ウランは、アクチノイド元素で、原子番号92の元素です。
ウランの基本情報
和名 | ウラン |
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英名 | Uranium |
語源 | 天王星 (Uranus) |
元素記号 | U |
原子量 | 238.0 |
常温(25℃)での状態 | 固体(金属) |
色 | 銀白色 |
臭い | ー |
密度 | 18.950 g/cm3(20℃) |
融点 | 1132.3℃ |
沸点 | 4172℃ |
発見者 | クラップロート(ドイツ)[1789年] |
含有鉱物 | 閃ウラン鉱, リン灰ウラン鉱 |
項目 | トリウム (Th) | ウラン (U) |
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原子番号 | 90 | 92 |
主な天然同位体 | Th-232(ほぼ100%) | U-238(約99.3%)、U-235(約0.7%) |
天然存在量 | ウランの約3~4倍 | トリウムより少ない |
放射能 | 弱い(Th-232の半減期:約140億年) | 強い(U-238:約45億年、U-235:約7億年) |
核分裂性 | 自発的には分裂しない(核変換が必要) | U-235は直接核分裂性 |
燃料としての利用 | Th-232 → U-233に変換して使用(増殖型) | U-235はそのまま核燃料に利用可能 |
核兵器への利用性 | 困難(U-233は濃縮が難しく高放射線) | U-235は濃縮で核兵器利用可能 |
廃棄物の放射性寿命 | 比較的短命な核分裂生成物が多い | 長寿命アクチニドが多く含まれる |
現在の商用利用 | 研究段階(主にインド、中国など) | 広く使用(軽水炉、加圧水型炉など) |
安全性 | 増殖炉や溶融塩炉での高い安全性が期待される | 実績はあるが、高圧・冷却材管理が必要 |
ウランの主な特徴
- アクチニウム系列に属する金属元素で、自然界で最も重い原子
- 銀白色の金属で放射性を持ち、自然界では主にU-238(99.3%)とU-235(0.7%)の同位体として存在する
- 化学的には+6価、+5価、+4価があり、特に+6価のウラニルイオン(UO₂²⁺)がよく知られている
- 比重は18.95と非常に高く、熱中性子を吸収する性質から原子力エネルギー源として極めて重要
ウランの歴史
発見
ウランは1789年、ドイツの化学者マルティン・クラプロートによって、鉱石「ピッチブレンド(瀝青ウラン鉱)」から発見されました。
当時は酸化物(UO₂)として分離されただけで、単体金属としてのウランは1841年にフランスの化学者ペリゴによって得られました。
名前の由来
元素名「ウラン(Uranium)」は、1781年に発見された天王星(Uranus)にちなんで命名されました。
当時の天文学的発見と化学の発見が重なった象徴的な命名です。
ウランの主な用途
ウランの最大の用途は原子力発電や核兵器の燃料です。
- 原子力発電: ウラン-235が核分裂を起こすことで大量のエネルギーを発生
- 核兵器: 高濃縮ウラン(HEU)は核爆弾に使用される
- 劣化ウラン: 原子力燃料に使われた後のU-238は弾芯・遮蔽材などに使用
- ガラス・陶器: ウラン化合物は古くは黄色や緑色の着色剤に用いられた(現在は規制)
- 研究用途: 中性子源や放射性標識物質としての利用
ウランの生成方法
ウランは自然界でウラン鉱石として存在し、以下のようにして抽出・精製されます:
- 鉱石採掘: 主にピッチブレンド(UO₂)、カルノー石、ウラン雲母など
- 酸・アルカリ処理: 溶解後、溶媒抽出やイオン交換で精製
- 濃縮: 遠心分離法によりU-235の割合を高める
- 燃料加工: UO₂などに加工し、燃料ペレットとして原子炉に投入
ウランを含む化合物
ウランは多価元素で、さまざまな酸化状態を取り、以下のような代表的化合物を形成します:
- 酸化ウラン(IV)(UO₂): 黒色粉末、軽水炉などの燃料
- 酸化ウラン(VI)(UO₃): 黄褐色粉末、可溶性が高い
- ウラニルイオン(UO₂²⁺): 水溶液中で安定、ウランの移動に関与
- 六フッ化ウラン(UF₆): 気体遠心分離による濃縮に用いられる
- 硝酸ウラニル(UO₂(NO₃)₂): 再処理工程で生成される中間体
ウランに関わる研究事例
ウランに関する研究はエネルギー、安全保障、環境保全の分野で進められています:
- 高速増殖炉の燃料: U-Puサイクルによる燃料再利用
- 濃縮・再処理技術の最適化: 遠心分離、レーザー分離など
- ウラン汚染水の浄化: ゼオライト・活性炭・錯体吸着剤の開発
- 核兵器不拡散研究: 使用済み燃料のトレーサビリティ確保
- 自然界における移動性評価: 土壌中のウランの溶出挙動や拡散モデル
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