高分子に溶解のイメージはあまりないかもしれません。
ですが、高分子も有機化合物ですから、適当な有機溶媒には溶解します。
溶解
高分子は、長い分子鎖が集まったものです。
高分子には、結晶性部分と非晶性部分があります。
結晶性部分では、分子鎖が平行に緊密に集まっています。
非晶性部分では、分子鎖の集合がほどけ、房状になっています。
溶媒と高分子の相互作用
高分子を適当な溶媒に入れると、非晶性部分に溶媒が入り込みます。
すると、その部分がさらにほどけます。
この状態が「膨潤」です。
非晶性部分に入り込んだ溶媒は、次第に結晶性部分にも入り込みます。
すると、高分子鎖が一本一本バラバラになります。
この状態になると、高分子鎖が多くの溶媒に取り囲まれます。
これが「溶解」です。
なお、高分子鎖と溶媒の間には、ファンデルワールス力が働いています。
濃度と分子形態
十分に希薄な溶液中では、高分子鎖が自由に振動・回転をしています。
このときに必要とする空間を、高分子鎖一本の体積とします。
この体積が重なり合わない溶液が「希薄溶液」です。
これが、多少の接触が起きるようになると、「準希薄溶液」となります。
さらに一定体積中の高分子鎖が増え、互いに運動を阻害し始めると、「濃厚溶液」となります。
溶解度パラメーター
分子量の小さいものには、「ある物質はそれに似ている物質に溶ける」という原理が成り立ちます。
たとえば、極性の高いものは極性の高いものに溶けるといった感じです。
では、この原理は高分子に対しても成り立つのでしょうか。
その答えは「△」です。
必ずしもこの原理を適用できるわけではありません。
アルコールからできたポリビニルアルコールは、アルコール性溶媒に溶けません。
炭化水素のポリエチレンは、炭化水素のヘキサンに溶けません。
高分子の溶解の目安となるのは、溶解度パラメーターです。
溶解度パラメーターは、高分子と溶媒の両方に定義されます。
そして、この溶解度パラメーターが近い値を示すもの同士がよく溶けるということになります。
最後に
プラスチックを溶解することは、あまりないかもしれません。
しかし、高分子にも溶解性はあることを知っておいてください。