SCIENCE

【元素図鑑】ホウ素 B【原子番号5】

ホウ素に関する情報をまとめました。

ホウ素の基本情報

和名 ホウ素
英名 Boron
語源 アラビア語 「白い(bouraq)」
元素記号 B
原子量 10.81
常温(25℃)での状態 固体
黒灰色
臭い
密度 2.340 g/cm3 (β型固体, 20℃)
融点 2077℃
沸点 3870℃
発見者 ゲイ=リュサック(フランス), テナール(フランス), デービー(イギリス)(1797年)
含有鉱物 コールマン石, ウレクサイト

ホウ素の主な特徴

  • 半金属元素で、非金属的な性質を多く持つ
  • 常温では黒色または茶色の結晶または粉末状で存在する
  • 硬度が非常に高く、ダイヤモンドに次ぐ硬さを示す同素体も存在する
  • 電気伝導性は低く、熱伝導性に優れた特性を持つため、電子材料・セラミックス・中性子吸収材として利用されている

ホウ素の歴史

発見

ホウ素は1808年にフランスの化学者ジョゼフ・ルイ・ゲイ=リュサックとルイ=ジャック・テナール、イギリスのハンフリー・デービーらによってほぼ同時期に発見されました。
ボラックス(ホウ砂)から酸を取り出し、金属ナトリウムで還元することにより単体を得ましたが、純粋なホウ素の単離にはその後の技術進歩が必要でした。

名前の由来

「ホウ素(Boron)」という名称は、主な鉱物源である「ホウ砂(Borax)」に由来します。Borax はアラビア語の「buraq(光る)」に由来するとされます。

ホウ素の主な用途

ホウ素は様々な産業分野で重要な役割を果たしています:

  • ホウ素繊維: 高強度で軽量な複合材料。航空機やスポーツ用品に使用
  • ホウ素系セラミックス: ホウ化ホウ素(B4C)や窒化ホウ素(BN)は耐熱性・耐摩耗性に優れた材料
  • 中性子吸収材: 原子炉において中性子を吸収する性質を利用(例:ホウ酸水)
  • 農業: ホウ素は植物にとって必須微量元素であり、肥料成分として重要
  • ガラス産業: ホウケイ酸ガラスは熱膨張が小さく、理化学機器や耐熱容器に使用

 ホウ素の生成方法

工業的には以下の方法でホウ素が得られます:

  • 酸化ホウ素のマグネシウム還元: B2O3 + 3Mg → 2B + 3MgO
  • ホウ素ハロゲン化物の水素還元: BCl3 + 3/2H2 → B + 3HCl
  • ホウ酸鉱石からの精製: ボラックス(Na2B4O7·10H2O)を加熱・処理してホウ素化合物へ変換

ホウ素を含む化合物

ホウ素は典型的には3価の化合物を形成し、電子不足なためルイス酸として機能することが多いです。主な化合物には次のようなものがあります:

  • ホウ酸(H3BO3): 抗菌性や緩衝作用を持ち、目薬や工業薬品に使用
  • 四フッ化ホウ素(BF4): 有機反応におけるカウンターアニオンや触媒として有用
  • 三塩化ホウ素(BCl3): 有機合成における脱保護剤、半導体材料の前駆体
  • ホウ化ホウ素(B4C): 超硬材料、装甲材料、研磨剤に用いられる
  • 窒化ホウ素(BN): 六方晶系ではグラファイトに似た構造を持ち、電気絶縁性が高く、潤滑剤や熱管理材料として使用

ホウ素に関わる研究事例

ホウ素はその独特な電子構造や多様な化学結合により、以下のような研究で注目されています:

  • ホウ素クラスター化学: BnHn型クラスターの構造・芳香族性に関する理論・実験研究
  • 有機ホウ素化合物の触媒反応: 例えば鈴木–宮浦クロスカップリング反応におけるボロン酸の使用
  • BNナノチューブ・ナノシートの材料科学: グラフェンに類似した構造で、高温耐性・絶縁性が強調される
  • 中性子捕捉療法(BNCT): 癌治療において選択的に腫瘍にホウ素を取り込み、中性子照射で局所的破壊を狙う最先端治療法
  • 宇宙環境におけるセラミック耐久性研究: B4CやBN材料の極限環境下での耐熱性・耐酸化性評価

BN nanotube

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