レポートを書き終えて、最後に参考文献の欄を埋めようとしたところで手が止まる。著者名はフルネームか頭文字か、雑誌名は略すのか、年はどこに置くのか、Webページの URL だけで足りるのか。調べると書き方がサイトごとに少しずつ違い、どれが正しいのか分からなくなります。

違って見える理由の多くは、どのスタイル(規格)の、どの版に従っているかの差です。化学系で基準になる ACS(アメリカ化学会)スタイルは、2025年4月に参考文献の章が改訂され、誌名の略記や参照日の扱いが変わりました。この記事では、その現行ルールを確かめたうえで、学生実験のレポートや卒論でそのまま使える雛形と実例を、文献の種類ごとに並べます。

この記事の答え
参考文献は「読み手が同じ文献に確実にたどり着ける情報」を、決めた1つのスタイルで統一して書くものです。化学系では ACS スタイルが広く使われ、本文の該当箇所には出てきた順に番号を付けます。
この記事で学ぶこと
・雑誌論文・書籍・章・Webページ・特許の ACS 雛形と実例
・SDS・SciFinder などのデータベース、日本語文献の書き方
・本文中の引用番号の付け方と、略誌名・DOI の正しい書き方
・提出前に見直す「よくある間違い」チェックリスト

参考文献は何のために書くのか

書式の細かい約束はすべて、1つの目的から出てきます。読み手が、あなたの見た文献と同じものに、迷わずたどり着けるようにすることです。レポートの文献値や考察の根拠が正しいかどうかは、読み手(採点者・指導教員・審査員)が元の文献を開いて確かめられて初めて検証できます。

そう考えると、各要素の役割がはっきりします。

要素 何を特定するか 欠けると起きること
著者名・題名 誰の、どの仕事か 検索しても同名・類似の論文と区別できない
誌名・年・巻・号・ページ 紙面上の「住所」 図書館の製本誌や PDF のどこを開けばよいか分からない
DOI その論文に一意に付いた永続的な識別子 出版社のサイト移転などで URL が切れたとき追えない
版・改訂日 内容が変わる資料のうち、どの時点のものか 教科書の版や SDS の改訂で数値が違っていても気づけない

もう1つの原則は統一です。同じリストの中で書き方が揺れていると、読み手は「この差に意味があるのか」を毎回考えることになります。どのスタイルを選ぶかより、選んだスタイルを最後まで貫くことのほうが大事です。

最優先は指導教員・学科の指定

書き方を調べる前に、実験指導書・学科の卒論要項・研究室の慣例・投稿先の規定を確認してください。指定があれば、それがこの記事の内容より優先します。たとえば学生実験の指導書では「1) 著者名,書名,出版社,発行年,ページ」のような簡略形が指定されることがあり、その場合は指定どおりに書くのが正解です(実験レポートの書き方の雛形もこの形です)。

指定が「ACS 形式で」とだけある場合や、特に指定が無い場合に、以下の ACS の書き方を使ってください。なお ACS の学術誌そのものは、投稿時には引用が完全で論文題名が入っていれば形式を問わず、掲載時に編集部が整形する方針をとっています。「ACS 形式」の細部は学科や研究室ごとに解釈が分かれることがあるので、迷ったら指導教員の過去の卒論や研究室の論文を見本にするのが確実です。

ACSスタイルの基本ルール(2025年改訂版)

ACS スタイルの正典は、アメリカ化学会の ACS Guide to Scholarly Communication です(旧版は書籍の The ACS Style Guide 第3版、2006年)。参考文献の章は2025年4月に改訂され、学生にも書きやすい方向へ規則が緩められました。主な変更点を、改訂前との対比でまとめます(出版地の行だけは2025年改訂での変更ではなく、2006年の書籍版からの違いです)。

項目 2025年改訂前 現行(2025年改訂後)
誌名 CAS の略誌名で書く 略誌名でも正式名でもよい。ただしリスト全体でどちらかに統一
論文題名の大文字・小文字 揃える規則あり 原文のままでもよい(規則が緩和)
URL の参照日 (accessed 日付) を付ける 必須ではなくなった(必要と判断したら付ける)
DOI DOI: 10.xxxx/… と書く https://doi.org/10.xxxx/… のリンク形。ACS の告知では「リンク形が必須」、章の解説ではどちらも可とされているので、迷ったらリンク形で統一する
特許番号 6,738,537 のようにカンマ入り カンマを除いた形に統一
出版地(書籍) 「出版社: 都市名」と書く(2006年の書籍版の形) 原則省略。紛らわしいときだけ「都市名: 出版社」(2025年改訂での変更点ではない)

ネット上の解説や先輩のレポートで「出版社: 都市名」と書くものと書かないものが混ざっているのは、この版の差によるものです。どちらも当時の規則としては正しく、自分のリストの中でどちらかに揃っていれば問題になりません。

どの文献にも共通する書式の約束は次のとおりです。

要素 書き方 例
著者名 姓, 名の頭文字. の順。著者どうしはセミコロン(;)で区切る。原著の順番のまま全員書き、10人を超えたら10人目の後に「; et al.」 Corey, E. J.; Chaykovsky, M.
論文・章の題名 立体(斜体にしない)。化学式の下付き・上付き、イタリック、ギリシャ文字は原文どおり残す …Methylide ((CH3)2SOCH2)…
誌名・書名 斜体 J. Am. Chem. Soc.
年 雑誌論文では太字 1965
巻・号 巻は斜体、号は丸括弧(号が無い雑誌は省く) 87 (6)
ページ 始め–終わり。電子版でページの無い論文は論文番号(article number)を書く 1353–1364

文献の種類別の雛形と実例

以下の実例は、書誌情報を出版社・CAS・データベースの記録で確かめたものです。番号は参考文献リストでの番号の例です。

雑誌論文

雛形 著者1; 著者2; …; 最終著者. 論文題名. 誌名 年, 巻 (号), 始め–終わり. DOI
実例 1. Corey, E. J.; Chaykovsky, M. Dimethyloxosulfonium Methylide ((CH3)2SOCH2) and Dimethylsulfonium Methylide ((CH3)2SCH2). Formation and Application to Organic Synthesis. J. Am. Chem. Soc. 1965, 87 (6), 1353–1364. https://doi.org/10.1021/ja01084a034

誌名と年のあいだにはカンマを打たず、年の後ろにカンマを打ちます。印刷で読んだ論文でも DOI があれば付けておくと、読み手は1クリックで原文に着けます。掲載前の早期公開版(ASAP・Accepted Manuscript など)で巻・ページがまだ無い場合は、その位置に出版社の表記(例:ASAP Article)を書きます。

書籍(1冊まるごと)

雛形 著者1; 著者2. 書名, 版; 出版社, 年; pp 始め–終わり.(参照したページを示す場合)
実例 2. Clayden, J.; Greeves, N.; Warren, S. Organic Chemistry, 2nd ed.; Oxford University Press, 2012.

版(2nd ed. など)は書名の後にカンマで続け、斜体にしません。初版は通常書きません。現行版では出版地は原則省略し、無名の出版社や同名の出版社と紛らわしい場合だけ「出版地: 出版社」の形で入れます。教科書は版によってページも内容も違うので、版の書き忘れは「どの本を見たか」が特定できなくなる、実害のある抜けです。

編著書の章(章ごとに著者が違う本)

章ごとに別の著者が書き、全体を編者がまとめた本では、章の著者と章題を主役にし、本の編者を「Eds.」で添えます。章の著者が書いた内容を引用しているので、編者を著者の位置に書くと「誰の主張か」がずれるためです。

雛形 章の著者1; 章の著者2. 章題. 書名; 編者1, 編者2, Eds.; シリーズ名, Vol. 番号; 出版社, 年; pp 始め–終わり. DOI
実例 3. Molnar, B.; Bourne, C. A.; Freeman, T. K. Learn Smart: Success Strategies for First-Year Students. Active Learning in General Chemistry: Specific Interventions; Blaser, M., Clark, T., Lamont, L., Stewart, J. J., Eds.; ACS Symposium Series, Vol. 1340; American Chemical Society, 2019; pp 149–157. https://doi.org/10.1021/bk-2019-1340.ch010

著者どうしはセミコロンですが、編者どうしはカンマで区切ります(ACS の慣例)。旧版では書名の前に「In」を付けていたため、「In 書名」と書く例も今でも見かけます。どちらかに揃えてください。

Webページ

雛形 (著者がいれば著者.)ページの題名. サイト名. 発行組織, 公開・更新日. URL (accessed 参照日)
実例 4. Acetone. PubChem. National Center for Biotechnology Information. https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/180 (accessed 2026-10-25)

2025年版では URL の参照日は必須でなくなりましたが、内容が書き換わりうるページ(データベースの化合物ページ、企業や大学のページ)には付けておくほうが安全です。後で数値が変わっていても「その日に見た値だった」と説明できるからです。付ける場合は年-月-日(2026-10-25)の形で末尾に置きます。サイト名に組織名が含まれていれば、組織名を重ねて書く必要はありません。

特許

雛形 発明者1; 発明者2. 発明の名称. 国コード+番号+種別コード, 発行年または発行日.
実例 5. Burkart, M. D.; Chan, W. C.; La Clair, J. J.; Trieger, K. A.; Jamieson, C. Anticancer and antifungal splice modulators. US12172988B2, 2024.

番号の先頭の2文字は発行国(US=米国、JP=日本、EP=欧州特許庁(EPO)の出願・特許、WO=PCT 国際出願)、末尾は文献の種別(米国なら A1=公開出願、B2=事前公開のある登録特許など)を表します。同じ発明でも「出願公開」と「登録特許」は別の文献なので、種別コードまで書くことでどちらを見たかが特定できます。特許は番号で一意に引けるため、URL や DOI は要りません。

SDSとデータベース(SciFinder・Reaxys)の扱い

SDS(安全データシート)

学生実験で引用することの多い SDS は、ACS では次の要素で書きます。

雛形 物質名 (CAS RN: 番号). 製品番号, ver. 版番号; メーカー: 所在地, 改訂日. URL (accessed 参照日)(推奨)
実例 6. Cyclohexane (CAS RN: 110-82-7). 227048, ver. 6.9; Sigma-Aldrich: St. Louis, MO, May 24, 2023. https://www.sigmaaldrich.com/US/en/sds/sial/227048
(米ポートランド大学図書館の ACS 案内に載っている例)

SDS で大切なのは改訂日(版)です。SDS は改訂で物性値や GHS 区分ごと差し替わる文書で、同じ試薬でもメーカーが違えば別の文献になります。参照日も残しておけば、どの版を見て書いたかを後から確かめられます。日本語の SDS を日本語のレポートで引く場合の具体例は、SDSのまとめ方の「参考文献の書き方」の節にあります。SDS そのものの読み方はSDS(安全データシート)とはで解説しています。

SciFinder・Reaxys・PubChem などのデータベース

データベースから物性値やスペクトルを取ったときは、まずその値の出典(元の論文やハンドブック)を見て、そちらを引用できないかを考えてください。SciFinder(CAS SciFinder)や Reaxys は、原著論文から集めた値を整理した二次情報です。値を測ったのは元論文の著者であり、データベースの画面はログインしないと見られないので、読み手が確かめる手段としても元論文のほうが確実です。

データベースの記録そのものを引く必要がある場合は、次の形にします(ACS の案内にある SciFinder の例。Reaxys も同じ形に揃えれば十分です)。

雛形 物質名 (CAS RN: 番号). データベース名. 提供元. URL(必要ならデータの ID や提供者を括弧で注記)
実例 7. Cyclohexane (CAS RN: 110-82-7). SciFinder. CAS. https://scifinder.cas.org
大学のログイン付き URL を貼らない
・アドレスバーの URL には、大学の認証(プロキシ)経由のアドレスやアカウント情報が入っていることがある
・学外の読み手には開けないので、データベースのトップページなど誰でも使えるアドレスに直す
・論文は DOI があれば DOI を書けば済む

日本語文献の書き方

日本語の論文や書籍を引くときの書き方は、大きく2通りあります。

1つ目は、ACS の要素の順番と区切り記号のまま、日本語で書く方法です。英語文献と日本語文献が1つのリストに並ぶ化学系のレポート・卒論では、区切り記号が揃うので見た目の統一がとれます。日本人著者は姓・名をそのまま書きます。

種類 実例
雑誌論文 8. 大石 徹. 有機合成化学協会誌と私. 有機合成化学協会誌 2024, 82 (10), 953. https://doi.org/10.5059/yukigoseikyokaishi.82.953
書籍(編者のみ) 9. 日本化学会 編. 化学便覧 基礎編, 改訂6版; 丸善出版, 2021.

2つ目は、日本の規格に沿って書く方法です。日本語文献の書き方の基準としては、科学技術振興機構(JST)の「SIST 02 参照文献の書き方」(2007年改訂版。SIST の事業は2011年度末=2012年3月に終了し、以後は改訂されていない)が、今も多くの大学図書館で案内されています。「著者名. 論文名. 誌名. 出版年, 巻, 号, はじめのページ-おわりのページ.」のように要素を並べます。学科の要項がこの形を指定しているなら、それに従います。

英語で書く論文や修論で日本語文献を引く場合は、英語の題名・誌名(J-STAGE などに英文表記があればそれ)で書き、ページの後(DOI の前)に「(in Japanese)」と注記して、原文が日本語であることを読み手に知らせます。

1つのリストで区切り記号を混ぜない
・英語文献は「;」「,」、日本語文献だけ「,」「、」と全角で書くと、リスト全体が不揃いに見える
・日本語文献でも区切り記号は英語文献と同じ半角に揃える

本文中での引用番号の付け方

化学系では、本文の該当箇所に番号を付け、参考文献リストをその番号順に並べる番号方式が基本です。番号は本文に初めて出てきた順に1から振り、同じ文献をもう一度引くときは新しい番号を作らず、最初の番号を使い回します。リストが著者名順ではなく出現順なのは、読み手が本文の番号からリストの該当行を一直線に探せるようにするためです。

書き方 英文での例(ACS) 日本語文での例
上付き番号 …was reported previously.1 …と報告されている。1/…と報告されている1)。
括弧付き番号 …has been reported (1). …と報告されている(1)。
2件 …salt particles,14,15 番号をカンマでつなぐ
3件以上の連番 …for drug design,7–12 連続する番号はダッシュでまとめる(7–12)

英文の ACS では、上付き番号は句読点の後ろに、括弧付き番号は句読点の前に置きます。日本語の文書では、上付き番号を句点の前に置き「1)」と閉じ括弧を付ける書き方も見られます。どれを使うかは指定に従い、1つの文書の中では1つに統一してください。文中で文献そのものを指すときは「文献2によれば」「see ref 2」のように書きます。

番号を振る位置は「その情報が出てくる文や節の終わり」です。段落の最後にまとめて番号を並べると、どの文がどの文献に基づくのかが分からなくなります。文献値(融点・沸点・Rf 値の文献値など)を表に載せたときは、表の数値の横か表の注に番号を付けます。

略誌名とDOIの書き方

略誌名は CASSI(CAS Source Index)で調べる

化学系の略誌名には、CAS(Chemical Abstracts Service)が定めた標準の略記があり、CASSI(CAS Source Index)という検索ツール(cassi.cas.org)で調べられます。略誌名を自分で作らずに CASSI で引くのは、同じ雑誌に人によって違う略記が付くと、読み手が別の雑誌と取り違えるおそれがあるからです。

正式名 略誌名
Journal of the American Chemical Society J. Am. Chem. Soc.
The Journal of Organic Chemistry J. Org. Chem.
Organic Letters Org. Lett.
Angewandte Chemie International Edition Angew. Chem. Int. Ed.
Nature/Science/Synthesis 1語の誌名は略さない(Nature のまま)

略誌名では、略した語の後にピリオドを打ちます。データベースや文献管理ツールから書誌を取り込むと「Angew Chem Int Ed」のようにピリオドの無い略記が入ってくることがあるので、取り込んだ後に目で確かめてください。2025年版では正式名で書いてもよくなりましたが、略誌名と正式名をリストの中で混ぜないことが条件です。

DOI は https://doi.org/ の形で、末尾にピリオドを付けない

DOI(Digital Object Identifier)は論文ごとに付いた永続的な識別子で、「10.」で始まります。https://doi.org/ の後ろに続ければ、出版社のサイトが移転しても論文のページに転送されます。書くときの注意は3つです。

・手で打たずに、論文のページからコピーする。古い論文の DOI には記号が多く含まれ、1文字違うだけで別の論文か、存在しないアドレスになる。
・DOI の末尾にピリオドを付けない。ピリオドまでリンクの一部として読まれ、開けなくなることがある。DOI は参考文献の最後の要素なので、前の要素(ページなど)の後でピリオドを打って終える。
・https://doi.org/10.xxxx 形と DOI: 10.xxxx 形は、どちらかに統一する。

提出前のチェックリスト(よくある間違い)

よくある間違い なぜ問題か 直し方
本文の番号とリストの番号がずれている 文章の追加・削除のたびに番号がずれ、別の文献を指してしまう 最後に本文の番号を頭から1つずつリストと照合する。文献管理ツールで自動採番する
同じ文献に2つの番号が付いている 文献数が水増しされ、読み手が別の文献だと誤解する 2回目以降は最初の番号を使い回す
本文で引用していない文献がリストにある どこの根拠なのか分からない 本文中で番号を付けた文献だけを載せる
略誌名と正式名が混在/略誌名のピリオド抜け 統一の原則に反し、雑誌の取り違えのもとになる どちらかに決め、略誌名は CASSI で確認する
巻と号の取り違え、始めのページしか無い 論文の位置が特定できない 論文の PDF の1ページ目か出版社のページで確かめる
題名の下付き・イタリックが消えている(CH3 など) 化合物名や化学式が別物に読める 原文と見比べて、下付き・上付き・斜体を戻す
教科書の版が書いていない 版ごとにページも内容も違う 奥付で版と発行年を確かめて書く
読んでいない原著を、別の本の引用から書き写した(孫引き) 書き写し元の誤記をそのまま引き継ぎ、原著に書いていない内容を原著のせいにしてしまう 原著を自分で開いて確かめる。開けないなら、実際に読んだ本のほうを引用する
URL が大学のプロキシ経由・ログイン付き 学外の読み手には開けない DOI か、誰でも開けるアドレスに直す
他人の図をそのまま貼り、出典だけ書いた 引用の明示と、図の転載の許諾は別の問題 自分で描き直して「文献○を基に作成」と書くか、公開する文書なら転載の許諾を取る。扱いは指導教員に確認する

図や表の作り方そのものはレポートに載せる表・図(グラフ)の描き方にまとめています。

文献管理ツールとの付き合い方

卒論のように文献が数十件になると、手作業で番号と書式を揃え続けるのは現実的ではありません。EndNote・Mendeley・Zotero などの文献管理ツールを使えば、本文への番号挿入とリストの自動生成、出現順の自動採番を任せられ、「番号のずれ」という起こりやすい事故を構造的に防げます。ツールごとの特徴は文献管理ツールで研究効率をアップ!で比べています。

ただし、ツールの出力をそのまま提出してよいわけではありません。取り込んだ書誌情報が間違っていれば、間違いが正しい書式で整然と並ぶだけです。

ツールを使うときに確かめること
・出力スタイルに「American Chemical Society(ACS)」を選び、研究室指定のスタイルがあればそれを使う
・題名の下付き・上付き・斜体が、取り込みで消えていないか
・略誌名のピリオド、著者名の綴り、日本語文献の書誌が欠けていないか
・SDS やデータベースなど論文以外の文献は、手で書式を直す

論文以外の資料(SDS・Webページ・データベース)は、ツールが種類を正しく判定できないことが多く、手で直したほうが早い場合もあります。最終的な確認は人の目で、提出前にリスト全体を1回通して読んでください。

まとめ

・参考文献の目的は、読み手が同じ文献に確実にたどり着けるようにすること
・指導教員・学科の指定が最優先。指定が無ければ ACS スタイルで、1つのリストを最後まで統一する
・ACS の2025年改訂で、誌名は略しても略さなくてもよく、URL の参照日は必須でなくなった
・本文には出てきた順に番号を振り、同じ文献は同じ番号を使い回す
・略誌名は CASSI で調べ、DOI はコピーして末尾にピリオドを付けない

よくある質問

参考文献と引用文献はどう違いますか?

厳密には、本文中で番号を付けて直接引いた文献が「引用文献」、執筆の参考にした文献全体が「参考文献」と区別されることがあります。ACS スタイルの番号方式では、本文で番号を付けた文献を「References(参考文献)」の見出しの下に番号順で載せます。見出しの名前と、引用していない文献を載せてよいかどうかは、学科や指導教員の指定に従ってください。

Wikipediaを参考文献に書いてもよいですか?

ACS の案内には Wikipedia の項目を引用する書式もありますが、学生実験のレポートや卒論では避けたほうが無難です。Wikipedia は誰でも書き換えられ、記述の正しさを確かめるには結局その項目の出典をたどる必要があるためです。Wikipedia で見つけた情報は、項目末尾の出典(論文・書籍)を自分で開いて確かめ、そちらを引用してください。

Webページの参照日は書かなければいけませんか?

ACS スタイルでは2025年の改訂で、URL を持つ資料の参照日は必須でなくなりました。ただし、化合物データベースのページや SDS のように内容が更新されうる資料は、参照日を残しておくと「その日に見た値」であることを示せます。学科や指導教員が参照日を求めている場合は必ず書きます。書くときは (accessed 2026-10-25) のように年-月-日の形で末尾に置きます。

誌名は略誌名と正式名のどちらで書けばよいですか?

ACS スタイルの2025年改訂以降はどちらでもよく、条件はリスト全体で統一することです。研究室や学科で慣例が決まっていることがあるので、それに合わせるのが確実です。略誌名で書く場合は CASSI(CAS Source Index)で正式な略記を調べ、Nature のような1語の誌名は略さずに書きます。

翻訳された教科書を読んだ場合は、原著と訳本のどちらを書きますか?

実際に読んだ訳本を書きます。訳本と原著では版の対応やページ番号が一致しないことが多く、原著を書くと読み手が該当箇所を見つけられないためです。訳本を引くときは、原著者名・書名・版に加えて訳者名、訳本の出版社と発行年を書き、学科の指定があればその形に合わせます。