SCIENCE

【高分子の化学的性質】耐熱性を理解する【プラスチックシリーズ】

耐熱性は、高分子の大きな特徴の一つです。

プラスチックにも、電子レンジに入れていいものとそうでないものがあります。

高分子の耐熱性は、しっかり理解しておきましょう。

物理的耐熱性

耐熱性と高分子

耐熱性とは、加熱による物性の変化が起こらないことです。

ガラス転位温度がその指標となります。

プラスチックなどの高分子は、もともと耐熱性が低いものであり、用途が限られていました。

そこから用途拡大のため、耐熱性の向上が図られてきました。

耐熱性が高まることによって、高分子が発展したと言っても過言ではありません。

物理的な変性

高分子の熱による変性には、2種類あります。

物理的な変性と化学的な変性です。

物理的な変性とは、分子構造の変化を伴わない変性のことです。

すなわち、高分子の集合状態の変化に伴う変性のことを言います。

分子運動と耐熱性

耐熱性で重要となってくるのは、ミクロブラウン運動とマクロブラウン運動です。

ミクロブラウン運動とマクロブラウン運動については、こちらの記事で説明しています。

ミクロブラウン運動のときは、固体状態を保っているので、材料として使用することができます。

それに対し、マクロブラウン運動のときは、材料として使用できないどころか、形状さえ保てなくなります。

分子構造とガラス転位点

分子構造とガラス転位点には、以下のような関係があります。

  • 高分子主鎖にベンゼンなどの芳香環がついていると、分子が剛直になり、屈曲性が低くなる。すなわち、マクロブラウン運動を起こしづらくなるので、ガラス転位点は高くなる。
  • 主鎖がジグザグ構造になっており、屈曲性が高い。すなわち、マクロブラウン運動を起こしやすいので、ガラス転位点は低くなる。
  • 側鎖置換基が大きいと、ガラス転位点は高い。側鎖置換基が小さい、あるいは無いと、ガラス転位点は低い。

化学的耐熱性

物理的な変性が可逆変化なのに対し、化学的な変性は不可逆変化です。

したがって、化学的な変性は、絶対に防がなければいけません。

化学的な変性を防ぐためには、高分子鎖をつくる化学結合の結合エネルギーを高める必要があります。

そのためには、以下の方法が有効です。

  1. 主鎖にケイ素などの無機元素を導入する
  2. 分子骨格を剛直にする

有機化合物においては、特に後者の方法が採られます。

その場合、具体的には以下のような方法を用います。

  • 主鎖に芳香環を導入する
  • 梯子構造を導入する
  • 高分子の結晶性を高める

難燃性

高分子の用途の一つに、合成繊維があります。

合成繊維は、衣服やカーテンなど、非常に多く使われています。

これらは、燃えてしまうと、命にかかわります。

そこで、高分子には難燃性が求められます。

高分子の燃焼

高分子は、加熱されることで分解し、一部が揮発します。

その揮発した成分に引火すると、本格的な火災に発展するのです。

ですから、高分子を難燃性にするためには、化学結合を強める必要があります。

高分子の種類と燃焼性

燃焼に必要なのは、酸素です。

したがって、高分子中の酸素濃度が高いほど、燃焼性が高いということになります。

逆に、酸素濃度が低ければ、難燃性を示します。

特に、ハロゲンなどの反応しづらい元素が含まれていると、燃えづらいです。

以下に、高分子の種類とその燃焼性を示します。

  1. 難燃性
    • テフロン
    • ポリ塩化ビニル
    • フェノール樹脂
  2. 自己消火性
    • ナイロン66
    • ポリカーボネート
    • ポリビニルアルコール
  3. 延焼性
    • セルロース
    • ポリエチレン
    • ポリオキシメチレン

最後に

高分子において、耐熱性はとても重要な性質です。

色々な種類のプラスチックの耐熱性を調べてみてください。