SCIENCE

縮合剤TCFHとは?有機合成における有用なペプチド結合形成剤

TCFH(Chloro-N,N,N’,N’-tetramethylformamidinium hexafluorophosphate)は、近年注目されている高効率な縮合剤(condensing agent)のひとつで、特にアミド結合形成において有用です。ペプチド合成やカルボン酸とアミンの縮合反応において、従来の縮合剤よりも高い反応性と選択性を示すため、研究や合成の現場で広く利用されています。

TCFHとは

TCFH(N,N,N’,N’-テトラメチルクロロホルムアミドニウムヘキサフルオロリン酸塩)は、カルボン酸などの官能基を活性化し、求核剤との反応を可能にする試薬です。TCFHは、アミド結合の形成やペプチド合成において、カルボン酸をアミンとの反応のために活性化するために一般的に使用されます。

TCFHを用いた縮合

TCFH は、高立体障害のカルボン酸と反応性の低いアミンに対する縮合反応でも高効率・高選択性を発揮し、とくに NMI と併用することで、迅速かつクリーンなアミド化/エステル化反応を実現できる次世代の縮合試薬です。副生成物が水溶性で処理が容易な点や、条件の柔軟性もあり、ペプチド合成や製薬工程での利用に非常に適しています。

TCFH(Chloro‑N,N,N′,N′‑tetramethylformamidinium hexafluorophosphate)は、DCCやHATUなどと並ぶ高性能縮合試薬の一つで、とくにかさ高いカルボン酸や求核性の低いアミン(例:アニリン誘導体)とのアミド結合形成において優れた性能を発揮します。

TCFH は、不活性アミンや立体障害の大きいカルボン酸でも高い収率でアミド化反応を行える点が最大の強みです。特にバリンや保護システインなどのα-立体中心があるアミノ酸や、低反応性なアニリン系基質に対しても反応が進む一方で、ほとんど異性化(エピマー化)が起こらないという利点があります。

この手法はペプチド医薬の候補合成、自動ペプチド合成、スケールアップにも適しており、立体中心の保持(ジアステレオ化の抑制)と反応性の高さ、基質の柔軟性により、実用化に向く縮合剤とされています。さらに、エステル化やチオエステル形成、マクロライド合成にも応用できる汎用性の高さが報告されています

TCFHとNMIの組み合わせ

TCFH を N‑メチルイミダゾール(NMI)と組み合わせた TCFH‑NMI システムは、反応中に N‑アシルイミダゾリウム中間体 を in situ で生成し、高度に反応性のあるアシル化剤として働きます。この組み合わせにより、穏やかな条件、無空気/厳密な無水条件不要、副生成物の水溶性によって簡便な精製が可能な点が評価されています。