SCIENCE

【元素図鑑】リン P【原子番号15】

リン(Phosphorus, P)は、元素記号P、原子番号15の化学元素です。非金属元素であり、地殻に広く存在し、生物にとって必須の元素です。リンは、通常、白リン、赤リン、黒リンの3つの同素体で知られています。

リンの基本情報

和名 リン
英名 Phosphorus
語源 ギリシャ語「光をもたらすもの(phosphoros)」
元素記号 P
原子番号 15
原子量 30.97
常温(25℃)での状態 固体
赤色(赤リン), 銀白色(白リン) など
密度 1.820 g/cm3 (20℃)
融点 44.2℃(白リン)
沸点 279.9℃(白リン)
発見者 ブラント(ドイツ)[1669年]
含有鉱物 リン灰石

リンの主な特徴

  • 非金属元素で、第15族に属す
  • 自然界では単体では存在せず、リン酸塩(PO₄³⁻)として広く分布している
  • リンは生体に不可欠な元素であり、DNA・RNA、ATP(アデノシン三リン酸)、細胞膜の構成成分として機能する
  • 単体のリンにはいくつかの同素体が存在し、特に白リン(毒性・発火性あり)赤リン(安定)が知られている

リンの歴史

発見

リンは1669年、ドイツの錬金術師ヘンニッヒ・ブラントによって発見されました。彼は尿を蒸発・加熱する過程で、発光性の白い物質(白リン)を得ました。

これは近代化学における最初の人工元素の単離とされています。

名前の由来

元素名「Phosphorus」は、ギリシャ語の「phōs(光)」+「phoros(運ぶ)」に由来し、「光を運ぶ者」という意味です。

白リンが暗闇で発光する(化学発光)性質にちなんで名付けられました。

リンの主な用途

リンは農業・工業・電子材料など、幅広い分野で使用されています:

  • 肥料: リン酸カルシウム(過リン酸石灰)など、植物の成長に不可欠
  • 洗剤: かつてはリン酸塩が使用された(現在は環境規制あり)
  • マッチ: 赤リンは安全マッチの側薬として利用
  • 金属精錬: リンは脱酸剤として鋼の製造に使用
  • 半導体: n型ドーピング用にリンが用いられる(Si基板)
  • 食品添加物: リン酸ナトリウムなどはpH調整剤として利用

肥料

リン酸塩は肥料の主要成分であり、植物の成長に不可欠です。スーパーリン酸やリン酸アンモニウムなどの形で使用されます。

工業化学品

リン酸

食品添加物、洗剤、金属処理などに使用されます。

赤リン

マッチの摩擦面、花火、爆薬の材料として使用されます。

金属冶金

銅や青銅のリン化合物は、合金の硬化剤や脱酸剤として利用されます。

医薬品および農薬

リン化合物は、医薬品や農薬の重要な成分です。

リンの生成方法

リンは自然界ではアパタイト(リン酸カルシウム鉱物)として存在し、以下のようにして得られます:

  • アパタイトの還元反応: アパタイト鉱石とコークス、シリカを電気炉で加熱 → 白リン蒸気を生成
  • 冷却・回収: 白リンは冷却されて液化・固化される
  • 赤リンの製造: 白リンを加熱または光照射で赤リンに変換

リンを含む化合物

リンは酸化数−3から+5までの広い範囲で化合物を形成します。代表的なものは以下のとおりです:

  • リン酸(H₃PO₄): 食品添加物・肥料の主成分
  • リン化水素(PH₃): 無色で有毒な気体、農薬や半導体用途
  • 五酸化二リン(P₂O₅): 脱水剤やリン酸の原料
  • リン酸塩(Na₃PO₄, Ca₃(PO₄)₂など): セラミックス・ガラス・洗剤などに使用
  • 有機リン化合物: 殺虫剤・化学兵器としても知られる(例:サリン)

リンに関する研究事例

リンは生化学から材料科学まで多岐にわたる研究対象となっています:

  • リン循環の環境影響: 河川・湖沼の富栄養化に関する研究
  • 有機リン分子の合成: 医薬品・触媒・農薬設計への応用
  • 黒リン(ブラックフォスファリン): グラフェン類似の2次元材料として注目
  • ATP関連代謝経路: 生体内のエネルギー伝達機構の解明
  • 次世代肥料開発: 土壌でゆっくり放出されるリン化合物の設計

 

【元素マニア必見】元素本おすすめランキング

第1位

 

第2位

第3位