SCIENCE

【元素図鑑】ガリウム Ga【原子番号31】

ガリウムに関する情報をまとめました。

元素図鑑

ガリウムの基本情報

和名 ガリウム
英名 Galium
語源 発見者の祖国フランスのラテン語名 (Gallia)
元素記号 Ga
原子量 69.72
常温(25℃)での状態 固体(金属)
青白色
臭い
密度 5.905 g/cm3(20℃)
融点 29.77℃
沸点 2403℃
発見者 ボアボードラン(フランス) [1875年]
含有鉱物 閃亜鉛鉱

ガリウムの主な特徴

  • 金属元素で、銀白色の光沢を持つ
  • 融点は29.76℃と非常に低く、体温で容易に溶けるため、手のひらに乗せると液体になる
  • 沸点は2204℃と非常に高く、液体状態での温度範囲が広い特異な金属
  • 自然界には単体では存在せず、主にボーキサイトや亜鉛鉱石中に微量含まれる
  • 化学的には比較的安定で、大気中や水中でも急速に酸化されることはない

ガリウムの歴史

発見

ガリウムは1875年、フランスの化学者ポール・ボアボードランによって、亜鉛鉱石中から分光分析により発見されました。

この発見は、ドミトリ・メンデレーエフが予言していた「エカアルミニウム」に対応する元素とされ、周期表の正当性を証明する事例となりました。

名前の由来

「ガリウム(Gallium)」という名称は、発見者ボアボードランの母国フランスのラテン名「Gallia(ガリア)」に由来しています。

また一説には、彼の姓「Boisbaudran」のラテン語読み「Gallus」に由来するとも言われています。

ガリウムの主な用途

ガリウムはその半導体特性や液体状態での安定性を活かし、次のような用途で広く利用されています:

  • 半導体材料: ガリウムヒ素(GaAs)や窒化ガリウム(GaN)として、高速電子デバイスやLEDに使用
  • 液体金属冷却材: ガリウム合金(Ga-In-Sn)は低融点で毒性が低く、電子機器の冷却などに使用
  • 太陽電池: GaAsやCu(In,Ga)Se₂(CIGS)型太陽電池として高効率化が進む
  • 温度計・熱電材料: ガラスを用いない温度計、熱電変換素子としても研究中
  • 医療応用: ガリウム化合物が抗腫瘍活性を持つことから、がん治療薬としての応用も研究中

 ガリウムの生成方法

ガリウムは主に次のような方法で副産物として得られます:

  • ボーキサイト処理: アルミニウム精錬過程(バイヤー法)の副産物として回収される
  • 亜鉛鉱石処理: 電解精錬のアノードスライムからも抽出可能
  • 抽出法: 水酸化ナトリウムによる溶解 → 溶媒抽出 → 電解回収によって精製

ガリウムを含む化合物

ガリウムは+3価が最も安定で、多くの化合物を形成します。代表的なものは以下の通りです:

  • ガリウムヒ素(GaAs): 高速・高周波デバイスに使用されるIII-V族半導体
  • 窒化ガリウム(GaN): 青色LEDやパワー半導体として重要。高耐圧・高周波特性を持つ
  • 酸化ガリウム(Ga₂O₃): 次世代パワーデバイス材料として注目
  • 硫化ガリウム(Ga₂S₃): 赤外線光学材料として利用される
  • ガリウム錯体: 医薬用途や化学センサー材料として研究される

ガリウムに関わる研究事例

ガリウムは先端材料科学、半導体工学、医薬分野で幅広く研究対象となっています:

  • GaN系パワーデバイス: SiやSiCを凌ぐ高性能トランジスタ材料の開発が進む
  • Ga-In合金によるフレキシブル回路: 液体金属を利用した伸縮性電子回路の実現
  • 抗腫瘍剤としてのガリウム化合物: Ga(NO₃)₃などががん細胞の増殖抑制に有効
  • ガリウム酸化物の高効率発光デバイス: UVC領域での発光素子開発
  • ナノ構造Ga材料の触媒応用: アモルファスGa粒子による水素生成やCO₂還元

筆者の薦める1冊

第1位

元素に関する問題がレベル別に多く掲載されており、一般的な知識からニッチな知識まで幅広く学べます。また、最後には全元素のデータが載っており、わからないことがあればすぐに調べることができます。

これを読めば、元素マスターに一歩も二歩も近づけます!

 

第2位

この本の一番の魅力は、とても美しい画像とともに学べるということです。

「こんなに美しい元素があったんだ、、!」という新しい発見がたくさんあると思います。

理系に限らず、文系にもおすすめの一冊です。

ランキング3位

実は鉱石好きだった宮沢賢治。

教科書にも作品を残す彼の科学者としての一面に注目した一冊です。