スカンジウム(Scandium, Sc)は、元素記号Sc、原子番号21の化学元素です。周期表の第4周期、第3族に属する遷移金属です。
スカンジウムの基本情報
和名 | スカンジウム |
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英名 | Scandium |
語源 | 発見者の祖国のラテン語名 (calcis) |
元素記号 | Sc |
原子番号 | 21 |
原子量 | 44.96 |
常温(25℃)での状態 | 固体(金属) |
色 | 銀白色 |
密度 | 2.989 g/cm3(0℃) |
融点 | 1539℃ |
沸点 | 2831℃ |
発見者 | ニルソン(スウェーデン)[1879年] |
含有鉱物 | ユークセン石 |
スカンジウムの主な特徴
- 遷移金属元素で、周期表では第3族に属す
- 銀白色の金属で、軽量・高強度・耐腐食性に優れ、航空宇宙分野などで注目されている
- 一般には希少金属(レアメタル)として扱われ、化学的性質は希土類元素(ランタノイド)に類似している
- 酸化数は +3 が主で、水酸化物や塩を形成する
- 自然界では単体としては存在せず、スカンジウム含有鉱石から得られる
スカンジウムの歴史
発見
スカンジウムは1879年、スウェーデンの化学者ラーズ・ニルソンによって、ユークセン鉱(euxenite)から酸化物(Sc₂O₃)として分離されました。
これは、かつてドミトリ・メンデレーエフが予言していた元素「エカホウ素」に該当すると後に確認されました。
名前の由来
スカンジウム(Scandium)の名称は、ニルソンの出身地であるスカンディナヴィア(Scandinavia)に由来します。
スカンジウムの主な用途
スカンジウムはその合金特性と発光特性から、さまざまな分野で利用されています:
- 航空機用合金: アルミニウム-スカンジウム合金は軽量かつ高強度で、航空機やロケット部品に使用
- スポーツ用品: 高強度・軽量を活かして自転車フレームやゴルフクラブに利用
- 照明用ランプ: スカンジウム添加水銀ランプ(HIDランプ)は高輝度で演色性に優れる
- 電子材料: ペロブスカイト構造の酸化物材料(例:Sc-doped BaTiO₃)などで研究中
- 核融合材料研究: 軽金属材料として、構造材への応用が検討されている
航空宇宙産業
アルミニウム-スカンジウム合金は高強度と耐腐食性を持ち、航空機やミサイルの部品に使用されます。
スポーツ用品
スカンジウムを含むアルミニウム合金は、軽量で高強度なため、自転車フレームや野球バットなどのスポーツ用品に利用されます。
照明
スカンジウムはメタルハライドランプに使用され、高輝度の光を提供します。特にテレビや映画の照明に利用されます。
電気機器
スカンジウム酸化物は、電子工業において高温での安定性と高誘電率を持つため、電子機器の材料として利用されます。
スカンジウムの生成方法
スカンジウムは自然界では非常に希少であり、以下のような方法で製造・精製されます:
- 鉱石からの抽出: サーライト(thortveitite)やユークセン鉱などのレアアース鉱から分離
- 溶媒抽出・イオン交換法: 他の希土類元素と分離して高純度のSc塩を得る
- 金属の還元: ScF₃ や ScCl₃ をカルシウムや金属ナトリウムで還元して金属Scを得る
鉱石
スカンジウムは地殻中に広く分布していますが、商業的に重要な鉱床は限られています。主要な鉱石にはタルナク鉱やユークセン鉱があります。
精製方法
スカンジウムの精製は主に溶媒抽出やイオン交換法を用います。スカンジウム酸化物を得た後、カルシウムなどで還元して金属スカンジウムを製造します。
スカンジウムを含む化合物
スカンジウムは安定な+3価の化合物を形成し、水溶性・酸性度・錯形成能において特徴を持ちます:
- 酸化スカンジウム(Sc₂O₃): 白色粉末。セラミックスや蛍光体原料に利用
- 塩化スカンジウム(ScCl₃): 無水物は空気中で加水分解されやすい
- スカンジウム錯体: 有機配位子と結合し、触媒や光学材料の研究に活用
- Sc-dopedセラミックス: 機械的強度やイオン伝導性を向上させる
スカンジウムの化学的性質は、3価のイオンであるSc3+によってほぼ完全に支配されている。下表のM3+イオンの半径は、スカンジウムイオンの化学的性質がアルミニウムイオンよりもイットリウムイオンと共通点が多いことを示している。この類似性のためもあり、スカンジウムはランタニド類似元素に分類されることが多い。
酸化物および水酸化物
酸化物Sc2O3および水酸化物Sc(OH)3は両性である。
α-およびγ-ScOOHは、水酸化アルミニウムの酸化物と同構造である。Sc3+
の水溶液は加水分解により酸性となる。
ハロゲン化物と擬ハロゲン化物
X=Cl、Br、Iのハロゲン化物ScX3は水に非常に溶けるが、ScF3は溶けない。つのハロゲン化物すべてにおいてスカンジウムは6配位である。ハロゲン化物はルイス酸であり、例えば、ScF3は過剰のフッ化物イオンを含む溶液に溶解して[ScF6]3-を形成する。配位数6はSc(III)の典型的な配位数である。より大きなY3+イオンやLa3+イオンでは、配位数8や9が一般的である。三フッ化スカンジウムは有機化学のルイス酸触媒として使用されることもある。
有機誘導体
主な記事: 有機スカンジウム化学
スカンジウムはシクロペンタジエニル配位子(Cp)を持つ一連の有機金属化合物を形成しており、ランタノイドの挙動に似ている。一例として、塩素架橋二量体である[SCCp2Cl]2や、ペンタメチルシクロペンタジエニル配位子の関連誘導体が挙げられる。
珍しい酸化状態
+3以外の酸化状態のスカンジウムを特徴とする化合物は稀であるが、よく特徴づけられている。青黒い化合物CsScCl3は最も単純なものの一つである。この物質は、スカンジウム(II)中心間の広範な結合を示すシート状の構造をとる。スカンジウム水素化物は、Sc(II)の塩水和物ではないようであるが、よく理解されていない[6]。ほとんどの元素で観察されるように、二原子のスカンジウム水素化物が、気相の高温で分光学的に観察されている[5]。
より低い酸化状態(+2、+1、0)も有機スカンジウム化合物で観測されている。
スカンジウムに関する研究事例
スカンジウムに関する研究は、材料工学、発光材料、電池材料など多岐にわたります:
- スカンジウム添加アルミニウム合金: 粒成長抑制による高強度材の開発
- 固体酸化物燃料電池(SOFC): Sc-stabilized ZrO₂ による高伝導性電解質の設計
- 蛍光体材料: Sc₂O₃ を基材とした発光性材料の開発
- 希土類代替材料: ランタノイドの価格高騰に対応する代替戦略
- 超音波デバイス: ScAlN系圧電材料による高性能デバイスの研究
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