※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれています。

サマリウムの情報をまとめました。

希土類は「少ない」のではなく「分けにくい」

レアアース(希土類)という名前から、地球上にほとんど存在しない元素だと思われがちです。しかし実際には、ありふれた金属より多く存在するものもあります。困るのは量ではなく、仲間同士を分離するのが極端に難しいことです。

理由は電子の入り方にあります。希土類では、増えていく電子がいちばん外側ではなく内側の4f軌道に入ります。化学結合を担うのは外側の電子なので、原子番号が1つ違っても、化学的なふるまいがほとんど変わらないのです。

ふつうの元素 希土類
原子番号が変わると外側の電子数が変わる 増えた電子は内側の4f軌道に入る
隣の元素と性質がはっきり違う 隣の元素とほとんど見分けがつかない
沈殿や溶解度の差で簡単に分けられる イオン半径のわずかな差を何百回も積み上げて分ける
どれが何かすぐ分かる ほとんど全部が +3 のイオンになる
希土類の工業的な価値は、採掘よりも分離技術にあります。鉱石から取り出すところまでは難しくなく、混ざっている希土類を1種類ずつに分ける工程がコストと技術のほとんどを占めます。「レアアースの供給が偏っている」と言われるのは、この分離を大規模にやれる設備が限られているからです。

サマリウムコバルト磁石——最強ではないが、熱に強い

永久磁石の磁力だけを比べれば、ネオジム磁石のほうが上です。それでもサマリウムコバルト磁石が使われ続けているのは、磁力以外の2点でネオジム磁石に勝っているからです。

ネオジム磁石 サマリウムコバルト磁石
最大の磁力 強い やや劣る
耐熱性 温度が上がると磁力が落ちやすい 高温でも磁力を保つ
耐食性 鉄を多く含むため錆びる→めっきが必須 錆びにくい→表面処理なしでも使える
向いている場所 常温で使う機器(スピーカー・ハードディスク・家電) 熱くなる場所・過酷な環境(航空宇宙・モーター・計測器)
磁石選びは「いちばん強いものを選ぶ」ではありません。使用温度・腐食環境・必要な磁力・コストの組み合わせで決まります。ネオジム磁石に耐熱性をもたせるにはジスプロシウムを足す必要がありますが、サマリウムコバルト磁石は最初から熱に強い——それが選ばれる理由です。

有機化学でのサマリウム——ヨウ化サマリウム(II)

希土類の多くは +3 のイオンにしかなりません。サマリウムはその例外で、+2 の状態もとれます。そしてこの +2 が、有機合成でたいへん重宝されています。

ヨウ化サマリウム(II)(SmI2)は、電子を1個だけ渡す還元剤(1電子還元剤)です。Sm2+が電子を1個手放して Sm3+になりたがる性質を使います。カガン試薬とも呼ばれます。

できること 何が起こるか
ピナコールカップリング ケトンやアルデヒドに電子を1個渡してラジカルを作り、2分子をつないで1,2-ジオールにする
バルビエ型反応 ハロゲン化物から炭素ラジカルを発生させ、カルボニル基に付加させる——グリニャール試薬をあらかじめ作らなくてよい
レフォルマトスキー型反応 α-ハロエステルを活性化し、カルボニル基に付加させる
ラジカル環化 発生させたラジカルを分子内で反応させ、環を作る
「1電子ずつ渡す」のがこの試薬の個性です。水素化ホウ素ナトリウムのようなヒドリド還元剤は2電子をまとめて渡しますが、SmI2は1個だけ渡してラジカルを作ります。狙いが「還元する」ことではなく「ラジカルを作って炭素−炭素結合をつなぐ」ことにある点が、ほかの還元剤と決定的に違います。

原子炉での役割——中性子を吸う

サマリウムの同位体のひとつは、中性子を吸い込む性質が非常に強いことで知られています。原子炉の中では核分裂で生まれた中性子が連鎖反応を続けますが、この同位体が蓄積すると中性子を奪ってしまい、反応が勝手に鈍っていきます。

原子炉の運転ではこれを織り込んで制御しなければならず、逆に意図的に中性子を吸わせる材料としても使われます。

基本情報

和名 サマリウム
英名 Samarium
語源 サマルスキー石の発見者サマルスキー (Samarsky)
元素記号 Sm
原子番号 62
原子量 150.4
常温(25℃)での状態 固体(金属)
色 灰白色
密度 7.520 g/cm3(20℃)
融点 1072℃
沸点 1791℃
発見者 ボアボードラン(フランス)[1879年]
含有鉱物 サマルスキー石

 

よくある質問

ネオジム磁石より弱いサマリウムコバルト磁石が、なぜ使われるのですか?

耐熱性と耐食性でネオジム磁石に勝っているからです。ネオジム磁石は温度が上がると磁力が落ち、鉄を多く含むため錆びやすく、めっきや耐熱元素の添加が必要になります。サマリウムコバルト磁石は最初から高温でも磁力を保ち、錆びにくいので、航空宇宙や高温になるモーター、計測器など過酷な環境で選ばれます。磁石選びは最大磁力だけで決まるものではありません。

ヨウ化サマリウム(II)は何に使う試薬ですか?

電子を1個だけ渡してラジカルを発生させる還元剤です(カガン試薬)。水素化ホウ素ナトリウムのようなヒドリド還元剤が2電子をまとめて渡すのに対し、SmI2は1電子ずつ渡します。狙いは単に還元することではなく、発生させたラジカルで炭素−炭素結合をつなぐことです。ピナコールカップリング、バルビエ型反応、レフォルマトスキー型反応、ラジカル環化などに使われます。

サマリウムが +2 をとれるのはなぜ重要なのですか?

希土類の多くは +3 のイオンにしかならず、酸化還元を使った反応に向きません。サマリウムは +2 もとれるため、Sm2+が電子を1個手放してSm3+になる性質を還元剤として利用できます。この例外的な性質が、有機合成でサマリウムが使われる理由です。

レアアースは本当に希少なのですか?

存在量はそれほど少なくありません。ありふれた金属より多く存在するものもあります。問題は量ではなく、仲間同士を分離するのが極端に難しいことです。希土類では増えた電子が外側ではなく内側の4f軌道に入るため、原子番号が1つ違っても化学的な性質がほとんど変わりません。供給が偏って見えるのは、この分離を大規模にやれる設備が限られているからです。

【元素マニア必見】元素本おすすめランキング

第1位

関連記事

周期表全体を有機化学の視点で整理したいときは、元素図鑑トップが出発点になります。

いずれも希土類です。「少ないのではなく分けにくい」事情を共有しています。

 

第2位

第3位