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【元素図鑑】プルトニウム Pu【元素記号は冗談でつけられた?!】

プルトニウムは、アクチノイド元素で、原子番号94の元素です。

元素図鑑

プルトニウムの基本情報

和名 プルトニウム
英名 Plutonium
語源 冥王星 (Pluto)
元素記号 Pu
原子番号 94
原子量 (239)
常温(25℃)での状態 固体(金属)
銀白色
臭い
密度 19.840 g/cm3(25℃)
融点 639.5℃
沸点 3231℃
発見者 シーボーグ 他(アメリカ)[1940年]
含有鉱物

プルトニウムの主な特徴

  • 原子番号94のアクチニド元素で、ウラン(U)の次に位置する超ウラン元素
  • 自然界に微量存在しますが、主に人工合成によって得られる放射性元素
  • 銀白色の金属であり、空気中で酸化して灰色や黒色に変色する
  • 金属的性質を持ちますが、6種類の同素体(α, β, γ, δ, δ′, ε相)があり、温度や圧力に応じて結晶構造が変化する
  • 最も重要な同位体はプルトニウム-239(Pu-239)で、核燃料や核兵器の主材料として利用されている

プルトニウムの歴史

発見

プルトニウムは1940年アメリカ合衆国カリフォルニア大学バークレー校の研究チーム
(グレン・T・シーボーグ(Glenn T. Seaborg)ら)によって初めて人工合成されました。

反応は以下の通りです。

238U + 2H → 239Np → 239Pu

ウラン-238(U-238)に重陽子を照射してネプツニウム-239(Np-239)を生成し、そのβ崩壊によってプルトニウム-239が得られました。

名前の由来

元素名「プルトニウム(Plutonium)」は、天王星(ウラン)、海王星(ネプツニウム)の次にある天体冥王星(Pluto)にちなんで命名されました。

元素記号はPuですが、これはシーボーグのユーモアによる命名の一面もあります。

プルトニウムの主な用途

プルトニウムは、核分裂特性を活かして以下の分野で利用されています。

  • 核燃料: Pu-239は中性子を吸収して核分裂を起こしやすく、原子炉燃料として利用される(MOX燃料の主成分)
  • 核兵器: Pu-239の臨界質量が小さいため、核兵器の核分裂物質として用いられる
  • 放射性熱源: Pu-238はアルファ崩壊により大量の熱を放出し、探査機のRTG(放射性同位体熱電発電機)のエネルギー源となる

プルトニウムの生成方法

プルトニウムは主にウラン-238を原子炉で中性子照射することで合成されます。

  1. U-238が中性子を捕獲してU-239になる
  2. U-239がβ崩壊してNp-239(ネプツニウム)になる
  3. Np-239がβ崩壊してPu-239になる

原子炉で生産された燃料棒を再処理することで、プルトニウムを抽出します。

プルトニウムを含む化合物

プルトニウムは+3〜+7価の酸化状態を取り、様々な化合物を形成します。

  • PuO₂(二酸化プルトニウム): 安定した酸化物で、核燃料やRTG用熱源として利用
  • PuF₃, PuF₄(フッ化プルトニウム): 精製工程や化学分離に使用
  • PuCl₃(塩化プルトニウム): 高温溶融塩化学で利用
  • 硝酸プルトニウム: 再処理工程での中間体

水溶液中では、酸化還元反応により多様な価数が共存するため、化学分離が非常に難しい元素です。

プルトニウムに関わる研究事例

プルトニウムは核化学・物理学において重要な研究対象であり、以下の分野で研究が進められています。

  • 核燃料サイクル研究: MOX燃料の再利用や長寿命核種の変換技術
  • プルトニウム金属の物性研究: 多相性(同素体)や結晶構造の安定化研究
  • 放射性廃棄物管理: プルトニウムの安全な分離・固定化技術の開発
  • 核兵器解体と核不拡散: プルトニウムの管理と国際的監視体制の強化
  • Pu-238熱電発電機の改良: 宇宙探査機向けの長寿命電源開発

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