生薬(薬用植物)の基原・性状・主要成分・薬効|マクリ・マオウほか
今回は、薬用植物を基原(植物)の分類に基づいて紹介していきます。
生薬とは?
古くから、人々は植物や天然物から得られる様々な効能を利用し、健康を維持したり病気を治したりしてきました。その中でも特に重要な役割を果たしてきたのが「生薬」です。生薬は、植物の根、茎、葉、花、果実などから抽出される天然の薬効成分であり、漢方医学や伝統的な民間療法において広く用いられてきました。
生薬には数多くの種類があり、それぞれが異なる健康効果を持っています。例えば、人参は体力増強や免疫力向上に効果があり、甘草は消化を助けたり咳を和らげたりする効果があります。また、ハーブやスパイスも生薬の一種であり、料理や飲み物に使われることで健康効果を享受することができます。
生薬の魅力は、その自然の恵みから生まれる健康効果にあります。化学的な合成薬と比較して、生薬は自然の成分をそのまま含んでいるため、副作用が少ないとされています。また、生薬の多くは体の自然な治癒力を高める働きを持っており、根本的な健康改善に貢献します。
さらに、最近の研究では生薬の健康効果が科学的にも証明されつつあります。抗炎症作用や抗酸化作用、抗がん作用など、多くの生薬が様々な疾患に対して有効であることが示されています。これらの研究成果は、生薬が現代医学や健康管理の分野でますます重要な役割を果たしていることを示しています。
生薬を取り入れる方法はさまざまです。漢方薬やサプリメントとして摂取することはもちろん、ハーブティーを飲んだり、料理にスパイスを加えたりすることも有効です。ただし、適切な摂取量や使用方法を守ることが重要です。また、個々の体質や状況に合わせて生薬を選択することも大切です。
生薬は、私たちが自然と調和して健康な生活を送るための重要なツールです。その豊かな恵みを取り入れることで、体や心のバランスを整え、健やかな生活を送ることができます。このブログでは、生薬に関する情報や最新の研究成果、使い方や注意点などを幅広く取り上げ、読者の皆さんが生薬の恩恵を最大限に活用できるようサポートしていきます。健康で充実した毎日を過ごすために、ぜひ生薬の世界に興味を持ち、一緒に探求していきましょう。
藻類を基原とする生薬
海人草(マクリ) Digenea

基原・用部
マクリ(フジマツモ科)の全藻
性状
暗赤紫色~暗灰赤色または灰褐色で径2~3 mmの丸いひも状を呈し、不規則な二股状に数回分枝し、短毛様の小枝で覆われる
性状とは、生薬の判定基準となる特徴的な要素、色、形、味、においなどを表す
産地
東沙群島、海南島、台湾、沖縄、鹿児島など
主要成分
アミノ酸誘導体であるα-カイニン酸(約0.2%)、その立体異性体α-アカロカイニン酸(微量)
確認試験
試料の加温水抽出溶液とカイニン酸標準溶液について薄層クロマトグラフ法により試験を行う。ニンヒドリンの水飽和1-ブタノール溶液(1→500)を噴霧して加熱するとき、試料溶液と標準溶液から得たスポットは淡黄色を呈し、それらのRf値は等しい。
薬効・用途
回虫駆除作用、カイニン酸製造原料、鷓鴣菜湯(しゃこさいとう)、清肌安蛔湯(せいきあんかいとう)
南九州、徳之島で同様の目的で利用されていたハナヤナギ(フジマツモ科)からも関連有効成分としてドモイン酸が見出されている。グルタミン酸アナログは、グルタミン酸感受性シナプスに作用して顕著な中枢神経興奮作用を示すことから、神経薬理学分野の重要な研究薬物となっている。
菌類を基原とする生薬
麦角(バッカク) Ergot

基原・用部
麦角菌(バッカクキン科)がライ麦、その他のイネ科植物の花穂に寄生して生じる菌核
性状
外面が黒紫色~灰紫色で、径2~5 mm、長さ10~40 mmの鈍い稜のある紡錘形であり、縦溝と横の裂け目がある。折れやすく、横切面の周りは黒紫色、内部は灰白色で、弱い特異臭がある。味は、始めはやや甘く、後に不快となる。
産地
アメリカ、ロシア、スペイン、北アフリカなど
主要成分
バッカクアルカロイド:エルゴメトリン、エルゴタミン、エルゴシン
キントン類:エルゴクロムA, B、セカロニン酸Aなど
アントラキノン類:クラボルビンなど
その他、脂肪油など
確認試験
エルゴタミンの氷酢酸/酢酸エチル混液に硫酸を加えると紫色を呈し、そこへ塩化鉄(Ⅲ)試液を加えると青色~青紫色になる。エルゴタミンの酒石酸溶液に4-ジメチルアミノベンゼアルデヒド・塩化鉄(Ⅲ)試液を加えると青色を呈する。
薬効・用途
エルゴタミンは交感神経遮断作用、血管収縮作用が顕著であることから片頭痛の治療に用いられている。エルゴメトリンは顕著な平滑筋収縮作用を示す。子宮収縮薬、酒石酸エルゴタミン、マレイン酸エルゴメトリン、マレイン酸メチルエルゴメトリン製造原料。
バッカクアルカロイドからの新規頭痛薬開発の際、偶然にリセルギン酸から半合成されたLSD(リゼルギン酸ジエチルアミド)は強力な幻覚作用と向神経作用をもち、その乱用による犯罪が多発したことから大きな社会問題を引き起こし、覚せい剤取締法が適用されている。
チョレイ

基原・用部
チョレイマイタケ(サルノコシカケ科)の菌核
性状
不整の塊状で外面は黒褐色。多数のくぼみと粗いしわがある。折りやすく、切面はコルク様で弾力があり、白色~淡褐色で内部には白色のまだら模様がある。質は軽く、臭いや味はない。
産地
中国、日本では稀に長野、新潟、山形、福島など
主要成分
ステロール:エルゴステロール
多糖:パチマン(β1→3結合のグルカン)
有機酸:α-ヒドロキシテトラコサン酸など
確認試験
アセトン抽出液の蒸発乾固物を無水酢酸に溶かして硫酸に加えると、赤紫色から暗緑色に変わる(ステロールに基づくリーベルマンーブルヒャード反応)
薬効・用途
利尿作用などが報告されている。利水を目的として五苓散(ごれいさん)、猪苓湯(ちょれいとう)などの漢方処方に配合される。
「猪苓(チョレイ)」という名称は、生薬の形態がイノシシ(猪)の糞(苓)に似ていることに由来する。
ブクリョウ

基原・用部
マツホド(サルノコシカケ科)の外層をほとんど除いた菌核
性状
全形はいびつな楕円形や球形の塊状であるが、通常は切断あるいは粉砕してある。外層は暗褐色~暗赤色で、きめが粗く、裂け目がある。内部は白色~微紅色様の白色で、質は堅いが砕きやすい。臭いや味はほとんどないが、噛むとやや粘質である。
産地
中国、朝鮮半島、日本では長野、鹿児島、千葉などで少量
主要成分
多糖:パチマン(β1→3結合のグルカン)
トリテルペン:エブリコ酸、パチマ酸
ステロール:エルゴステロール
確認試験
①アセトン抽出液の蒸発乾固物を無水酢酸に溶かして硫酸に加えると、淡赤色から暗緑色に変わる(ステロールに基づくリーベルマンーブルヒャード反応)。
②断面または粉末にヨウ素試液を滴下すると濃赤褐色を呈する(多糖)。
薬効・用途
利尿、抗炎症作用が報告されている。利水、健胃、鎮静を目的に、五苓散、桂枝茯苓丸など多くの漢方処方に配合される。
マツホドはアカマツやクロマツの伐採後、3~5年経過した切株付近の地下10~30 cmの根に付着している。見つけるには当たりをつけて鋼鉄の金棒を地中につき、その感触で存在を判断する。
裸子植物を基原とする生薬
マオウ

基原・用部
Ephedra sinica Staph, E. intermedica Schrenk et C. A. Meyer または E. equisetina Bunge(マオウ科)の地上茎
性状
径0.2~0.4 cmの円柱状を呈し、節間は3~5 cm、淡緑色~黄緑色で外面に平行する縦溝があり、節部にはりん片状のの葉がある。味は渋くてやや苦く、麻痺性である。
産地
主に中国
主要成分
アルカロイド:(ー)-エフェドリン、(+)-プソイドエフェドリン、(ー)-ノルエフェドリン(微量)、(ー)-N-メチルエフェドリン(微量)
確認試験
試料のメタノール抽出溶液について薄層クロマトグラフ法で試験を行う。2%ニンヒドリン・エタノール溶液を噴霧し、加熱するとき、Rf値0.35付近に赤紫色のスポットを認める。
薬効・用途
鎮咳去淡作用、気管支拡張作用など。塩酸エフェドリンの抽出原料。
マオウの地上茎は葛根湯などの漢方処方に発汗、解熱、鎮咳などを目的に配合される。一方、根は昔から地上茎とは逆に汗を止める目的で使用されている。このことから、根にはエフェドリンとは逆の薬理作用を持つ薬効成分が含有されていることが予想されて成分検索が行われ、血圧降下作用を持つアルカロイド、エフェドラミン類が見出されている。
離弁花植物を基原とする生薬
ダイオウ

基原・用部
Rheum palmatum Linné , Rheum tanguticum Maximowicz, Rheum officinale Baillon, Rheum coreanum Nakai またはそれらの種間雑種(Polygonaceae タデ科)の根茎。
コウボク

