鉄に関する情報をまとめました。
鉄の基本情報
和名 | 鉄 |
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英名 | Iron |
語源 | ギリシャ語「強い(ieros)」 |
元素記号 | Fe |
原子番号 | 26 |
原子量 | 55.85 |
常温(25℃)での状態 | 固体(金属) |
色 | 灰白色 |
臭い | ー |
密度 | 7.870 g/cm3(20℃) |
融点 | 1538℃ |
沸点 | 2863℃ |
発見者 | ヒッタイト族 [紀元前2000年頃] |
含有鉱物 | 赤鉄鉱, 磁鉄鉱 |
鉄の主な特徴
- 遷移金属元素で、周期表第8族に属す
- 銀灰色の光沢を持つ金属で、地球の地殻および核において最も豊富な金属元素
- 磁性を持ち(常磁性→強磁性)、高い強度と加工性を備え、構造材料として広く用いられる
- 酸化されやすく、水と空気中で錆(酸化鉄)を生じますが、合金化によってその弱点は克服されている
鉄の歴史
発見
鉄の使用は非常に古く、紀元前3000年頃には既に隕鉄(隕石由来の鉄)が道具として利用されていました。
鉱石からの製鉄技術は紀元前1500年頃のヒッタイト文明で確立され、「鉄器時代」を切り拓きました。
名前の由来
元素記号「Fe」は、ラテン語で鉄を意味する “ferrum” に由来します。
英語の “iron” はゲルマン語起源の単語であり、日常語と学術語で異なる語源を持つ代表例です。
鉄の主な用途
鉄は多くの産業において中核的な役割を担っています:
- 構造材料: 建築、橋梁、自動車、船舶などの基幹部材
- 鋼鉄・鋳鉄: 炭素量の調整により機械的性質を制御した合金
- 電磁材料: トランス・モーター・磁石コア(Fe-Si、Fe-Ni合金など)
- 肥料: 鉄(II)塩が作物の微量必須元素として利用される
- 医療・栄養: 鉄欠乏症の治療、鉄分補給剤として重要
鉄の生成方法
鉄は主に鉱石赤鉄鉱(Fe₂O₃)や磁鉄鉱(Fe₃O₄)から以下の工程で製錬されます:
- 高炉製錬: 鉱石・コークス・石灰石を用いて高温で還元反応を行い銑鉄を得る
- 転炉・電炉法: 銑鉄から不純物(C, Si, Pなど)を除去し鋼を製造
- 直接還元法: 天然ガスなどを用いた環境負荷の小さい鉄製造法も注目されている
鉄を含む化合物
鉄は +2 および +3 の酸化状態で安定な化合物を多数形成します:
- Fe₂O₃(酸化鉄(III)): 赤錆の主成分。顔料や磁性材料にも使用
- Fe₃O₄(四酸化三鉄): 黒色磁性鉱物。フェライト磁石の原料
- FeCl₂、FeCl₃: 工業・分析化学・錯体合成に用いられる塩類
- ヘム錯体: 生体内で酸素を運搬するヘモグロビン中の中心金属
- 鉄シアン錯体: Prussian Blue(プルシアンブルー)などの顔料や吸着剤
鉄に関わる研究事例
鉄は工業・生命科学・材料科学など、広範な分野で研究が進められています:
- 鉄触媒による有機反応: 安価で環境負荷の少ない遷移金属触媒として注目
- ヘム酵素の機構研究: シトクロム・ペルオキシダーゼなどの酸化反応解明
- 鉄鋼材料の耐食性・高強度化: ナノ組織設計による高性能鋼の開発
- 地球化学的研究: 鉄同位体による古環境・海洋酸化還元状態の復元
- 環境修復: ゼロ価鉄(ZVI)による地下水中の有害物質の分解
参考図書

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