SCIENCE

【高分子の化学的性質】溶解性を理解する【プラスチックシリーズ】

高分子に溶解のイメージはあまりないかもしれません。

ですが、高分子も有機化合物ですから、適当な有機溶媒には溶解します。

溶解

ビーカーの画像

高分子は、長い分子鎖が集まったものです。

高分子には、結晶性部分と非晶性部分があります。

結晶性部分では、分子鎖が平行に緊密に集まっています。

非晶性部分では、分子鎖の集合がほどけ、房状になっています。

溶媒と高分子の相互作用

高分子を適当な溶媒に入れると、非晶性部分に溶媒が入り込みます。

すると、その部分がさらにほどけます。

この状態が「膨潤」です。

非晶性部分に入り込んだ溶媒は、次第に結晶性部分にも入り込みます。

すると、高分子鎖が一本一本バラバラになります。

この状態になると、高分子鎖が多くの溶媒に取り囲まれます。

これが「溶解」です。

なお、高分子鎖と溶媒の間には、ファンデルワールス力が働いています。

濃度と分子形態

十分に希薄な溶液中では、高分子鎖が自由に振動・回転をしています。

このときに必要とする空間を、高分子鎖一本の体積とします。

この体積が重なり合わない溶液が「希薄溶液」です。

これが、多少の接触が起きるようになると、「準希薄溶液」となります。

さらに一定体積中の高分子鎖が増え、互いに運動を阻害し始めると、「濃厚溶液」となります。

溶解度パラメーター

泡の画像

分子量の小さいものには、「ある物質はそれに似ている物質に溶ける」という原理が成り立ちます。

たとえば、極性の高いものは極性の高いものに溶けるといった感じです。

では、この原理は高分子に対しても成り立つのでしょうか。

その答えは「△」です。

必ずしもこの原理を適用できるわけではありません。

アルコールからできたポリビニルアルコールは、アルコール性溶媒に溶けません。

炭化水素のポリエチレンは、炭化水素のヘキサンに溶けません。

高分子の溶解の目安となるのは、溶解度パラメーターです。

溶解度パラメーターは、高分子と溶媒の両方に定義されます。

そして、この溶解度パラメーターが近い値を示すもの同士がよく溶けるということになります。

最後に

プラスチックを溶解することは、あまりないかもしれません。

しかし、高分子にも溶解性はあることを知っておいてください。