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【元素図鑑】ダームスタチウム Ds

ダームスタチウム (Darmstadtium, Ds) は、原子番号110の合成元素で、周期表のdブロックに属する遷移金属です。ダームスタチウムは非常に不安定で、自然界には存在せず、人工的に合成されたものです。その性質や用途については限られた情報しかありませんが、以下にダームスタチウムの主な特徴や歴史について説明します。

元素図鑑

ダームスタチウムの基本情報

和名 ダームスタチウム
英名 Darmstadtium
語源 ドイツのダルムシュタット市 (Darmstadt)
元素記号 Ds
原子番号 110
原子量 (281)
常温(25℃)での状態
密度
融点
沸点
発見者 ホフマン 他(ドイツ)[1994年]
含有鉱物

ダームスタチウムの主な特徴

  • 原子番号110の人工元素で、dブロックの遷移金属に分類される
  • 同じく周期表第10族に属するニッケル・パラジウム・白金の下に位置しますが、相対論効果の影響により化学的性質は異なる可能性が高いと予測されている
  • 常温・常圧での外観や状態は不明で、理論上は金属的性質を持つ可能性があるとされている
  • 非常に短寿命で、自然界には存在せず、人工的に合成されたごくわずかな原子のみが観測されている

物理的性質

ダームスタチウムの物理的性質についてはほとんど分かっていません。非常に重く、密度が高いと予想されますが、詳しい測定データはありません。

化学的性質

ダームスタチウムは周期表の10族に属し、ニッケル、パラジウム、白金と同族です。したがって、これらの元素と類似の化学的性質を持つと予測されていますが、詳細な化学的性質についての研究は進んでいません。

放射性

ダームスタチウムは非常に不安定な放射性元素であり、合成後すぐに崩壊します。既知の同位体の半減期は非常に短く、ミリ秒から数秒の範囲です。たとえば、最も安定な同位体であるDs-281の半減期は約10秒です。

ダームスタチウムの歴史

発見

ダームスタチウムは1994年11月9日に、ドイツのダルムシュタットにあるGSIヘルムホルツ重イオン研究センターで合成されました。発見チームは、Peter Armbruster と Sigurd Hofmann が率いる研究グループで、ニッケル-62(Ni-62)イオンを鉛-208(Pb-208)ターゲットに衝突させることによって、最初のダームスタチウム原子を生成しました。

名前の由来

「ダームスタチウム(Darmstadtium)」の名前は、初めて元素が合成された地であるドイツ・ダルムシュタット市に由来します。

2003年、IUPACにより正式名称として承認されました。それまでは、暫定的に「ウンウンジウム(Ununnilium, Uun)」と呼ばれていました。

ダームスタチウムの主な用途

ダームスタチウムは半減期が非常に短く(数ミリ秒~秒程度)、現在のところ工業的・医療的な用途は存在しません。

利用は主に以下のような基礎科学研究に限られています。

  • 原子核物理における超重元素の安定性と構造の研究
  • 周期表の整合性や相対論的効果の検証
  • 化学的性質の理論予測と検証(ニッケル族との比較)

ダームスタチウムの生成方法

ダームスタチウムは重イオン衝突によって合成されます。具体的には、以下のような核融合反応で生成されます:

82208Pb+2862Ni110269Ds+01n{}^{208}_{82}\text{Pb} + {}^{62}_{28}\text{Ni} \rightarrow {}^{269}_{110}\text{Ds} + {}^{1}_{0}\text{n}

この反応では、鉛-208(Pb-208)ターゲットにニッケル-62(Ni-62)イオンを加速して衝突させることで、ダームスタチウム-269(Ds-269)が生成されます。

ダームスタチウムを含む化合物

ダームスタチウムの化学的性質については、理論化学計算や、わずかな実験的試みによって以下が予測されています:

  • 第10族に属するが、白金や金と異なる性質を持つ可能性
  • +2または+4価の酸化状態が安定
  • フッ化物や酸化物などの形成可能性があるが、安定な化合物は未確認
  • 相対論的収縮により化学反応性が低い可能性も

ダームスタチウムの研究事例

ダームスタチウムに関連する研究は、以下のような分野で行われています:

  • 超重元素の崩壊系列の特定: Dsから始まるアルファ崩壊系列を追跡し、同位体の特性を明らかにする
  • 周期表の化学的整合性の検証: 第10族(Ni, Pd, Pt)との電子構造・反応性の比較
  • 相対論的効果の理論計算: 電子軌道収縮やs軌道の安定化に関する第一原理計算
  • フレロビウムやコペルニシウムとの比較: 揮発性や吸着性などの性質の比較研究

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