ビニロガス向山アルドール反応(VMAR)は、立体中心とα,β-不飽和カルボニルを同時に導入することにより、サイズの大きなポリケチド合成の有用な反応である。VMARは多くの天然物合成に用いられている。
概要
- 立体中心とα,β-不飽和カルボニル基の同時誘導によって大きなポリケチド部を合成する
- s-trans-シリルジエノールエーテルは高い選択性でアルデヒドと反応する
- ルイス酸としてSnCl4を用いることで、シリルジエノールエーテルが異性化し、高い立体選択性でγ付加体が得られる
- 触媒量の水を添加するで促進される場合もある
歴史
1975年に初めて報告された。その後、天然物の全合成に多く用いられている。
反応機構
実験手順
窒素雰囲気下、ドライジクロロメタンとアルデヒドを加えて撹拌する。-78℃にて、四塩化チタンとシリルジエノールエーテルを加えて撹拌する。-40℃に昇温し、TLCにて原料の消失を確認した後、重曹水と酒石酸カリウムナトリウム水溶液(ロッシェル塩)でクエンチする。
実験のコツ
系中が複雑になりやすいので、TLCでの検出作業に気を付ける。
発展
酢酸型ビニルケテンシリルN,O-アセタールを用いた遠隔不斉誘導
ルイス酸としてSnCl4およびBF3・OEt2を用いると、それぞれO-シリル化5R-および5S-付加体を選択的に得られる。(上図ではOH基が付いている炭素の立体選択性)
Sagawa, Naoya, Haruka Sato, and Seijiro Hosokawa, Organic letters, 2017, 19 (1), 198–201. DOI: 10.1021/acs.orglett.6b03476
応用例
参考文献
1) Teruaki Mukaiyama, Akihiko Ishida, Chem Lett., 1975, 4, 319-322.
2) Casiraghi, Giovanni, Franca Zanardi, Giovanni Appendino, Gloria Rassu, Chemical reviews, 2000, 100 (6), 1929–1972. DOI: 10.1021/cr990247i
3) S.E. Denmark, J.R. Heemstra Jr., G.L. Beutner, Angew Chem Int Ed, 2005, 44, 4682-4698.
4) M. Kalesse, Top Curr Chem, 2005, 244, 43-76.
5) V. Bisai, Synthesis, 2012, 44, 1453-1463.
6) Cordes, Martin, Markus Kalesse, The Vinylogous Mukaiyama Aldol Reaction in Natural Product Synthesis, 1st ed; In Modern Methods in Stereoselective Aldol Reactions, Wiley‐VCH, 2013; pp. 83-154.
7) M. Kalesse, M. Cordes, G. Symkenberga, H.-H. Lu, Nat. Prod. Rep., 2014, 31, 563-594. DOI: 10.1039/c3np70102f
8) Seijiro Hosokawa, Tetrahedron letters, 2018, 59, 77-88. DOI: 10.1016/j.tetlet.2017.11.056
9) Sagawa, Naoya, Haruka Sato, and Seijiro Hosokawa, Organic letters, 2017, 19 (1), 198–201. DOI: 10.1021/acs.orglett.6b03476
10) Naoya Sagawa, Hiroki Moriya, Seijiro Hosokawa, Org. Lett., 2017, 19 (1), 250-253. DOI: 10.1021/acs.orglett.6b03549
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