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ポーソン・カーン反応は、アルキン、アルケン、一酸化炭素の遷移金属触媒反応であり、α,β-シクロペンテノンを生成する。

概要

  • アルキン、アルケン、一酸化炭素の[2+2+1]付加環化反応

歴史

1973年にPeter Ludwig PausonとIhsan Ullah Khandによって初めて報告された。

[2+2+1] とは何を数えているのか

この反応は3つの部品から5員環を1回で組み上げます。「[2+2+1]」は、それぞれが環に何個の原子を供給するかを表しています。

成分 環に出す原子 環での役割
アルキン 炭素2個 生成物のC=C二重結合になる
アルケン 炭素2個 sp3の2炭素になる
一酸化炭素 炭素1個 カルボニル炭素になる

合わせて5原子——できるのはα,β-不飽和シクロペンテノンです。二重結合とカルボニルが共役した5員環が、たった1工程で手に入ります。

5員環を一度に作れることが、この反応の価値です。5員環は天然物に非常に多く現れますが、6員環のディールス–アルダー反応のような万能の作り方がありません。ポーソン–カーン反応は、その穴を埋める数少ない手段のひとつとして使われてきました。

反応の流れ

古典的にはコバルトカルボニル錯体(Co2(CO)8)を使います。コバルトがアルキンを抱え込み、そこへアルケンとCOを順番に取り込んでいくという筋です。

段階 何が起こるか
① アルキンが配位する Co2(CO)8がアルキンと反応し、アルキンを2つのコバルトで挟んだ錯体ができる(この錯体は安定で、単離できることもある)
② アルケンが配位する COが1つ外れて空いた席に、アルケンが入る→ここが全体の鍵になる段階
③ 炭素−炭素結合ができる アルキンとアルケンがつながる(金属上での挿入)
④ COが挿入する カルボニル炭素が環に組み込まれる
⑤ 還元的脱離 環が閉じてシクロペンテノンが外れ、コバルトが戻る

②でアルケンが入りにくいことが、この反応が長らく「進みにくい反応」とされてきた原因です。そのため加熱や長時間の反応が必要でした。

なぜ分子内反応が主流なのか

実際に使われるのは、アルキンとアルケンが同じ分子の中でつながっている(エンイン)場合がほとんどです。

分子間(別々の分子) 分子内(エンイン)
アルケンが近づく確率 低い——出会わないと始まらない 常に隣にいる
どのアルケンが反応するか 制御しにくい つながっている1つに決まる
できるもの 単環のシクロペンテノン 二環性化合物が一度にできる
使いどころ 限定的 天然物合成の骨格構築
分子内にすると「濃度の問題」が消えます。②のアルケンの配位が遅いなら、アルケンを常にそばに置いておけばよい——これが分子内版の発想です。しかも生成物が縮環した二環性骨格になるので、複雑な天然物の骨格を一気に組める利点まで付いてきます。

促進剤——N-オキシドで反応が速くなる

この反応が実用になった転機のひとつが、アミンN-オキシド(NMOなど)の利用です。

働きは単純で、コバルトに付いているCOを酸化してCO2として追い出すこと。COが1つ抜けるとアルケンが入る席が空くので、律速だった②の段階が一気に進みます。加熱に頼らず穏やかな条件で反応させられるようになり、壊れやすい基質にも使えるようになりました。

「配位子を1つ外して席を空ける」というのは有機金属化学の定石です。基質を活性化するのではなく、触媒側の席を空けてやる——反応が遅いときに何を動かせばよいかを考える、よい例になっています。

位置選択性

アルキンが非対称のとき、置換基がシクロペンテノンのどちらの位置に来るかが問題になります。経験則として、かさ高い置換基はカルボニルの隣(α位)に来ることが知られています。

金属上で結合ができる段階で、大きな置換基が立体的に混み合わない向きに収まるためだと説明されます。非対称なアルキンを使うときは、この向きを見込んで基質を設計することになります。

よくある質問

ここに質問を入力

の数字は何を表しているのですか?”]3つの成分が環に何個の原子を供給するかです。アルキンが炭素2個(生成物のC=Cになる)、アルケンが炭素2個(sp3の2炭素になる)、一酸化炭素が炭素1個(カルボニル炭素になる)で、合わせて5原子の環ができます。生成物はα,β-不飽和シクロペンテノンです。

なぜ分子内反応(エンイン)で使われることが多いのですか?

アルケンがコバルトに配位する段階が遅いからです。アルキンとアルケンが同じ分子内でつながっていれば、アルケンは常にそばにいるので、この段階の不利が消えます。さらに生成物が縮環した二環性骨格になるため、複雑な天然物の骨格を一度に組めるという利点もあります。

N-オキシドを加えると反応が速くなるのはなぜですか?

コバルトに付いているCOを酸化してCO2として追い出し、アルケンが入る席を空けるためです。律速だったアルケンの配位が進みやすくなるので、加熱に頼らず穏やかな条件で反応させられます。壊れやすい基質にも使えるようになった点が大きな進歩でした。

非対称なアルキンを使うとどちらの向きになりますか?

経験則としてかさ高い置換基がカルボニルの隣(α位)に来ます。金属上で結合ができる段階で、大きな置換基が立体的に混み合わない向きに収まるためと説明されます。非対称アルキンを使うときは、この向きを見込んで基質を設計します。

参考文献

<Original Publication>

I. U. Khand; G. R. Knox; P. L. Pauson; W. E. Watts, “A cobalt induced cleavage reaction and a new series of arenecobalt carbonyl complexes”, Chem. Commun., 1971, 36. DOI: 10.1039/C2971000036a

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