※本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)が含まれています。

ゲルマニウムに関する情報をまとめました。

元素図鑑

最初のトランジスタはゲルマニウムでできていた

いま半導体といえばシリコンです。ところが半導体の歴史はゲルマニウムから始まりました。世界最初のトランジスタはゲルマニウムで作られ、初期のダイオードやトランジスタはこの元素が主役でした。

では、なぜ主役を降りたのか。性能が悪かったからではありません。電子の動きやすさではゲルマニウムのほうが優れています。負けた理由は別のところにありました。

ゲルマニウム Ge ケイ素 Si
電子の動きやすさ 優れている やや劣る
酸化膜 酸化物が水に溶けてしまう→絶縁膜に使えない 二酸化ケイ素の緻密な膜ができる→回路を仕切る絶縁層になる
熱に対する強さ 温度が上がると漏れ電流が増え、動作が不安定になる 高温でも安定に動く
原料の入手 鉱石の副産物として少量しか取れない 砂から取れる。地殻にもっとも豊富な元素のひとつ
価格 高い 安い
決定的だったのは「酸化膜」です。集積回路を作るには、素子と素子を電気的に仕切る絶縁層が必要です。ケイ素は表面を酸化させるだけで優秀な絶縁膜ができるのに対し、ゲルマニウムの酸化物は水に溶けてしまい使えません。素子単体の性能ではなく、「大量に作り込めるか」で勝負が決まったのです。

それでもゲルマニウムは消えなかった

汎用の半導体からは退きましたが、ケイ素では代えられない場所が残りました。ゲルマニウムの長所がそのまま効く用途です。

用途 ゲルマニウムを使う理由
シリコンゲルマニウム(SiGe) ケイ素にゲルマニウムを混ぜると電子がより速く動く→高周波の通信回路に使う。ケイ素の製造ラインをそのまま使えるのが強み
赤外線レンズ 可視光は通さないが赤外線をよく通す→サーモグラフィーや赤外線カメラのレンズに使う
光ファイバー 石英に加えて屈折率を調整する→光を芯に閉じ込める
重合反応の触媒 ペットボトルの原料となる樹脂の重合に使われる
太陽電池(宇宙用) 複数の半導体を積み重ねた高効率の電池の土台になる
「可視光を通さず赤外線を通す」というのは、半導体のバンドギャップで説明できます。光のエネルギーがバンドギャップより大きいと吸収され、小さいと通り抜けます。ゲルマニウムのバンドギャップは可視光より小さく、赤外線より大きい——だから可視光は吸収し、赤外線は透過させるのです。見た目は金属光沢のある不透明な板なのに、赤外線カメラ越しには透明に見えます。

ゲルマニウムの基本情報

和名 ゲルマニウム
英名 Germanium
語源 発見者の祖国ドイツの古名ゲルマニア (Germania)
元素記号 Ge
原子番号 32
原子量 72.63
常温(25℃)での状態 固体
色 灰白色
臭い ー
密度 5.323 g/cm3(20℃)
融点 938.3℃
沸点 2833℃
発見者 ウィンクラー(ドイツ)[1885年]
含有鉱物 硫ゲルマニウム銀鉱(アージロード鉱)

ゲルマニウムの主な特徴

  • 典型元素で、周期表第14族に属す
  • シリコンと同様に半導体特性を持つ灰白色の金属様元素であり、光電変換や赤外線技術の分野で重要な役割を果たす
  • 高屈折率・低分散性という特性を持ち、光通信や赤外線光学機器においても重要
  • 地殻中には比較的少量しか存在せず、主に他の鉱石から副産物として得られる

ゲルマニウムの歴史

発見

ゲルマニウムは1886年、ドイツの化学者クレメンス・ウィンクラーによって新鉱物アルジャナイトから単離されました。

これはドミトリ・メンデレーエフが周期律から予言していた「エカ・シリコン」に相当する元素であり、発見当初からその予測と一致した性質を示したことで知られています。

名前の由来

「ゲルマニウム(Germanium)」という名前は、発見者ウィンクラーの祖国であるドイツ(Germany)に由来しています。

これは国家名にちなんで命名された数少ない元素の一つです。

ゲルマニウムの主な用途

ゲルマニウムは以下のような用途で活用されています。

  • 半導体: トランジスタやダイオード、太陽電池の材料(Ge単体やSi-Ge合金)
  • 光ファイバー: 高屈折率のクラッド材として光通信に利用
  • 赤外線光学機器: 赤外線カメラ、熱画像装置、光学レンズ(高透明性)
  • 触媒: ポリエチレン重合などで使われる触媒材料の成分
  • 健康食品: 有機ゲルマニウムが免疫賦活作用を持つとされ、サプリメントとして市販(ただし科学的根拠には議論あり)

半導体

シリコン–ゲルマニウムを半導体として使用するアイデアは、バーニー・メイヤーソンによって提唱されました。その実現を数十年間遅らせた課題は、ゲルマニウム原子がシリコン原子よりも約4%大きいという点でした。シリコントランジスタが製造される通常の高温下では、結晶シリコンにこれらの大きな原子を追加することで生じる応力が、数多くの欠陥を引き起こし、その結果得られる材料は実用上無用なものとなっていました。メイヤーソンと共同研究者は、当時信じられていた高温処理の必要性が誤りであることを発見し、十分な低温でSiGeの成長を可能にしました。これにより、実用上ほぼ欠陥が生じないSiGe材料が製造可能になりました。さらに、これらのSiGe材料は、従来の低コストシリコン加工ツールセットを使用して高性能電子機器に製造できることが示されました。より重要なのは、その結果得られたトランジスタの性能が、当時伝統的なシリコンデバイスが到達できると考えられていた限界を遥かに上回ったことです。これにより、WiFiのような低コストの商業用無線技術の新世代が実現しました。SiGeプロセスはシリコンCMOS製造と類似のコストを実現し、ガリウムヒ素などの他のヘテロ接合技術よりも低コストです。最近、MOVPE法によるGe含有薄膜の堆積において、ゲルマンの代替としてより安全な液体前駆体として有機ゲルマニウム前駆体が検討されています。

SiGeファウンドリサービスは、複数の半導体技術企業によって提供されています。AMDはIBMとの共同開発を発表し、65nmプロセスをターゲットとしたSiGeストレスドシリコン技術の開発を進めています。TSMCもSiGe製造能力を販売しています。

2015年7月、IBMは7nmシリコン・ゲルマニウムプロセスを使用したトランジスタの動作サンプルを作成したと発表し、現行プロセスと比較してトランジスタの数が4倍に増加する可能性を提示しました。

ゲルマニウムの生成方法

ゲルマニウムは自然界に単体としては存在せず、以下のような方法で得られます。

  • 副産物としての回収: 亜鉛鉱石(スファレライト)や石炭灰、銅鉱石の精錬過程から回収
  • 精製工程: 塩化物や酸化物として抽出 → 還元 → 蒸留によって高純度Geを得る
  • 結晶育成: 高純度単結晶ゲルマニウムはチョクラルスキー法などで育成され、半導体用途に供される

ゲルマニウムを含む化合物

ゲルマニウムは主に+4の酸化数をとる化合物を形成します。

  • GeO2(二酸化ゲルマニウム): 無色粉末。光学材料や触媒、ガラス添加剤に使用
  • GeCl4(四塩化ゲルマニウム): 揮発性の液体。光ファイバーの製造に用いられる
  • 有機ゲルマニウム化合物: Ge-CH結合をもつ化合物(例:Ge-132)は医療用途や研究に利用されることがある

ゲルマニウムに関わる研究事例

ゲルマニウムは電子材料や医用材料、光学技術などの分野で研究が進められています。

  • Si-Ge半導体: 高速トランジスタやフォトニクスへの応用研究が進展中
  • 高効率太陽電池: Ge基板を用いた多接合型太陽電池が航空宇宙分野で注目
  • 赤外線光学材料: Geレンズの波長選択性や耐久性の向上に関する研究
  • 放射性ゲルマニウム: Ge-68/Ge-69同位体を用いた核医学・PET診断用の開発
  • 有機Ge化合物: 抗がん作用や免疫調整作用の検討、毒性評価の研究が継続中

Si-Ge半導体

SiGe(シリコン・ゲルマニウム)は、シリコンとゲルマニウムのモル比が任意の合金であり、分子式がSi1-xGexの形式を有する。これは、集積回路(IC)におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタの半導体材料として、またはCMOSトランジスタの応力誘起層として広く使用されている。IBMは1989年にこの技術を主流の製造プロセスに導入しました。この比較的新しい技術は、混合信号回路やアナログ回路のIC設計・製造において新たな可能性を提供しています。SiGeはまた、高温応用(>700 K)向けの熱電材料としても使用されています。

よくある質問

最初の半導体がゲルマニウムだったのに、なぜシリコンに替わったのですか?

性能ではなく酸化膜が決定的でした。電子の動きやすさではゲルマニウムのほうが優れていますが、その酸化物は水に溶けてしまい絶縁膜として使えません。ケイ素は表面を酸化させるだけで二酸化ケイ素の緻密な膜ができ、回路を仕切る絶縁層になります。さらにケイ素は高温でも安定で、砂から安く大量に取れます。素子単体の性能ではなく、大量に作り込めるかで勝負が決まったのです。

ゲルマニウムが赤外線レンズに使われるのはなぜですか?

可視光は通さないのに、赤外線はよく通すからです。半導体は、光のエネルギーがバンドギャップより大きいと吸収し、小さいと通り抜けさせます。ゲルマニウムのバンドギャップは可視光より小さく赤外線より大きいため、可視光だけを吸収します。見た目は金属光沢のある不透明な板ですが、赤外線カメラ越しには透明に見えます。

シリコンゲルマニウム(SiGe)は何がうれしいのですか?

ケイ素にゲルマニウムを混ぜると電子がより速く動くため、高周波の通信回路に向きます。しかもケイ素の製造ラインをそのまま使えるという大きな利点があります。ゲルマニウムだけで作り直す必要がないので、ケイ素の安さと量産体制を保ったまま性能を上げられます。