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デービス酸化【Davis Oxidation】

デービス酸化は、主にケトン類やエステル類からα-ヒドロキシカルボニル化合物(アシロイン)を生成するものである。塩基性環境下で反応を行い、ケトンまたはエステルから対応するエノラートを生成させる。この反応は、アミドに対しても有効であることが示されている。Davis’ oxaziridine oxidationとも呼ばれる。

概要

  • エノラートアニオンを2-スルホニルオキサジリジン(N-sulfonyloxaziridines: Davis試薬)で処理することにより、温和な条件下でケトンやエステルのα位を酸化する
  • カンファースルホン酸由来の光学活性オキサジリジンを用いることで不斉酸化が可能
  • 2-(phenylsulfonyl)-3-phenyloxaziridine(Davis試薬)または同様のオキサジリジン試薬を使用すると、ケトンまたはエステルからその場で生成したエノラートを酸化してα-水酸化化合物を得ることができる
  • 塩基性環境下で反応を行い、ケトンまたはエステルから対応するエノラートを生成させる
  • アミドに対しても有効
  • Davis試薬で行われるその他の酸化反応には、スルフィドやセレニドをさらに酸化せずにスルホキシドやセレノキシドにするもの、アルケンをエポキシドに酸化するもの、アミンをヒドロキシルアミンやアミンオキシドに酸化するものなどがある

Davis Oxidation

歴史

1978年にドレクセル大学のFranklin Arnold Davis(現在テンプル大学教授 )らによって2-スルホニルオキサジリジンの合成が報告された。

現在でも最も使われているオキサジリジン試薬の一つである。

反応機構

カルボニルのα水酸化反応では、まず塩基がケトンまたはエステルを対応するエノラートに変換する。次に、エノラートアニオンを求核剤として、オキサジリジンの酸素原子をSN2機構で攻撃し、ヘミアミン中間体を形成する。この中間体はスルフィンイミンに分解され、プロトン化された後、目的のα-ヒドロキシケトンまたはα-ヒドロキシエステルになる。

実験手順

THF中のケトンの溶液に、-78℃でTHF中のKHMDSの溶液を滴加する。反応混合物を0℃ににて攪拌する。反応混合物を-78℃に冷却したのち、THF中のDavis’ oxaziridineの溶液を滴加する。この溶液を0℃にて攪拌する。原料の消失を確認したのち、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応を停止させる。

実験のコツ

 

応用例

  • Ginkgolide Cの全合成6)

Davis Oxidation_Ginkgolide C

Davis Oxidation_Ginkgolide C_mechanism

t-Bu基の立体障害により、立体選択的に進行

参考文献

1) Davis, F. A.; Jenkins, R., Jr.; Yocklovich, S. G. Tetrahedron Lett. 197819, 5171. DOI:10.1016/S0040-4039(01)85841-X
2) Davis, F. A.; Vishwakarma, L. C.; Billmers, J. G.; Finn, J. J. Org. Chem. 198449, 3241. DOI: 10.1021/jo00191a048
3) Davis, F. A.; Sheppard, A. C.; Chen, B.-C.; Serajul Haque, M. J. Am. Chem. Soc. 1990112, 6679. DOI: 10.1021/ja00174a035
4) Davis, F. A.; Chen, B. C. Tetrahedron Lett. 199031, 6823. DOI:10.1016/S0040-4039(00)97181-8
5) Davis, F. A.; Kumar, A.; Chen, B. C. Tetrahedron Lett. 199132, 867. DOI:10.1016/S0040-4039(00)92107-5
6) Martin Hebert, Gabriel Bellavance, and Louis Barriault, J. Am. Chem. Soc., 2022, 144, 17792-17796.

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