アルケンは、ポリマー製品の原料やその他の基本的な有機化合物の原料となるため、化学工業では重宝されています。
今回は、カルボニル化合物からアルケンを合成する方法を紹介します。
Grignard反応
概要
有機金属剤の中では最も代表的な反応で、ほとんどのカルボニル化合物にアルキル基を導入することができます。
Gurinard反応の開発者であるV. Gurinardは1912年にノーベル化学賞を受賞しています。
反応機構
メリット
デメリット
Gurinard反応の場合、3級アルコールでないとうまく脱離できません。
また、熱力学的に安定なアルケンが生成するため、狙った位置にアルケンを導入できないことがあります。
さらに、シス-トランス異性体が混在してしまうこともあります。
アルドール反応
概要
アルドール反応は、α水素をもつカルボニル化合物から発生したエノラートがもう一つのカルボニル化合物に求核付加し、β-ヒドロキシカルボニル化合物を得る反応です。
この生成物を脱水することにより、アルケンを得ることができます。
アルドール反応の大きな特徴は、新しい炭素-炭素結合を形成できることです。
反応機構
メリット
デメリット
アルドール反応はAldol体を得るための手法であるため、脱水反応が上手く進みません。
また、反応には強塩基が必要となります。
さらに、Gurinard反応と同じく、シス-トランス異性体が混在してしまいます。
Knoevenagel縮合
概要
活性メチレン化合物はアルデヒドやケトンと脱水縮合を起こし、置換オレフィンを与えます。
触媒として、一般にピぺリジンが用いられます。
反応機構
メリット
デメリット
Knoevenagel縮合では、活性メチレン化合物を用いる必要があるため、特殊なアルケンしか合成することができません。
ケトンとは反応しづらいのもデメリットの一つです。
Wittig反応
概要
反応機構
メリット
デメリット
安定イリドを用いる場合、イリドの反応性が低いです。
また、トリフェニルホスフィンオキシドの分離がしづらいこともあります。
Horner-Wadsworth-Emmons反応(HWE反応)
概要
正の形式電荷をもつヘテロ原子により隣接位のアニオンが安定化された化学種をイリドと呼びます。
Wittig反応は、リンイリドを用いてカルボニル化合物からアルケンを合成する反応です。
安定イリドからはE-オレフィン、不安定イリドからはZ-オレフィンが生成します。
反応機構
メリット
デメリット
Wittig反応における安定イリドを代替したため、エステルなどの電子求引基が残ってしまいます。
Julia反応(Juliaオレフィン化)
概要
Julia反応は、リチオスルホンの求核付加、引き続くアシル保護により生成するβ-アシルオキシスルホンを還元処理し、カルボニル化合物をアルケンへと変換する反応です。
E-アルケンが選択的に得られます。
還元時には、一般にナトリウムアマルガムやヨウ化サマリウムが用いられます。
反応機構
メリット
デメリット
Tebbe反応
概要
反応機構
メリット
Tebbe反応は、ケトンだけでなく、エステルやアミドもメチレン化できます。(Wittig, HWE, Julia反応では不可)
デメリット
Tebbe反応は、オレフィン化というよりもメチレン化であり、当量以上のゴミが生成されてしまいます。
Petersonオレフィン化
概要
アルデヒドやケトンに対してα-シリルカルボアニオンを付加させ得られる中間体を、酸または塩基条件で処理すると、シラノールが脱離します。
これを俯瞰的に見ると、カルボニルをアルケンに変換する反応だということがわかります。
シラノールの脱離は立体特異的であり、酸性条件と塩基性条件の違いで特異性が変わります。
反応機構
メリット
Petersonオレフィン化は、反応性が高く、E, Z体の作り分けが可能です。
デメリット
ケイ素反応剤を合成するのが面倒です。
また、アニオンを出さなければいけなく、原子効率が悪いです。