アメリシウム (Americium) は、原子番号95の人工元素で、周期表のアクチニウム系列に属しています。以下にアメリシウムの詳細について説明します。
アメリシウムの基本情報
和名 | アメリシウム |
---|---|
英名 | Americium |
語源 | アメリカ大陸 (America) |
元素記号 | Am |
原子番号 | 95 |
原子量 | (243) |
常温(25℃)での状態 | 固体(金属) |
色 | 銀白色 |
密度 | 13.670 g/cm3(20℃) |
融点 | 1172℃ |
沸点 | 2607℃ |
発見者 | シーボーグ 他(アメリカ)[1945年] |
含有鉱物 | - |
アメリシウムの主な特徴
- アクチニド系列の人工放射性元素
- 銀白色の金属で、α線を主に放出するα崩壊性の核種が多く、自然界には存在しない
- 長寿命の同位体(特に
Am-241
)は、家庭用煙探知器や中性子源として利用される - 化学的性質はアクチニウム系に典型的で、+3価で安定に存在す
アメリシウムの歴史
発見
アメリシウムは1944年、アメリカのローレンス・バークレー研究所において、グレン・シーボーグらのチームにより発見されました。
Pu-239
に中性子を照射して得られるPu-241
がβ⁻崩壊し、Am-241
が生成されることが発見の契機となりました。
公表は第二次世界大戦終了後の1945年です。
名前の由来
アメリシウム(Americium)の名は、発見地であるアメリカ大陸(America)に由来し、周期表上でランタノイドのユウロピウム(Eu)に対応して名付けられました。
アメリシウムの主な用途
アメリシウムは放射性同位体としてさまざまな工業・家庭用用途に利用されています:
- 煙探知器:
Am-241
のα線で空気を電離 → 煙で電流低下 → 警報発生 - 中性子源:
Am-Be
などで高エネルギー中性子を放出(実験・産業用途) - 厚さ・密度測定: α線またはγ線の透過性を利用
- 放射線科学の研究: α崩壊・スペクトル・核反応性などの基礎研究に用いられる
アメリシウムの最も一般的な用途は、Am-241を用いた放射性同位体電池と煙検知器です。
煙検知器
Am-241はアルファ粒子を放出するため、イオン化式煙検知器に使用されます。アルファ粒子が空気を電離し、煙がその電離を妨げることで警報が作動します。
放射性同位体電池
Am-241の放射性崩壊から発生する熱を利用して電気を生成するために使われます。宇宙探査機や遠隔地での電源供給に使用されることがあります。
研究用途
アメリシウムは核物理学や放射線の研究においても重要な役割を果たします。
アメリシウムの生成方法
アメリシウムは天然には存在しないため、原子炉内で人工的に生成されます。
主な手順は以下のとおりです:
- Pu-239に中性子を照射:
Pu-239 → Pu-240 → Pu-241
- Pu-241のβ崩壊:
Pu-241 → Am-241 + β⁻
- 得られたAm-241を化学的に分離・精製
また、核兵器の爆発実験後の核分裂生成物中にも微量に存在します。
アメリシウムを含む化合物
アメリシウムは+3価で安定であり、典型的なアクチニド化合物を形成します:
- 酸化アメリシウム(III)(Am₂O₃): ピンク~褐色の固体
- 硝酸アメリシウム(III)(Am(NO₃)₃): 水溶液中で安定
- フッ化物・塩化物: AmF₃、AmCl₃など、他のアクチニドと類似
- 錯体化合物: DTPAなどのキレート剤と安定な錯体を形成し、医療や環境中の移動性研究に使用される
アメリシウムに関する研究事例
アメリシウムは放射性核種の一つとして、環境科学・原子力工学など多分野で研究対象となっています:
- Am-241の吸収・代謝: 生体内動態の解析による内部被曝評価
- 地層処分研究: 地下環境におけるアメリシウムの溶解・移動挙動
- アクチニド分離技術: Amと他の元素(Cm、Lnなど)との選択的分離法の開発
- レーザー分光による同位体測定: 超微量アメリシウムの非破壊分析
- 次世代中性子源: Am-Be、Am-Liなどを用いた可搬型中性子源の研究
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