ブレンステッド酸塩基反応はプロトン移動であり、酸性度や塩基性度を一つの尺度で表すことができる。
しかし、ルイス酸やルイス塩基はそれぞれの種類によって反応性が異なる。そのため、一つの尺度で表すことが難しい。
R.G.Pearsonは、ルイス酸とルイス塩基をそれぞれ硬い酸塩基、軟らかい酸塩基に分類し、その反応性を説明した。この考え方をHSAB則という。
HSAB則とは
HSAB則とは、「Hard and Soft Acids and Bases」の頭文字をとって名付けられた原理である。
酸と塩基をそれぞれ硬いと軟らかいという言い方で分類した。ここで、硬いや軟らかいは物理的なものではない。
硬い酸、硬い塩基は次のような特徴をもつ。
- 高い電荷をもつ
- 原子半径が小さい
- 分極しにくい
一方、軟らかい酸、軟らかい塩基は次のような特徴をもつ。
- 電荷が低い
- 原子半径が大きい
- 分極しやすい
硬い酸は硬い塩基と反応しやすい。同様に、軟らかい酸は軟らかい塩基と反応しやすい。
HSAB則による分類
硬い | 中間 | 軟らかい | |
酸 | BF3, B(OH)3, CO2, SO3, H+, Li+, Mg2+, Al3+, Fe3+, RCO+ | BR3, SO2, Zn2+, Fe2+, NO+, R3C+ | B2H6, quinone, Ag+, Hg+, Hg2+, M0, HO+, RO+, RS+, RSe+, Br+, I+, CH3+, RCH2+ |
塩基 | NH3, RNH2, H2O, ROH, OH–, O2–, RO–, F–, Cl–, RCO2–, SO42-, CO3–, NO2– | PhNH2, N3–, Br–, SO32-, Py | R3P, (RO)3P, RSH, H–, R–, SCN–, CN–, S2-, RS–, S2O32-, I– |