バナジウムに関する情報をまとめました。
バナジウムの基本情報
和名 | バナジウム |
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英名 | Vanadium |
語源 | スカンジナビア神話の美の女神バナジス (Vanadis) |
元素記号 | V |
原子量 | 50.94 |
常温(25℃)での状態 | 固体(金属) |
色 | 銀白色 |
臭い | ー |
密度 | 6.110 g/cm3(19℃) |
融点 | 1917℃ |
沸点 | 3420℃ |
発見者 | セフストレーム(スウェーデン) [1830年] |
含有鉱物 | 褐鉛鉱 |
バナジウムの主な特徴
- 遷移金属で、周期表第5族に属す
- 硬くて光沢のある銀灰色の金属で、空気中では酸化膜により安定し、高温では酸化される
- バナジウムは+2 ~ +5までの酸化状態をとることができ、特に +5 の状態で安定な酸化バナジウム(V₂O₅)が知られている
- このような酸化状態の多様性は、触媒・電子材料・無機化学研究での応用を支えている
バナジウムの歴史
発見
バナジウムは1801年、スペインの鉱物学者アンドレス・デル・リオによって発見されましたが、
当初はクロムと誤同定され、発見は一度取り消されました。
その後、1830年にスウェーデンのニルス・セフストレームが再発見し、元素として確立されました。
名前の由来
元素名「Vanadium」は、北欧神話の女神「ヴァナディス(Vanadis)」(愛と美の女神フレイヤの別名)に由来します。
多彩な化合物が鮮やかな色彩を持つことが、この名称の由来となっています。
バナジウムの主な用途
バナジウムは高強度材料や触媒として産業的に重要です:
- バナジウム鋼: 強靭で耐衝撃性に優れた鋼材(工具、スプリング、自動車部品)
- チタン合金: 航空宇宙産業向けの軽量・高強度材料(Ti-6Al-4V)
- 接触法触媒: 硫酸製造に用いる酸化バナジウム(V₂O₅)
- 赤色酸化剤: 有機合成や高分子材料への応用
- フロー電池: バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)による大規模電力貯蔵
バナジウムの生成方法
バナジウムは主に鉱石「バナジナイト」や「カーノタイト」などから抽出され、以下の方法で製造されます:
- 原料鉱石の処理: V₂O₅ などの酸化物として抽出
- 還元反応: カルシウムやアルミニウムで還元して金属バナジウムを得る(熱還元法)
- 電解法: 高純度バナジウムの製造に使用されることもある
バナジウムを含む化合物
バナジウムは様々な酸化数を持ち、それぞれ異なる色の化合物を形成します:
- V₂O₅(五酸化二バナジウム): オレンジ色の固体。触媒として重要
- VO²⁺(青)、VO₂⁺(黄): 酸化数 +4、+5 に対応するバナジルイオン
- VCl₃、VCl₄: 有機金属合成や錯体化学の出発物質
- バナジウムカルボニル錯体: 電子供与性・磁性材料の研究に応用
バナジウムに関わる研究事例
バナジウムは無機化学、固体物理、材料科学の分野で幅広く研究されています:
- バナジウムレドックスフロー電池: クリーンエネルギー社会に向けた蓄電技術
- バナジウムの酸化還元挙動解析: 溶液中でのpH依存性・電子移動メカニズム
- VO₂の金属-絶縁体転移(MIT): スマートウィンドウや熱制御材料の研究対象
- 触媒設計: バナジウム含有錯体を用いた酸化反応・エポキシ化
- バナジウム含有高機能鋼の開発: 耐熱・耐摩耗性を高める研究
参考図書

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