合成したい化合物に不斉炭素原子が存在する場合、多くの場合は有機反応によってその立体化学を制御したい。
ここでは、有機反応にまつわる立体化学を全般的に学んでいく。
速度論と熱力学
有機反応には、速度論で進行する反応と熱力学的に進行する反応がある。
速度論
速度論で進行する反応は、活性化エネルギーが低い。
そのため、比較的低温で進行する。
立体化学を制御したい場合は、速度論で反応を進行させる場合が多い。
熱力学
熱力学的に進行する反応は、高い活性化エネルギーを必要とする。
そのため、熱力学的に進行するために必要なエネルギーを与えた場合、速度論で進行する反応と競合する。このとき、より低いエネルギーを有する生成物を与える反応が優先的に進行する。
立体選択的反応と立体特異的反応
2つの用語について、定義を確認する。
立体選択的反応
立体選択的反応とは、生成物に可能な立体異性体が複数ある場合に、ある異性体が優先的に得られる反応。
立体特異的反応
立体特異的反応とは、生成物の立体化学が出発物の立体化学に依存する反応である。すなわち、ある立体異性体Aからは1つの立体異性体A’が得られ、ある立体異性体Bからは1つの立体異性体B’が得られる。
立体化学制御の応用例