プリリツェフエポキシ化は、アルケンとペルオキシ酸からエポキシドを形成する手法である。プリリツェフ反応とも呼ばれる。
概要
- アルケンと過酸からエポキシドを形成する
- 一般に二重結合の立体化学がエポキシドの相対配置に本質的に完全に忠実に移行するという意味で高度に立体特異的
- 電子豊富なオレフィンほど反応性が高い
歴史
1909年、ニコライ・プリレシャエフによって報告された。
反応機構
この反応は、Bartlettが最初に提唱した一般に「バタフライ機構」と呼ばれるもので、過酸が遷移状態で分子内水素結合をすることにより進行する。過酸は遷移状態において分子内水素結合をする。双方向のフロンティア軌道相互作用が存在するが、一般に過酸は求電子剤、アルケンは求核剤と見なされている。この考え方を支持するように、電子が豊富なアルケンほど速い速度でエポキシ化を起こす。例えば、エチレン(1、メチル基なし)、プロペン(24、メチル基1)、シス-2-ブテン(500、メチル基2)、2-メチル-2-ブテン(6500、メチル基3)、2,3-ジメチル-2-ブテン(6500以上、メチル基4)であり、アルケンをメチル置換するとエポキシ化の相対率が上がる(メチル基は過共役で二重結合の電子密度を増加させる)。
この反応は協奏的であり、遷移状態は同期的かそれに近いと考えられている。バタフライ機構」は、過酸の平面がアルケンの平面を2等分し、O-O結合がそれに垂直に並ぶ遷移状態形状を介して行われる。このコンフォメーションにより、重要なフロンティア軌道の相互作用が起こる。主な相互作用は、占有されたπC=C軌道(HOMO)と低位にある非占有σ*O-O軌道(LUMO)である。この相互作用は、アルケンと過酸のそれぞれで観察される全体的な求核性と親電子性を説明するものである。また、過酸の面に垂直なローンペア軌道であるnO(p)(HOMO)と非占有のπ*C=C軌道(LUMO)の間にも二次的相互作用が存在する。
実験手順
実験のコツ
発展
応用例
参考文献
1) Prilezhaev, N. Ber. 1909, 42, 4811. DOI:10.1002/cber.190904204100
2) Swern, D. Org. React. 1953, 7, 378.
3) Henbest Rule: Hoveyda, A. H.; Evans, D. A.; Fu, G. C. Chem. Rev. 1993, 93, 1307. DOI: 10.1021/cr00020a002
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