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【元素図鑑】バナジウム V【原子番号23】

バナジウムに関する情報をまとめました。

元素図鑑

バナジウムの基本情報

和名 バナジウム
英名 Vanadium
語源 スカンジナビア神話の美の女神バナジス  (Vanadis)
元素記号 V
原子量 50.94
常温(25℃)での状態 固体(金属)
銀白色
臭い
密度 6.110 g/cm3(19℃)
融点 1917℃
沸点 3420℃
発見者 セフストレーム(スウェーデン) [1830年]
含有鉱物 褐鉛鉱

バナジウムの主な特徴

  • 遷移金属で、周期表第5族に属す
  • 硬くて光沢のある銀灰色の金属で、空気中では酸化膜により安定し、高温では酸化される
  • バナジウムは+2 ~ +5までの酸化状態をとることができ、特に +5 の状態で安定な酸化バナジウム(V₂O₅)が知られている
  • このような酸化状態の多様性は、触媒・電子材料・無機化学研究での応用を支えている

バナジウムの歴史

発見

バナジウムは1801年、スペインの鉱物学者アンドレス・デル・リオによって発見されましたが、

当初はクロムと誤同定され、発見は一度取り消されました。

その後、1830年にスウェーデンのニルス・セフストレームが再発見し、元素として確立されました。

名前の由来

元素名「Vanadium」は、北欧神話の女神「ヴァナディス(Vanadis)」(愛と美の女神フレイヤの別名)に由来します。

多彩な化合物が鮮やかな色彩を持つことが、この名称の由来となっています。

バナジウムの主な用途

バナジウムは高強度材料や触媒として産業的に重要です:

  • バナジウム鋼: 強靭で耐衝撃性に優れた鋼材(工具、スプリング、自動車部品)
  • チタン合金: 航空宇宙産業向けの軽量・高強度材料(Ti-6Al-4V)
  • 接触法触媒: 硫酸製造に用いる酸化バナジウム(V₂O₅)
  • 赤色酸化剤: 有機合成や高分子材料への応用
  • フロー電池: バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)による大規模電力貯蔵

バナジウムの生成方法

バナジウムは主に鉱石「バナジナイト」や「カーノタイト」などから抽出され、以下の方法で製造されます:

  • 原料鉱石の処理: V₂O₅ などの酸化物として抽出
  • 還元反応: カルシウムやアルミニウムで還元して金属バナジウムを得る(熱還元法)
  • 電解法: 高純度バナジウムの製造に使用されることもある

バナジウムを含む化合物

バナジウムは様々な酸化数を持ち、それぞれ異なる色の化合物を形成します:

  • V₂O₅(五酸化二バナジウム): オレンジ色の固体。触媒として重要
  • VO²⁺(青)、VO₂⁺(黄): 酸化数 +4、+5 に対応するバナジルイオン
  • VCl₃、VCl₄: 有機金属合成や錯体化学の出発物質
  • バナジウムカルボニル錯体: 電子供与性・磁性材料の研究に応用

バナジウムに関わる研究事例

バナジウムは無機化学、固体物理、材料科学の分野で幅広く研究されています:

  • バナジウムレドックスフロー電池: クリーンエネルギー社会に向けた蓄電技術
  • バナジウムの酸化還元挙動解析: 溶液中でのpH依存性・電子移動メカニズム
  • VO₂の金属-絶縁体転移(MIT): スマートウィンドウや熱制御材料の研究対象
  • 触媒設計: バナジウム含有錯体を用いた酸化反応・エポキシ化
  • バナジウム含有高機能鋼の開発: 耐熱・耐摩耗性を高める研究

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