アルカンの命名法は、有機化学におけるIUPAC(国際純正・応用化学連合)による命名規則に従います。以下に、アルカンの命名法の基本的なルールを説明します。

アルカンの名前

3-ethyl-5-(1-methylpropyl)-4,4-dimethylnonane

上に示した化合物の名前は、”3-ethyl-4,4-dimethyl-5-(1-methylpropyl)nonane“です。

数字は、「Locant」と呼ばれ、置換基の位置を表します。(適当な日本語訳はわかりませんでした)

青で示した部分は、置換基を表します。

赤で示した部分は、接尾辞で基本骨格を表します。

以下で、この名前を決めるための基本的な手順を確認していきましょう。

命名の手順

  1. 官能基の優先順位を決める
  2. 最も長い直鎖あるいは最も大きな環を見つける(これが主鎖となる)
  3. 置換基を特定する
  4. 主鎖に番号を振る
  5. 同じ置換基が複数あれば、接頭辞をつける
  6. 枝分かれした部分は主鎖とは別に番号をつける
  7. 置換基をアルファベット順に並べる

それぞれの手順について説明していきます。

① 官能基の優先順位

最初にやるのは「この分子をどの種類の化合物として名づけるか」を決めることです。カルボン酸・エステル・アルデヒド・ケトン・アルコール…と優先順位が決まっていて、いちばん順位の高い官能基が語尾(接尾辞)になります。

アルカンには官能基がないので、この段階は素通りできます。アルカンの命名が命名法の出発点として扱われるのは、この迷いが生じないからです。優先順位の高い官能基が付いた途端、主鎖の選び方も番号の振り方もその官能基に引っぱられて変わります。

② 主鎖の決定

いちばん長くつながった炭素鎖を探します。ここで注意したいのは、構造式の書かれ方に惑わされないことです。横一列に書いてある部分が主鎖とは限らず、折れ曲がった先を含めて数えたほうが長くなることがよくあります。

状況 どうするか
最長の鎖が1通りしかない それが主鎖
同じ長さの鎖が複数ある 置換基の数が多いほうを主鎖に選ぶ
それでも決まらない 置換基の位置番号がより小さくなるほうを選ぶ

例の化合物では炭素9個の鎖が最長なので、基本骨格はノナン(nonane)になります。

③ 置換基の特定

主鎖から外れた部分が置換基です。炭素数に応じてメチル・エチル・プロピル…と呼びます。

枝そのものがさらに枝分かれしている場合は、括弧でくくってひとまとまりの置換基として扱います。例の (1-methylpropyl) がそれで、「プロピル基の1番目の炭素にメチル基が付いたもの」という意味です。括弧の中の番号は、枝の付け根を1番として数えます——主鎖の番号とは別物なので混同しないでください。

④ 主鎖の番号付け

主鎖のどちらの端から数えるかを決めます。基準は「置換基の位置番号をできるだけ小さくする」こと。

比べ方 中身
① 最初に置換基が現れる番号 小さいほうの端から数える
② ①が同じなら、番号の組を順に比べる {3,4,4,5} と {5,6,6,7} なら前者。最初に違いが出たところで小さいほうが勝つ
③ それでも同じなら アルファベット順で先にくる置換基に小さい番号を与える

例の化合物では、この向きから数えると置換基の位置が3・4・4・5になります。逆から数えると5・6・6・7となって大きくなるので、こちらは採りません。

⑤ 置換基の接頭辞

同じ置換基が複数あるときは、まとめて倍数接頭辞を付けます(2個=di、3個=tri、4個=tetra)。このとき位置番号は個数ぶんすべて書きます。

書き方 例
同じ炭素に2個 4,4-dimethyl(4を2回書く)
別々の炭素に2個 2,3-dimethyl
括弧つきの複雑な置換基が複数 di ではなく bis・tris を使う
倍数接頭辞はアルファベット順の判定に数えません。「dimethyl」は d ではなく m として並べます。ここを取り違えると順番が丸ごと変わってしまうので、試験でもよく狙われるところです。ただしbis・tris や、置換基名の一部としての「複雑な置換基」は数えるので、扱いが違います。

⑥ 分枝鎖の番号付け

置換基がさらに枝分かれしているとき、その置換基の中だけで独立に番号を振ります。

どこを1番にするか 理由
主鎖とつながっている炭素 そこが置換基の「根元」だから。主鎖の番号とは無関係に、必ず1から振り直す

例の (1-methylpropyl) なら、主鎖に結合している炭素が1番で、そこにメチル基が付いています。だから「1-メチルプロピル」。主鎖側の位置番号(5)と、括弧内の番号(1)は別の体系です。

⑦ 置換基の順番

最後に、置換基をアルファベット順に並べて名前を組み立てます。

並べるときの決まり 中身
倍数接頭辞は数えない dimethyl は m で判定する
括弧つきの複雑な置換基は、その名前全体で判定する (1-methylpropyl) は methylpropyl として扱う
短いほうが先 methyl と methylpropyl なら methyl が先

例の化合物では ethyl・methyl・methylpropyl の順になるので、名前は3-ethyl-4,4-dimethyl-5-(1-methylpropyl)nonaneと決まります。

番号は「位置を小さく」、名前は「アルファベット順」——この2つは別の基準です。番号を振る段階(④)では置換基の種類を気にせず位置の小ささだけで決め、並べる段階(⑦)では位置を気にせず名前の順だけで決めます。混ぜて考えると必ず間違えます。

1. 基本構造の命名

アルカンは炭素と水素のみからなる飽和炭化水素であり、一般式は CnH2n+2 です。最も基本的なアルカンの名前は、炭素数に基づいて以下のように決まります:

  • メタン(Methane):CH4
  • エタン(Ethane):C2H6
  • プロパン(Propane):C3H8
  • ブタン(Butane):C4H10
  • ペンタン(Pentane):C5H12
  • ヘキサン(Hexane):C6H14
  • ヘプタン(Heptane):C7H16
  • オクタン(Octane):C8H18
  • ノナン(Nonane):C9H20
  • デカン(Decane):C10H22

2. 分枝アルカンの命名

分枝アルカン(支鎖アルカン)は、以下のルールに従って命名されます。

a. 主鎖の選定

  1. 最も長い炭素鎖を見つける。この炭素鎖が主鎖(親鎖)となる。
  2. 主鎖の炭素数に基づいて基本名を決める(例えば、炭素数が5なら「ペンタン」)。

b. 主鎖の番号付け

  1. 主鎖の両端から数え始め、最も早く分枝が出現する側を1番とする。
  2. 分枝が同じ位置にある場合は、次に出現する分枝の位置が小さい方を選ぶ。

c. 分枝の命名

  1. 分枝の名前は、その分枝が何個の炭素を持つかに基づきます。メチル(CH3-)、エチル(C2H5-)、プロピル(C3H7-)など。
  2. 分枝が複数存在する場合、アルファベット順に並べる。ただし、位置番号は無視しない。
  3. 同じ種類の分枝が複数ある場合は、接頭辞(di-, tri-, tetra-など)を使用する。

d. 命名の組み立て

  1. 分枝の位置番号と名前を組み合わせる。
  2. 分枝の名前をアルファベット順に並べ、主鎖の名前と組み合わせる。

具体例

例1:2-メチルブタン

  1. 主鎖:4つの炭素原子があるため、「ブタン」。
  2. 分枝:2番目の炭素にメチル基(CH3-)が付いている。
  3. 名前:2-メチルブタン(2-methylbutane)。

例2:3-エチル-2-メチルヘキサン

  1. 主鎖:6つの炭素原子があるため、「ヘキサン」。
  2. 分枝:
    • 2番目の炭素にメチル基(CH3-)が付いている。
    • 3番目の炭素にエチル基(C2H5-)が付いている。
  3. 名前:3-エチル-2-メチルヘキサン(3-ethyl-2-methylhexane)。

まとめ

アルカンの命名法は、炭素鎖の長さと分枝の位置および種類を正確に示すことを目的としています。IUPACのルールに従って命名することで、化合物の構造を正確かつ一意に表現できます。