院試に落ちたら最初の1週間でやること【二次募集・研究生・就活の比較】
不合格の通知を見た直後は、何も手につかない。それで普通である。ただ、院試に落ちたあとの進路は、落ちた日から数えて最初の1週間に何をしたかでほぼ決まってしまう。理由は単純で、次に取れる道の多くに締切があり、しかもその締切は合格発表からそれほど離れていないことがあるからだ。二次募集の出願期間、研究生の受け入れ相談、秋以降の就職活動。どれも「気持ちが落ち着いてから調べよう」と思っているうちに、選択肢から消えていく。
この記事では、落ちた直後の1週間でやることをチェックリストにし、取れる6つの道を比較表に並べる。それぞれについて「募集要項のどの欄を見れば締切と要件が分かるか」まで書く。指導教員と志望先の先生に送るメールの文例、翌年もう一度受ける場合のスケジュール表、そして「落ちる人の特徴」を次の行動に変換した表も置いた。
本記事の内容は個人の見解と経験に基づくものであり、大学・研究科の公式情報ではない。入試の日程・募集人員・出願資格・研究生の制度は大学や研究科ごとに違い、年度によっても変わる。最終的な判断は、必ず志望先の最新の募集要項と窓口で確認してほしい。
落ちた直後の1週間でやること
最初の1週間は、選択肢を減らさないための1週間である。進路を決める必要はまだない。決めるのは2週目以降でよく、1週目は「どの道がまだ開いているか」を確定させることだけに使う。
| いつ | やること | なぜ今か |
|---|---|---|
| 当日〜翌日 | 指導教員(卒研の先生)に結果を報告する | 二次募集や研究生の情報、他大学の先生とのつながりは、指導教員が一番持っている。報告が遅れるほど相談の時間が減る |
| 当日〜翌日 | 受験した研究科のWebサイトで、二次募集・追加募集の告知や予告があるか確認する。まだ出ていなければ、前年度に実施していたか・いつ公表されたかを調べ、窓口に公表予定を問い合わせる | 実施の有無が決まるのは合格発表より後のこともある。告知が無いことを「実施しない」と早合点しない |
| 2〜3日目 | 研究室訪問で時間をもらった志望先の先生に報告する | 黙っていると「連絡のない学生」として記憶される。次年度に受け直すなら、ここが関係をつなぐ唯一の機会になる |
| 2〜3日目 | 試験の答案を記憶にあるうちに再現し、解けなかった問題を書き出す。受験票は捨てずに保管する | 敗因分析の材料は時間とともに消える。1週間後には「何となく難しかった」しか残らない。成績開示の申請に受験票が要る大学がある |
| 3〜5日目 | 他大学の二次募集・追加募集の告知を、分野の近い研究科から順に確認する | 他大学の告知は自分から探さない限り目に入らない |
| 3〜5日目 | 卒業要件(卒研・残りの単位)と、就職活動の状況を確認する | 既卒で受け直すにも、就職に切り替えるにも、まず卒業できることが前提になる |
| 〜7日目 | 家族と費用の話をする | 研究生・既卒での1年は学費や生活費がかかる。お金の見通しが決まらないと選べない道がある |
表の上から順にやればよい。ポイントは、最初の2つは翌日までに終えることだ。指導教員への報告を「気まずいから」と後回しにする人は多いが、指導教員は院試に落ちる学生を何人も見てきている。落ちたこと自体で評価が変わることはまずない。変わるのは、報告が遅れて相談の機会を逃したときである。
入試成績の開示制度を設けている大学もある。開示の有無・申請期間・方法は募集要項の末尾や大学の入試情報ページに書かれていることが多いので、「成績開示」「入試情報の開示」という語で探す。開示される範囲(科目別の得点か、総合点だけか、面接の評価を含むか)も大学ごとに違い、申請期間が入試の全日程の終了後に設定されていて、結果が届くのが二次募集の判断に間に合わないこともある。間に合わなくても、翌年に受け直すなら敗因の切り分けに使える。
院試に落ちたあとに取れる6つの道
取れる道は大きく6つある。どれが正解かは人によって違うので、まず全部を同じ物差しで並べる。物差しは「いつまでに決める必要があるか」「何が要件か」「1年後にどうなっているか」の3つである。
| 道 | 向いている人 | 1年後の姿 | 主なリスク |
|---|---|---|---|
| 二次募集・冬季入試 | 実力は足りていて、あと一歩で落ちた人 | 翌春に予定どおり進学 | 実施されない年・専攻がある。募集人員が少ないことが多い |
| 他大学の追加募集 | 分野にこだわりがあり、大学にはこだわらない人 | 翌春に別の大学院へ進学 | 研究室訪問なしで出願することになりやすい |
| 研究生 | 志望先の研究室で翌年に受け直したい人 | 研究生として在籍し、翌年に受験 | 費用がかかる。研究生であることは合格を保証しない |
| 既卒で翌年受験 | 一人で勉強を続けられる人 | 学部卒業後、翌年に受験 | 所属が無くなり、情報と生活のリズムが途切れやすい |
| 就職に切り替える | 院進の理由がはっきりしていなかった人 | 学部卒で就職 | 時期によっては選べる企業が限られる |
| 内部の別専攻・別コース | 大学を変えたくない人、専攻の境界に近い分野の人 | 自大学の別専攻に進学 | 研究テーマが希望から離れることがある |
ここから、それぞれの道について募集要項(または規程)のどこを見れば締切と要件が分かるかを具体的に書く。数字はここには書かない。大学ごとに違い、年度で変わるからだ。代わりに「どの欄を読むか」を固定しておけば、どの大学の要項でも同じ手順で確認できる。
二次募集・冬季入試
夏の入試で募集人員に達しなかった場合などに、秋以降に出願、冬に試験という日程で第2次募集(研究科によって「冬季入試」「追加募集」など呼び名が違う)を行う研究科がある。前年度に実施していても、当年度に実施するとは限らない。
| 確認すること | 募集要項・Webサイトで見る欄 |
|---|---|
| そもそも実施するか | 研究科の「入試情報」ページの年間日程。夏の要項に「第2次募集を実施する場合は〇月頃に公表」と予告が書かれていることもある |
| 自分の専攻・区分で募集があるか | 「募集人員」と「選抜区分」の欄。専攻ごとの表で自分の専攻が載っているか、「若干名」とだけ書かれているかを見る。専攻が載っていても、募集が社会人や留学生の特別選抜に限られ、一般選抜が無い場合がある |
| 締切 | 「出願期間」の欄。郵送の場合は「必着」か「消印有効」かまで読む |
| 夏に受けた人が出願できるか | 「出願資格」の欄と注記。受験歴による制限や注記が無いかを、ここで確かめる。分からなければ入試担当の窓口に問い合わせる |
| 試験科目が夏と同じか | 「選抜方法」「試験科目」の欄。筆記を省いて書類と口述だけにする研究科もある。英語の外部スコアの提出が要る場合、締切までに新しく受験して結果を取り寄せる時間は無いことが多いので、手元に有効なスコアがあるかを先に確かめる |
| 事前に教員への連絡が必要か | 「出願前の事前相談」「指導予定教員」の欄。受け入れの内諾を出願の前提にしている研究科がある |
二次募集で一番大事なのは最後の行である。夏の入試で研究室ごとの受け入れ枠が埋まっていれば、二次募集に専攻としての募集があっても、志望の研究室には空きが無いことがある。出願の前に、志望先の先生に受け入れの余地があるかを必ず聞く。後述する志望先の先生への相談メールは、このためのものである。
他大学の追加募集
探し方は二次募集と同じで、分野が近い研究科の入試情報ページを1つずつ見ていく。まとめて載っているサイトは無いと思ったほうがよい。効率がいいのは、指導教員に「この分野で冬に募集がありそうな研究科を知りませんか」と聞くことだ。学会や共同研究で他大学とつながっているので、Webサイトを10個見るより早いことがある。
他大学の追加募集に出すときの最大の問題は、研究室訪問をしていない研究室に出願することになりやすい点である。オンラインでの面談でもよいので、出願前に一度は先生と話しておく。メールの書き方は研究室訪問のアポメール文例がそのまま使える。
研究生
研究生は、大学院に正規の学生として入学するのではなく、特定の教員の指導のもとで研究する身分である。学位は出ない。翌年の入試で有利になる制度上の仕組みも、通常は無い。それでも選ばれるのは、志望の研究室に身を置いて、ゼミに出ながら研究と勉強を続けられるからだ。
| 確認すること | 見る書類・欄 |
|---|---|
| 研究生の制度があるか | 大学の「研究生募集要項」または「研究生規程」。大学院の入試要項とは別の書類になっていることが多い |
| 出願資格 | 「出願資格」の欄。学部を卒業していること(4月からなら3月卒業見込み)が条件になるのが普通。卒業できなかった場合の扱いもここか注記に書かれる |
| 受け入れの条件 | 「受入教員の承諾」の欄。指導を受ける教員の承諾書を出願書類にしている大学がある。その場合は先生の了解が無いと出願できない |
| 締切と開始時期 | 「出願期間」「入学時期」の欄。開始時期の数か月前に締切があることがあり、二次募集の結果を待ってからでは間に合わない場合がある |
| 費用 | 「検定料」「入学料」「研究料」の欄。名称と金額は大学ごとに違う |
| 在籍期間 | 「研究期間」の欄。延長の可否もここに書かれる |
研究生は、受け入れ教員の承諾書を出願書類にしている大学がある。承諾が要らない大学でも、指導を受ける先生の了解なしに研究室へ入ることはできない。だから研究生を考えるなら、他大学を探すより先に、落ちた直後の報告メールの段階で相談しておくのがよい。費用は大学ごとに違うので金額は書かないが、検定料・入学料・研究料の3つが別々にかかる場合があることは覚えておく。
もう1つ、研究生は正規の学生ではない。学割や通学定期、国民年金の学生納付特例などで、正規の学生と扱いが違うことがある。学生納付特例の対象になるかは年金事務所に確認する。日本学生支援機構の奨学金を借りている場合、研究生は在学届による在学猶予の対象外になるのが一般的なので、返還の猶予をどう受けるかを大学の奨学金窓口か日本学生支援機構の案内で確認しておく。実験系の研究室では、研究生が行える実験の範囲を安全管理の規程で決めている場合もあるので、受け入れの相談のときに何ができるかを聞いておくとよい。
既卒で翌年受験
大学院の出願資格の多くは「大学を卒業した者」を含むので、卒業後に受け直すこと自体は制度上ふつうにできる。募集要項の「出願資格」の欄で、卒業見込みの者と既卒者の両方が書かれているかを確認する。出願の手続きでは、在学中と違って卒業証明書と最終の成績証明書を母校から取り寄せることになり、推薦書や指導教員の意見書が必要な区分なら、卒業後に改めて元の指導教員へ頼むことになる。発行にかかる日数は「提出書類」の欄の締切から逆算しておく。
問題は制度ではなく生活の側にある。学部を卒業すると所属が無くなり、研究室のゼミにも出られず、過去問の情報も入りにくくなる。大学のメールアドレスや図書館、電子ジャーナルが使えなくなる場合もある。国民年金の学生納付特例のような学生向けの制度も対象から外れるので、保険料の免除・猶予の扱いは市区町村の窓口や年金事務所で確認する。奨学金を借りていれば返還も始まるが、経済的に困難な場合などは返還期限の猶予を申請できる場合がある。既卒で受けるなら、アルバイト先でも科目等履修生でもよいので、毎日決まった時間に行く場所を先に決めておくと崩れにくい。
大学によっては、卒業要件を満たしても在籍を続けられる卒業延期の制度を設けている。在籍が続く分だけ学費がかかるが、所属と研究室が残る。制度の有無と条件は学部の学生便覧や教務の窓口で確認する。申請の期限は卒業の判定より前に設定されていることがあり、秋学期のうちに手続きが締め切られる場合もあるので、使うなら早めに問い合わせる。
就職に切り替える
院試に落ちたことは、就職活動で隠す必要のある経歴ではない。面接で聞かれたら、事実と、そのあと何を考えて就職を選んだかを短く話せばよい。問題になるのは経歴ではなく時期である。夏の院試に落ちてから動き出す場合、募集を続けている企業の中から選ぶことになる。具体的な採用スケジュールは年によっても企業によっても違うので、まず大学のキャリアセンターと、学科の就職担当の先生に相談するのが早い。化学系の学科には、学科宛てに来る求人や推薦の枠があることがある。ただし学校推薦で応募したら、内定を辞退しない前提で扱われるのが普通である。二次募集や翌年の再受験と天秤にかけている段階で推薦を使うのは避け、使うなら進路を就職に決めてからにする。
化学メーカーの研究開発職には、修士了を前提にした募集も多い。学部卒で応募するなら、研究職にこだわるか、生産技術・品質管理・営業などの職種まで広げるかを先に考えておくと、求人の見え方が変わる。
既卒になってから応募する場合、新卒と同じ枠で受け付けるかどうかは企業ごとに違う。企業の募集要項の「応募資格」の欄で、既卒者の扱いを確認する。
就職を選んでも、大学院への道が閉じるわけではない。社会人向けの入試を設けている研究科もある。ただし実務経験の年数や、在職のまま通う場合は勤務先の承諾を出願資格にしていることが多く、修士課程では実施していない研究科もある。在職のまま実験系の研究室に通う場合は平日の日中に研究室にいる必要があるので、勤務先の派遣制度などが無いと両立は難しい。修士に行く意味を数字で考え直したいなら、理系は大学院に行くべきかで進学率と学費をまとめている。
内部の別専攻・別コース
自分の大学の大学院に、近い分野の別専攻がある場合の選択肢である。見る欄は2つある。1つは別専攻の二次募集の「募集人員」の欄で、自分の専攻に二次募集が無くても、近い専攻にはあることがある。もう1つは、翌年度も受けるなら募集要項の「志望専攻」「第2志望」の欄だ。出願時に第2志望の専攻を書ける研究科なら、次は書いておく。夏の入試で第2志望を書いていた場合は、その判定はすでに今回の結果に含まれている。
化学系は専攻の境界が近い。有機合成をやりたかった人が、高分子や生体関連の専攻で有機化学を使う研究室に入るのは珍しくない。研究室の中身は専攻名ではなく、先生の論文の一覧で判断する。
指導教員と志望先の先生へのメール文例
送る相手は2人いる。卒研の指導教員と、研究室訪問で時間をもらった志望先の先生である。どちらも報告と相談を1通にまとめ、長くしないのが基本だ。内部進学で指導教員と毎日会っているなら、メールではなく口頭で構わない。
文例:指導教員への報告
件名:大学院入試の結果のご報告(〇〇研究室 4年 山田太郎) 〇〇先生 お世話になっております。〇〇研究室4年の山田太郎です。 先日受験した△△大学大学院□□研究科の入試について、 本日発表があり、不合格でした。 出願書類の確認や面接の練習でお時間をいただいたにもかかわらず、 よいご報告ができず申し訳ありません。 今後については、二次募集への出願、研究生として翌年受験、 就職への切り替えのいずれにするかを、今週中に考えたいと思っています。 ご相談のお時間を15分ほどいただけないでしょうか。 今週は〇日・〇日の午後でしたら、いつでも伺えます。 卒業研究は、これまでどおり進めます。 山田太郎 〇〇大学 〇〇学部 〇〇学科 4年(〇〇研究室)
ポイントは3つある。結果を1文目で書くこと、選択肢を自分で挙げてから相談を頼むこと、卒研を続けると明言することだ。「どうしたらいいでしょうか」とだけ書くと、先生は何から話せばいいか分からない。選択肢が並んでいれば、先生はそれぞれについて知っていることを話せる。
文例:志望先の先生への報告と相談
件名:大学院入試の結果のご報告とご相談(〇〇大学 山田太郎) △△先生 〇月〇日に研究室を見学させていただいた、 〇〇大学〇〇学科4年の山田太郎です。 先日の□□研究科の入試を受験しましたが、 残念ながら不合格となりました。 見学の際には、研究内容について丁寧にご説明いただき、 ありがとうございました。 先生の研究室で〇〇の研究をしたいという気持ちは変わっておらず、 二次募集への出願、または研究生として翌年度の入試を受けることを 検討しています。 もし可能であれば、来年度に先生の研究室で受け入れていただける 余地があるかどうか、お教えいただけないでしょうか。 難しい場合も、その旨をお知らせいただければ、他の道を考えます。 お忙しいところ恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。 山田太郎 〇〇大学 〇〇学部 〇〇学科 4年 メール:〇〇〇〇@〇〇.ac.jp
この文例で大事なのは、「難しい場合も知らせてほしい」と一言入れることだ。受け入れが難しいときに先生が返信しにくいまま時間が過ぎるのが、受験生にとって一番困る。断りやすい書き方をしておけば、返事は早く来る。配属や合格の約束を求める書き方はしない。合否を決めるのは研究科の入試であって、先生個人ではない。
1週間たっても返信が無ければ、件名の頭に「再送:」を付けて同じ内容を短く送り直してよい。
翌年に再受験する場合のスケジュール
研究生か既卒で翌年もう一度受けると決めた場合の型を置く。夏(おおむね7〜9月)に筆記・面接を実施する研究科を、前年の夏に落ちた場合を想定している。自分の志望先の日程に合わせて前後にずらして使ってほしい。ずらす起点は「翌年度の出願期間の初日」である。
| 時期 | やること | この時期に外せない1つ |
|---|---|---|
| 不合格から1週間 | 上のチェックリスト。報告・二次募集の確認・答案の再現 | 指導教員への報告 |
| 不合格から1か月 | 進路を決める(二次募集・研究生・既卒・就職)。研究生なら受け入れの相談と出願書類の準備 | 研究生の出願期間の確認 |
| 秋〜冬(10〜12月) | 敗因の科目の基礎を教科書でやり直す。卒研を進める | 過去問を根拠つきで解き直す |
| 冬〜卒業(1〜3月) | 卒論の提出・発表。研究生・既卒の身分を確定する。過去3年分の過去問を通す。英語の外部スコアが必要なら、結果が届くまでの日数を見込んでこの時期に受験を申し込む | 卒業要件を確実に満たす |
| 春(4〜5月) | 翌年度の募集要項が出たら全文を読む。日程・科目・出願資格が前年から変わっていないか確認する | 募集要項の変更点の確認 |
| 初夏(出願期間) | 研究計画書を書き直す。研究生なら在籍中に取り組んだこと、既卒なら卒論の成果と卒業後に勉強したことを反映させる。卒業証明書・成績証明書を母校から取り寄せる | 書類の「必着」日の確認 |
| 夏(試験) | 本番。面接では「前年に不合格だった理由と、この1年でやったこと」を必ず準備する | 1年間の説明を1分版・3分版で話せるようにする |
研究生や既卒での再受験は、面接で前年の結果を聞かれる前提で準備したほうがよい。そこで「1年間で何が変わったか」を具体的に言えれば、むしろ強い材料になる。言えるようにするには、秋の時点で敗因を書き出し、月ごとに潰した記録を残しておくことだ。
募集要項の読み方・出願書類の揃え方・研究計画書の書き方は、外部院試の進め方(12か月スケジュール)で順番どおりに整理している。再受験でも手順は同じである。
「院試に落ちる人の特徴」を次の行動に変える
「院試に落ちる人の特徴」は検索するとたくさん出てくるが、読んで落ち込むだけでは意味がない。特徴は次に何をするかに変換して初めて使える。下の表は、筆者が見聞きした範囲でよく挙がる敗因をまとめたものである。統計ではないので、自分に当てはまる行だけ拾ってほしい。
| よくある敗因 | 自分で確かめる方法 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 過去問を「答えを覚える」形で回していた | 過去問の1問を、解答を見ずに根拠つきで説明できるか | 1問ごとに「なぜその答えになるか」を教科書の該当ページで確認する |
| 出題範囲を過去問だけで決めていた | 今年の問題に、過去問に無かった分野が出ていたか | 募集要項の「試験科目」の範囲を、教科書の章単位で全部書き出す |
| 英語を後回しにしていた | 英語の点が他の科目より明らかに低いか(成績開示で分かる場合がある) | 方式を確認して対策を変える。院試の英語の方式別対策 |
| 面接で卒研や志望理由を話せなかった | 面接で答えに詰まった質問を思い出せるか | 卒研の説明を1分版・3分版の2種類で用意し、指導教員の前で話す。型は院試の面接で聞かれる質問12問と答え方のテンプレートを使う |
| 研究室訪問をしていなかった | 研究計画書に志望研究室の論文を1本でも引けたか | 志望先の先生の最近の論文を2〜3本読み、その上で訪問する |
| 募集要項の読み落とし(科目・書類・事前相談) | 試験当日に「知らなかった」ことがあったか | 要項を印刷して、全ページに読んだ印を付ける |
| 併願先が無かった | 夏の時点で、ほかに出願していたか | 翌年は分野の近い研究科を2つ以上リストにする |
有機化学が敗因の科目だった場合、やり直しの順番は「反応を覚える」ではなく「反応の型を理解する」である。有機化学の勉強法(反応を8つの型に畳む)で、その順番を書いている。院試の過去問がどう問うかの実例として、東大院試2023のSN2反応の解説も参考になる。面接が敗因だった場合は、上の表で挙げた面接記事で、質問ごとの準備の仕方とNG回答の例も確認しておくとよい。
6つの道をどう選ぶか
最後に選び方を書く。迷ったら、次の順番で問いに答えていくとよい。
1つ目は、「その研究室・その分野でなければならない理由があるか」。あるなら二次募集・研究生・既卒での再受験、つまり同じ場所に向かう道を選ぶ。無いなら他大学の追加募集・就職・内部の別専攻も同じ重さで比べる。院試に落ちたことをきっかけに、行きたかったのは研究室ではなく「大学院というもの」だったと気づく人は少なくない。それは悪いことではない。
2つ目は、「1年間を自分で管理できるか」。所属が無い1年はリズムが崩れやすい。自信が無いなら、既卒での受験より研究生のほうが、場所と人がある分だけ続けやすい。研究室選びそのものを考え直すなら、研究室選びのコツや、配属後の忙しさを扱った化学系研究室のコアタイムと拘束時間の実態も判断の材料になる。
3つ目は、「お金と時間の見通しがあるか」。研究生と既卒は1年分の費用がかかり、就職はその1年を収入に変える。これは家族と話して決めることで、他人が正解を出せる問題ではない。
院試に落ちたことは、進路の終わりではなく分岐点である。分岐点で一番もったいないのは、締切の存在を知らないまま時間が過ぎて、選べたはずの道が勝手に消えることだ。この記事のチェックリストとメール文例を使って、まずは今日、指導教員に1通送ってほしい。
よくある質問
最初に連絡するのは卒業研究の指導教員です。結果が出た当日か翌日に報告し、今後の相談の時間をもらいます。二次募集の情報や他大学の先生とのつながりは指導教員が最も多く持っているため、報告が早いほど取れる選択肢が増えます。研究室訪問で時間をもらった志望先の先生にも、2〜3日以内に結果を報告し、翌年度の受け入れの余地があるかを相談します。
出願できるかどうかは研究科ごとに違うため、受験歴による制限や注記が無いかを、二次募集の募集要項の「出願資格」の欄と注記で確かめてください。分からなければ入試担当の窓口に問い合わせます。二次募集はそもそも実施されない年や専攻があり、募集が社会人や留学生の特別選抜に限られることや、募集人員が若干名とだけ書かれていることもあります。研究室ごとの受け入れ枠が夏に埋まっている場合もあるので、出願の前に志望先の先生へ受け入れの余地を確認することが大切です。
研究生であることが入試で有利に扱われる仕組みは、通常はありません。合否は翌年の入試の結果で決まります。研究生を選ぶ利点は、志望の研究室に所属してゼミに出ながら研究と勉強を続けられること、研究の進み具合を研究計画書や面接で具体的に話せるようになることです。研究生には受け入れ教員の承諾が必要な大学が多く、検定料や研究料などの費用もかかるため、大学の研究生募集要項で条件を確認してから決めてください。
院試に落ちたこと自体を隠す必要はなく、面接で聞かれたら事実と、そのあと就職を選んだ理由を短く説明すれば十分です。実際に影響が出やすいのは経歴ではなく時期で、夏の院試のあとに動き出すと、募集を続けている企業の中から選ぶことになります。大学のキャリアセンターと学科の就職担当の先生に早めに相談すると、学科宛ての求人など自分では見つけにくい情報が得られることがあります。
前年に不合格だった理由と、この1年間で何をしたかを聞かれる前提で準備しておくのが安全です。敗因の科目をどう勉強し直したか、研究生なら在籍中に何に取り組んだか、既卒なら卒業研究の成果と卒業後の勉強を具体的に話せれば、再受験であることはむしろ説得力のある材料になります。そのためには、不合格の直後に敗因を書き出し、月ごとにどう潰したかの記録を残しておくことが役に立ちます。
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