混成軌道は、暗記すると苦しいが、直感で掴むと一生使える
・分子の形(結合角)
・π結合の有無(反応点、共鳴、芳香族)
・酸性度(末端アルキンが酸性)
・SN2の立体、カルボニルの反応性
まで、一気に説明できる

この記事は、sp/sp2/sp3を「見た瞬間に判定できる」ことをゴールに、必要最小限の理屈を“使える形”に落とし込む

この記事でできること

  • sp/sp2/sp3の判定を「電子領域(ドメイン)」で即決できる
  • 各混成の形(直線/平面三角/正四面体)と結合角をセットで言える
  • σ結合とπ結合の役割を混成から説明できる
  • s性と酸性度(末端アルキンが酸性)を直感で説明できる

先に結論(これだけで判定できる)

混成は「電子領域の数」で決まる

電子領域(電子ドメイン)=その原子のまわりの
・結合(単/二/三は1つとして数える)
・孤立電子対(1組=1つ)
の合計

  • 電子領域 2 → sp(直線、180°)
  • 電子領域 3 → sp2(平面三角、120°)
  • 電子領域 4 → sp3(正四面体、109.5°)

π結合の数は「混成していないp軌道の数」で決まる

  • sp:未混成pが2本 → πが最大2本(例:C≡C)
  • sp2:未混成pが1本 → πが最大1本(例:C=C、C=O)
  • sp3:未混成pが0本 → πは作れない(飽和)

1. そもそも混成軌道って何?(最短理解)

混成軌道は「結合の方向性を作るための、軌道の混ぜ合わせ」
重要なのは、軌道の式ではなく
・どんな形(角度)になるか
・π結合を作れるp軌道が残るか
の2点

2. σ結合とπ結合を混成で整理

σ結合

原子核を結ぶ線上で、軌道が正面衝突してできる結合
混成軌道は、このσ結合の“方向”を決める

π結合

p軌道どうしの横向き重なりでできる結合
だから、π結合を作るには「混成されずに残ったp軌道」が必要

直感

  • sp3:pが残らない → πが作れない → 飽和
  • sp2:pが1本残る → πが1本作れる → 二重結合/芳香環へ
  • sp:pが2本残る → πが2本作れる → 三重結合へ

3. 判定法:電子領域(ドメイン)カウント

ドメインの数え方(超重要)

  • 単結合=1ドメイン
  • 二重結合=1ドメイン(結合は2本でも“領域”は1)
  • 三重結合=1ドメイン
  • 孤立電子対1組=1ドメイン

例:よく出る判定

  • エタンのC:結合4本 → 4ドメイン → sp3
  • エチレンのC:結合3領域(C–H×2、C=C)→ 3ドメイン → sp2
  • アセチレンのC:結合2領域(C–H、C≡C)→ 2ドメイン → sp
  • カルボニル炭素:3ドメイン(R–C、C=O、C–R)→ sp2
電子領域カウントでsp/sp2/sp3を判定する模式図(2/3/4ドメイン)(プレースホルダー)
図:ドメイン数→混成の対応(差し替え推奨)

4. 形と結合角をセットで覚える(暗記最小)

sp:直線(180°)

電子領域が2つしかないので、反発を最小にするには一直線
例:C≡C、−C≡N、CO2のC

sp2:平面三角(120°)

電子領域が3つ → 同一平面で120°が最も離れる
例:C=C、カルボニル(C=O)、芳香環の各C

sp3:正四面体(109.5°)

電子領域が4つ → 3次元的に最も離れる配置が正四面体
例:アルカン、アルコールのC、アミンのN(ただし孤立電子対で角度はやや小さくなる)

5. s性(s-character)で直感が完成する

s性が高いほど、電子は核に近い(=低エネルギーで安定)

s性の比率

  • sp:50%
  • sp2:33%
  • sp3:25%

だから「負電荷」はsp炭素の方が安定

末端アルキン(RC≡CH)が比較的酸性なのはここ
Hが取れるとアセチリド(RC≡C−)になり、負電荷がsp炭素上で安定化される
直感として

  • sp(核に近い)に負電荷があるほど安定 → 酸性度が上がる
  • sp3(核から遠い)に負電荷は不安定 → 酸性度が低い

6. 有機で頻出の“混成あるある”

カルボニル(C=O)はsp2

炭素も酸素も基本sp2として扱うと、平面性や反応点(求電子的C)が理解しやすい

芳香環のCは全部sp2

平面性とπ共役が成立する前提

カルボカチオンはsp2(平面)

だからSN1は平面カチオンを経由し、ラセミ化傾向になる(入口理解として重要)

アニオンは“混成が変わることがある”

例:カルボニル隣のエノラートは共鳴でsp2的に扱う
ここは共鳴とセットで理解すると強い

よくあるミスと対策

二重結合を2ドメインとして数える

これは誤り
電子領域は「結合の本数」ではなく「領域」なので、二重結合も三重結合も1ドメイン

sp2は必ず二重結合、と思い込む

sp2は「3ドメイン」
例:カルボカチオン(3結合・孤立電子対なし)もsp2で平面になる

混成を“丸暗記のラベル”で終わらせる

混成は
・形(角度)
・πを作れるか
・s性(酸性度・安定性)
に直結する道具として使うと一気に楽になる

練習問題(演習)

問題1|次の中心原子の混成を答えてください。(a)エタン CH3–CH3 のC(b)エチレン CH2=CH2 のC(c)アセチレン HC≡CH のC

解答:
(a)sp3(4ドメイン)
(b)sp2(3ドメイン:C–H×2とC=C)
(c)sp(2ドメイン:C–HとC≡C)

問題2|カルボニル炭素(C=OのC)は一般にsp2です。ドメイン数で説明してください。

解答:
カルボニル炭素の周りは、C=Oが1ドメイン、残り2本のσ結合が2ドメインで合計3ドメイン
したがってsp2(平面三角)になる

問題3|sp/sp2/sp3で、未混成p軌道が残る本数はそれぞれいくつですか?そこからπ結合の最大本数を答えてください。

解答:
sp:未混成pが2本 → πは最大2本
sp2:未混成pが1本 → πは最大1本
sp3:未混成pが0本 → πは作れない

問題4|末端アルキン(RC≡CH)がアルケンより酸性が高い理由を、s性で一言で説明してください。

解答:
末端アルキンの共役塩基(RC≡C−)はsp混成でs性が高く、負電荷が核に近い低エネルギー軌道に乗って安定化されるため

問題5|電子領域(ドメイン)の数え方で、二重結合・三重結合は何ドメインとして数えますか?

解答:
どちらも1ドメイン(結合の本数ではなく“領域”として数える)

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