比較問題で点を落とす原因は、「知識がない」よりも「判断の順番が固定されていない」ことが多い
このページは、pKa・安定性・反応性の比較を“同じ手順”で処理できるように、解法フレームをテンプレ化する

この記事でできること

  • pKa比較(酸塩基平衡)を一発判定できる
  • 中間体・共役塩基の安定性を「共鳴→誘起→混成→立体」で説明できる
  • SN1/SN2/E1/E2の反応性比較を、条件つきで誤判定しない
  • 典型の引っかけ(強塩基=強求核、OHは良い脱離基、など)を回避できる

先に結論(比較問題の万能テンプレ)

比較問題はこの順で見るだけで安定する

  1. 何を比較しているかを明確化(酸性度?塩基性?安定性?速度?主生成物?)
  2. 比較対象の「変化後」を書く(酸性度なら共役塩基、SN1ならカチオン、SN2なら遷移状態など)
  3. 安定性の4本柱で判定
    • 共鳴(分散できるほど安定)
    • 誘起効果(電荷を薄めるほど安定、距離で弱まる)
    • 混成(負電荷はs性が高いほど安定:sp > sp2 > sp3)
    • 立体(混み合いは不利:特にSN2・塩基の接近)
  4. 条件(溶媒・温度・脱離基)で最終調整(ここを最後に回す)

比較問題のタイプ別フレーム

タイプA:酸性度(pKa)比較

判断は「酸そのもの」ではなく「共役塩基の安定性」
進む/進まないは「pKaが大きい酸(弱酸)がある側に寄る」

チェックリスト

  • 共鳴で負電荷が分散できるか
  • 負電荷が乗る原子は電気陰性度が高いか(O, Nなど)
  • 誘起効果(−I)が近くにあるか
  • 混成(spが最も酸性が高くなりやすい)

タイプB:塩基性比較

塩基性は「プロトンを取った後(共役酸)」で見る
乱暴に言うと、塩基が安定すぎるほど塩基性は弱い(電子を渡したがらない)

チェックリスト

  • 孤立電子対が共鳴で“使えない”状態になっていないか(例:アミド)
  • 電子求引基が近くにあり、塩基が弱体化していないか(−Iで電子密度が下がる)
  • 溶媒で塩基が溶媒和されすぎていないか(プロトン性溶媒は陰イオンを弱めやすい)

タイプC:中間体の安定性比較(カチオン・アニオン・ラジカル)

試験はほぼこれ

  • 共鳴安定化できるか(ベンジル・アリル)
  • カチオン:置換で安定(超共役)しやすい
  • アニオン:電気陰性度・共鳴・s性で安定しやすい
  • ラジカル:一般に置換で安定(ただし共鳴は最強)

タイプD:反応性比較(SN1/SN2/E1/E2)

まず基質(級数)

  • SN2:メチル > 1級 > 2級 >> 3級(ほぼ不可)
  • SN1/E1:3級 > 2級 >> 1級(例外:ベンジル・アリル)
  • E2:1級でも2級でも3級でも起こりうる(強塩基・立体で変動)

次に溶媒と試薬

  • 極性プロトン性(ROH, H2O):SN1/E1寄り、SN2は弱まりやすい
  • 極性非プロトン性(DMSO, DMF, MeCN, アセトン):SN2/E2寄り
  • 強塩基・かさ高い:E2へ寄せやすい(2級・3級で顕著)
  • 弱求核(溶媒が求核):それでも進むならSN1寄り

脱離基は最後に必ず確認

  • 良い脱離基:I, Br, Cl, OTs など
  • 悪い脱離基:OH, OR(そのままだと事故りやすい)

頻出の“引っかけ”パターン集

引っかけ1:強塩基=強求核(とは限らない)

かさ高い塩基は攻撃(SN2)より引き抜き(E2)へ寄りやすい
溶媒がプロトン性だと陰イオン求核剤は溶媒和され、求核性が落ちやすい

引っかけ2:OHは脱離基として強い(×)

OH−として出ていくのは不利
酸でプロトン化してH2Oにする、またはOTs化などで改善する

引っかけ3:2級はSN2(決め打ち)

2級は条件依存
非プロトン性+強求核ならSN2寄り
強塩基・高温ならE2寄り
プロトン性+弱求核ならSN1/E1寄り

引っかけ4:共鳴は書けるのに“寄与”が判断できない

「全部同じ重み」ではない
八電子則、電荷分離、電荷の乗る原子(Oに−、Cに+が比較的有利)で主要寄与を決める

比較問題の演習(よく出るセット)

問題はすべて「理由を1行」で答える練習が最短
迷ったら「共役塩基(または中間体)を描いて、安定化要因を1つ言う」

問題1|酸性度:どちらが強酸?(a)エタノール ROH(b)酢酸 RCO2H

解答:
(b)酢酸が強酸
理由:共役塩基(カルボキシラート)が共鳴で負電荷を2つのOに分散できて安定

問題2|酸性度:どちらが強酸?(a)フェノール PhOH(b)シクロヘキサノール CyOH

解答:
(a)フェノールが強酸
理由:共役塩基(フェノキシド)の負電荷が芳香環へ共鳴分散できる;アルコキシドは分散できない

問題3|酸性度:どちらが強酸?(a)末端アルキン RC≡CH(b)アルケン RCH=CH2

解答:
(a)末端アルキンが強酸
理由:共役塩基がsp混成でs性が高く、負電荷が安定化される(sp > sp2)

問題4|中間体安定性:どちらが安定?(a)ベンジルカチオン PhCH2+(b)tert-ブチルカチオン (CH3)3C+

解答:
(a)ベンジルカチオンが安定
理由:共鳴で正電荷が芳香環へ分散できる(共鳴は置換による超共役より強い)

問題5|SN1/SN2:どちらが速い?(同じ求核剤・同じ溶媒)(a)CH3Br(b)tert-ブチルブロミド

解答:
SN2なら(a)が圧倒的に速い(bはほぼ不可)
SN1なら(b)が起こりやすい(aはカチオン不安定で不可)
理由:SN2は立体、SN1はカチオン安定性が支配

問題6|SN2の比較:どちらが速い?(a)1-ブロモプロパン(b)2-ブロモプロパン(強求核・非プロトン性溶媒)

解答:
(a)が速い
理由:SN2は立体障害が小さいほど速い(1級 > 2級)

問題7|E2 vs SN2:2級基質に強塩基を入れた。温度を上げるとどちらが増えやすい?

解答:
E2が増えやすい
理由:脱離は生成物分子数が増えやすくエントロピー的に有利になり、温度上昇で相対的に有利になることが多い

問題8|脱離基:どれが最も良い脱離基?(a)OH(b)Cl(c)OTs

解答:
(c)OTs
理由:脱離後のTsO−が共鳴で強く安定化された弱塩基だから(OHは強塩基で悪い脱離基)

問題9|共鳴寄与:次の共鳴構造で寄与が大きいのはどちら?(a)電荷分離が小さい(b)電荷分離が大きい

解答:
(a)電荷分離が小さい方
理由:不要な電荷分離は一般にエネルギーを上げ、安定性を下げる

問題10|E2の立体:E2で最重要な配向条件を一言で。

解答:
β-Hと脱離基がanti-periplanar(anti配向)に並ぶ必要がある

仕上げ:比較問題の“答案テンプレ”

比較問題は、解答をこの型にすると失点が減る

  • 結論:Aが○○(強い/安定/速い)
  • 理由:共役塩基(または中間体/遷移状態)が「共鳴/誘起/混成/立体」でより安定
  • 条件がある場合:溶媒(プロトン性/非プロトン性)や温度、脱離基で補足

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