SCIENCE

分液のコツ【分液漏斗の使い方からエマルジョンの対応まで】

分液の基本手順

分液は下記の手順で進めるのが一般的です。

  1. 有機溶媒の選定
  2. 分液漏斗の選定
  3. 反応溶液の移動
  4. 水層の抽出
  5. 有機溶媒の乾燥

 有機溶媒の選定

有機溶媒は基本的に高極性溶媒を選択します。

酢酸エチルやエーテルが一般的です。

反応溶媒にDMFのような高沸点の極性溶媒を用いた場合は、有機溶媒を低極性にして反応溶媒を水層に移します。

分液漏斗の選定

反応溶媒の量、クエンチに使用した液体の量などを考慮し、分液漏斗の大きさを選択します。

このとき、洗い込みに使用する溶媒のことを忘れないようにしましょう。

また、十分に振ることができるように余裕を持ったサイズにすると良いです。

反応溶液の移動

反応容器から分液漏斗に反応溶液を移動させます。

有機溶媒の量は化合物が十分に溶けきるくらいにしましょう。

水層の抽出

有機溶媒と水の量を大体同じにします。有機溶媒が少し多くても構いません。

分液漏斗を逆さにして1回振り、コックを開けて気体を放出します。

振る回数を増やしながら繰り返し、十分振ったところで有機溶媒を回収しましょう。

多くの有機溶媒は水層より上にきますが、ジクロロメタンなどは水層より下にくるので注意してください。

これを2~3回繰り返し、TLCで水層に原料が残っていないか確認しましょう。

有機溶媒の乾燥

最後に有機溶媒をエバポレーションなどで乾燥させます。

ただし、カラムなどのために長期間室温で保存する場合は溶液の状態で保存する方が望ましいです。

エマルジョンの解決方法

エマルジョンとは?

エマルジョンとは、層の界面に小さな泡が発生して明確な界面が存在しないことです。

エマルジョンの原因

エマルジョンの主な原因は以下の2つです。

  • 有機層と水層の密度が似ており、液体が分離する動機が弱い
  • 石鹸のような乳化剤が存在し、有機層と水層を混合させている

これらの解決方法を紹介します。

エマルジョンの解決方法

エマルジョンへの対応は簡単なものから試すべきです。

以下の順番で試してみましょう。

  1. 分液漏斗を静かに旋回させ、泡を落とす。(ジクロロメタン/水に有効)
  2. 一定時間放置する。
  3. 溶液の密度を変化させる。

③に示した溶液の密度について詳しく紹介します。

具体例

NaClの添加

NaClを添加することにより、水層の密度が上がります。

反応溶媒にTHFを使用した場合は水層とTHFが混合しやすいので、NaClの添加が有効です。

有機溶媒および水の添加

有機溶媒を添加すると有機溶媒の、水を添加すると水の密度が下がります。

ペンタンの添加

有機溶媒の中で最も密度の低いものの一つであるペンタンを添加することで有機溶媒の密度を下げることができます。

しかし、ペンタンを添加することで、有機層の極性化合物を抽出する能力に悪影響を与える可能性があるので最終手段として用いるべきです。