STUDY

極性共有結合

極性共有結合(polar covalent bond)は、2つの異なる原子が電子対を共有する際に、共有される電子対が一方の原子に偏って分布する結合のことです。これにより、分子の一部が部分的に正電荷を持ち、別の部分が部分的に負電荷を持つことになります。極性共有結合の形成は、原子の電気陰性度の違いに基づいています。

極性共有結合の特徴

電気陰性度

電気陰性度は、原子が共有電子対を引き寄せる能力を表す尺度です。異なる電気陰性度を持つ2つの原子が結合すると、電子対はより電気陰性度の高い原子に引き寄せられます。

例えば、水分子(H₂O)では、酸素の電気陰性度(約3.44)が水素の電気陰性度(約2.20)よりも高いため、電子対は酸素に引き寄せられ、酸素側に部分的な負電荷が生じます。

双極子モーメント

極性共有結合が存在する分子は、一般に双極子モーメントを持ちます。これは、正電荷と負電荷の中心の間に生じる電気的な分離の度合いを示すベクトル量です。

双極子モーメントは、分子の極性の指標となり、電場中での分子の挙動や相互作用に影響を与えます。

部分電荷(δ⁺、δ⁻)

電気陰性度の高い原子側に部分的な負電荷(δ⁻)、低い原子側に部分的な正電荷(δ⁺)が生じます。

例えば、塩化水素(HCl)では、塩素原子が部分的な負電荷を帯び(δ⁻)、水素原子が部分的な正電荷を帯びます(δ⁺)。

具体例

水(H₂O)

水分子では、酸素と水素の間に極性共有結合が形成されています。酸素が共有電子対を引き寄せるため、酸素に部分的な負電荷が、水素に部分的な正電荷が生じます。

この極性により、水分子は水素結合を形成しやすくなり、水の特有の物理化学的性質(高い沸点、表面張力など)をもたらします。

塩化水素(HCl)

塩化水素分子では、塩素の電気陰性度が高いため、共有電子対は塩素側に偏り、塩素が部分的に負電荷を、水素が部分的に正電荷を帯びます。

この極性により、HCl分子は極性溶媒(例えば、水)によく溶け、酸性度を示します。

極性共有結合と非極性共有結合の違い

極性共有結合

異なる電気陰性度の原子間で形成され、電子対が一方の原子に偏って分布する。

分子内に部分的な電荷の分布が生じ、双極子モーメントを持つ。

非極性共有結合

同じか、ほぼ同じ電気陰性度の原子間で形成され、電子対が均等に分布する。

分子内に電荷の偏りがなく、双極子モーメントを持たない。

まとめ

極性共有結合は、異なる電気陰性度を持つ原子間で共有電子対が一方に偏って分布する結合であり、分子に部分電荷が生じます。これにより、分子は特定の物理化学的性質を持ち、他の分子やイオンとの相互作用に影響を与えます。極性共有結合の理解は、化学結合の多様性や分子の性質を深く理解するための重要な基盤です。