ができます。ふつうのアルケンへの臭素付加は環状のブロモニウムイオンで説明しますが(アルケンのハロゲン化)、1,4-付加体ができることを説明するには、正電荷が C2 と C4 に広がったアリル型の中間体を考える必要があります。
ラジカルでも同じ形の混合物ができる
アリルラジカルも、アリルカチオンと同じように両端の炭素が反応点になります。McMurry は、NBS によるアルケンのアリル位臭素化で生成物の混合物ができることを、共役ジエンへの付加と同じ型の現象として挙げています。ラジカル側の例はNBSの記事で扱っています。
混同しやすい「1,4-付加」——マイケル付加・Diels–Alder 反応との違い
「1,4-付加」という言葉は、有機化学の別の場面でも出てきます。似た名前で混ざりやすいので、違いを整理しておきます。
| 反応 | 1〜4番の原子 | 最初に攻撃するもの | 中間体 |
|---|---|---|---|
| 共役ジエンへの求電子付加(この記事) | C1=C2–C3=C4 | ジエンの末端が求電子剤(H+ など)を攻撃する | アリルカチオン |
| α,β-不飽和カルボニルへの共役付加(マイケル付加など) | O=C–C=C(酸素を1番と数える) | 求核剤が β炭素を攻撃 | エノラート |
| Diels–Alder 反応 | ジエンの C1〜C4 | 1段階でジエノフィルと環をつくる | なし(協奏的) |
共役ジエンへの付加では、電子が豊富なジエンが求電子剤に攻撃をしかける側です。一方、α,β-不飽和カルボニル化合物への共役付加では、カルボニルに引っぱられて電子が不足した β炭素が求核剤に攻撃される側で、極性の向きが逆です。共役付加はマイケル付加やギルマン試薬、カルボニル側への1,2-付加を選ぶ方法はルーシェ還元で扱っています。共役ジエンが関わるもう1つの代表的な反応がディールス・アルダー反応で、こちらはイオンを経ずに C1 と C4 で同時に新しい結合ができる環化付加です。
試験での問われ方と例題
院試や定期試験では、この反応は次のような形で問われます。
- 共役ジエンに HX や X2 を1当量付加させたときの生成物を、1,2-付加体と1,4-付加体の両方とも書かせる
- 低温と高温で主生成物が異なる理由を、速度論支配・熱力学支配の言葉で説明させる
- 低温で得た混合物を加熱すると比が変わる理由(生成物どうしが変換する機構)を書かせる
- 1,4-付加体のほうが安定な理由を説明させる
- 反応のエネルギー図を描かせる
McMurry の例題14.1です。プロトン化の場所は2通りあります。C1=C2 の二重結合の C1(メチル基の付いていない側)にプロトンが付くと、メチル基の付いた C2 に正電荷が乗る第三級のアリルカチオンができ、Cl− との反応で1,2-付加体の 3-クロロ-3-メチルシクロヘキセンと、1,4-付加体の 3-クロロ-1-メチルシクロヘキセンを与えます。C3=C4 の二重結合の C4 にプロトンが付くと、2つの共鳴構造が等価な第二級のアリルカチオンができるので、1,2-付加体と1,4-付加体は同じ 6-クロロ-1-メチルシクロヘキセンになります。第三級のアリルカチオンのほうが安定なので、前者のプロトン化のほうが起こりやすいと考えます。
1,3-ペンタジエン(CH2=CH–CH=CH–CH3)の C1(末端の CH2)にプロトンが付くと、正電荷が C2 と C4 に分かれるアリルカチオンができます。C2 も C4 も第二級の炭素なので、両端とも第二級という安定なアリルカチオンです。C4 にプロトンが付く場合は、正電荷が C3(第二級)と C1(第一級)に分かれるカチオンになり、こちらは不安定です。したがって C1 へのプロトン化が優先します。このカチオンの2つの共鳴構造は、CH3–CH+–CH=CH–CH3 と CH3–CH=CH–CH+–CH3 で、左右対称の同じ形です。そのため Cl− が C2 に結合しても(1,2-付加)、C4 に結合しても(1,4-付加)、生成物はどちらも CH3–CHCl–CH=CH–CH3(4-クロロ-2-ペンテン)になります。
どちらの付加体もアリル型の臭化物で、40 °C では C–Br 結合が切れて Br− が外れ、共鳴で安定化された同じアリルカチオンに戻ることができます。戻ったカチオンは再び C2 か C4 で Br− と結合するので、2つの付加体はこのカチオンを経由して相互に変換し、平衡に達します。平衡では、二置換の内部アルケンを持つより安定な1,4-付加体が多くなります。0 °C ではこの逆戻りが遅く、速くできる1,2-付加体が多いまま残ります。
まとめ
よくある質問
どちらも1,3-ブタジエンのような共役ジエンに HBr などが付加する反応で、プロトンはどちらもジエンの末端の C1 に付きます。違いは臭素などの求核剤が付く炭素で、隣の C2 に付けば1,2-付加、反対の端の C4 に付けば1,4-付加です。1,4-付加では、残った二重結合が C2 と C3 のあいだに移ります。2つの生成物は同じアリルカチオン中間体から分かれてできます。
アリルカチオンの C2 に臭化物イオンが結合する段階の活性化エネルギーが、C4 に結合する段階より低いからです。正電荷は第一級の C4 より第二級の C2 に多く乗っているので、臭化物イオンは C2 と速く結合します。低温では生成物がカチオンへ戻る反応がほとんど起こらないため、速くできた1,2-付加体がそのまま残ります。これを速度論支配と呼びます。
高温では、生成物の炭素と臭素の結合が切れて共通のアリルカチオンに戻れるようになり、1,2-付加体と1,4-付加体が相互に変換して平衡に達するからです。平衡では安定な生成物が多くなります。1,4-付加体の二重結合は二置換の内部アルケンで、一置換の末端アルケンを持つ1,2-付加体より安定です。これを熱力学支配と呼びます。
1,2や1,4という番号は、生成物の名前ではなく、出発物質の1,3-ブタジエンの何番目の炭素に水素と臭素が付いたかを表しているからです。3-ブロモ-1-ブテンは、ジエンの C1 に水素、C2 に臭素が付いたものなので1,2-付加体です。生成物を IUPAC 名で番号付けし直すと臭素の付いた炭素が3番になるため、名前と付加様式の番号が一致しません。
違います。共役ジエンへの1,4-付加は、電子が豊富なジエンがプロトンなどの求電子剤を攻撃し、アリルカチオンを経て進む求電子付加です。マイケル付加などの共役付加は、カルボニル基に電子を引っぱられた α,β-不飽和カルボニル化合物の β炭素を求核剤が攻撃し、エノラートを経て進む求核付加です。番号の数え方も、共役付加では酸素を1番と数えます。
