フェルミウムは、元素記号Fm、原子番号100の合成元素である。アクチノイドの一種であり、軽元素の中性子照射によって生成される最も重い元素であるため、巨視的な量を調製できる最後の元素であるが、純フェルマニウム金属はまだ調製されていない。19の同位体が知られており、257Fmは半減期が100.5日と最も長寿命である。
1952年に最初の水爆の爆発破片から発見され、原子核物理学のパイオニアの一人であるエンリコ・フェルミにちなんで名付けられた。その化学的性質は後期アクチノイドの典型的なもので、+3酸化状態が圧倒的に多いが、+2酸化状態も利用可能である。生成されるフェルミウムの量が少ないことと、すべての同位体の半減期が比較的短いことから、現在のところ基礎科学研究以外の用途はない。
フェルミウムの基本情報
和名 | フェルミウム |
---|---|
英名 | Fermium |
語源 | 原子炉の発明者フェルミ (Fermi) |
元素記号 | Fm |
原子番号 | 100 |
原子量 | (257) |
常温(25℃)での状態 | – |
色 | – |
臭い | – |
密度 | – |
融点 | – |
沸点 | – |
発見者 | ギオルソ 他(アメリカ)[1952年] |
含有鉱物 | – |
フェルミウムの主な特徴
- アクチノイド系列に属する人工元素で、強い放射性を持つ
- 自然界には存在せず、主に核爆発や原子炉内での中性子捕獲反応によって生成される非常にまれな元素
- 銀白色の金属と推定されますが、非常に少量しか合成できず、純粋な物性測定は困難
- 安定同位体は存在せず、最も寿命が長い同位体 Fm-257 の半減期は約100日
フェルミウムの歴史
発見
フェルミウムは1952年、アメリカが行った初の水爆実験「アイビー・マイク(Ivy Mike)」の爆発生成物を分析する中で、
ローレンス・バークレー国立研究所とロスアラモス研究所の研究者によって発見されました。
爆発によって生成されたウランの中性子捕獲連鎖反応から、質量数255のフェルミウム(Fm-255)が確認されました。
名前の由来
元素名「フェルミウム(Fermium)」は、20世紀を代表する理論物理学者であり、原子核物理学・量子力学の発展に大きな貢献をした
エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)に敬意を表して命名されました。
フェルミウムの主な用途
フェルミウムは極微量しか合成できず、実用的な用途は存在しません。
現在の主な利用は、以下のような基礎研究に限定されています:
- 超重元素の合成に関する反応メカニズム研究
- アクチニド系列の化学的傾向・周期性の解析
- 核分裂挙動や崩壊モードの研究
フェルミウムの生成方法
フェルミウムは以下のような多段階の中性子捕獲とベータ崩壊の連鎖反応によって人工的に生成されます:
- プルトニウムやウランに大量の中性子を照射して、キュリウムやカリホルニウムまで合成
- それらにさらに中性子照射を行い、アインスタイニウム(Es)へ
- アインスタイニウムが中性子を捕獲してフェルミウムが生成される
通常の原子炉では限界があるため、高フルエンス中性子源(HFIRなど)や過去の核実験に依存した例もあります。
フェルミウムを含む化合物
フェルミウムは主に+3価の酸化状態で安定し、ランタノイドや他のアクチニドと似た化合物を形成します。
その量が極めて限られるため、化学的なデータは少ないものの、以下のような化合物が確認されています:
- FmCl₃(塩化フェルミウム): 無水塩または水和物として知られる
- Fm₂O₃(酸化フェルミウム): 理論的に予測されており、他のアクチニド酸化物と同様の結晶構造をもつと推定
いずれもトレーサー量での操作に限定され、光学・電気的な物性評価は行われていません。
フェルミウムに関する研究事例
フェルミウムに関する研究は、超重元素化学や核科学において重要です:
- アクチニド化学の体系化: Fmを含む元素群における錯体形成・イオン半径の比較研究
- 質量分析: α崩壊スペクトルや崩壊系列の解析による核構造の解明
- 元素合成反応の理解: 中性子捕獲・β崩壊経路の再構築によるアクチニド拡張
- 超重元素標的: Fmを標的核として用いた衝突実験により、より重い元素の合成に貢献
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