ジアステレオマーとは?エナンチオマー・メソ体との違いと分離できる理由
立体異性体というと、まずエナンチオマー(鏡像異性体)を思い浮かべます。ところが実験室で実際に扱うことが多いのはジアステレオマーのほうです。
理由は単純で、ジアステレオマーは普通のカラムで分離できるからです。エナンチオマーは融点も溶解度も同じなので、特別な方法を使わないと分けられません。この「分けられる/分けられない」の差が、合成の現場では決定的に効いてきます。
試験では「この2つの関係を答えよ」「立体異性体は何種類か」という形で問われ、メソ体・cis/trans 異性体・エピマーが混ぜ込まれます。この記事では、どんな組み合わせが来ても同じ手順で判定できるようになることを目標にします。
ジアステレオマーとは
立体異性体のうち、互いに鏡像の関係にないものをジアステレオマーといいます。
立体異性体とは、原子のつながり方(構造式)は同じで、空間的な並び方だけが違う異性体です。構造異性体を含めた全体の地図は異性体の分類にまとめてあります。立体異性体は、鏡像の関係にあるかどうかで2つに分かれます。
異性体
├─ 構造異性体(つながり方が違う)
└─ 立体異性体(つながり方は同じ・空間配置が違う)
├─ エナンチオマー(互いに鏡像・重ならない)
└─ ジアステレオマー(鏡像ではない)
├─ 不斉中心の配置が一部だけ逆の組
├─ メソ体と、そのキラルな異性体の組
└─ cis/trans(E/Z)異性体
「鏡像か、鏡像でないか」の二択なので、2つの立体異性体の関係は、必ずエナンチオマーかジアステレオマーのどちらかになります(同一物の場合を除く)。ジアステレオマーは「エナンチオマーでない残り全部」と考えると、範囲を取り違えません。
ここでいう不斉中心(不斉炭素・キラル中心)は、4つの異なる原子・原子団が結合した四面体中心のことです。見つけ方と R/S の付け方はキラリティーとはで扱っています。
| エナンチオマー | ジアステレオマー | |
|---|---|---|
| 関係 | 互いに鏡像で、重ね合わせられない | 鏡像ではない |
| 不斉中心の配置 | すべてが逆 | 一部だけが逆(cis/trans 異性体では不斉中心が無くてもよい) |
| 融点・沸点・溶解度 | 同じ | 違う |
| 旋光度 | 絶対値が同じで符号が逆 | 無関係な値になる(0 のこともある) |
| アキラルな溶媒中の NMR | 同じスペクトル | 別のスペクトル |
| 普通のカラムで分離 | できない | できる |
エナンチオマーそのものの性質(旋光性・キラルな環境で効き目が分かれる理由)は鏡像異性体とエナンチオマーと光学活性にまとめています。
R/S の組み合わせで関係を判定する手順
不斉中心をもつ2つの構造が与えられたら、次の順で判定します。立体を頭の中で回すより、記号で比べるほうが速く、間違えにくい方法です。
手順1:構造式(つながり方)が同じか確かめる。違えば構造異性体で、そもそも立体異性体ではありません。
手順2:すべての不斉中心に R/S を付ける。同じ番号付けで、対応する炭素どうしを比べられるようにします。
手順3:対応する不斉中心の記号を1つずつ比べる。
手順4:メソ体の可能性を確かめる。「全部逆」に見えても、分子内に対称面があれば同一物です。
この判定が成り立つのは、鏡に映すとすべての不斉中心の R と S が同時に入れ替わるからです。鏡像は「全部逆」以外にありえません。だから「一部だけ逆」の相手は鏡像ではない、つまりジアステレオマーだと言い切れます。
不斉中心が2つある化合物で関係を表にする
不斉中心が2つあれば、配置の組み合わせは (R,R)・(S,S)・(R,S)・(S,R) の 22 = 4 通りです。4種類がすべて別物になる例と、メソ体のせいで3種類に減る例を並べて見ます。
トレオニン——4種類すべてが別物
アミノ酸のトレオニン(スレオニン、Thr。2-アミノ-3-ヒドロキシブタン酸)は、C2 と C3 が不斉中心です。C2 には –NH2 と –COOH、C3 には –OH と –CH3 がつき、2つの不斉中心の置換基の組が違います。このため4つの組み合わせはどれも互いに重ならず、立体異性体は4種類あります。
4つから2つを選ぶ組は6組あり、関係は次のとおりです(Thr=トレオニン、allo=アロトレオニン)。
| 組 | 違う炭素 | 関係 |
|---|---|---|
| L-Thr (2S,3R) と D-Thr (2R,3S) | C2・C3 | エナンチオマー |
| L-allo (2S,3S) と D-allo (2R,3R) | C2・C3 | エナンチオマー |
| L-Thr (2S,3R) と L-allo (2S,3S) | C3 のみ | ジアステレオマー |
| L-Thr (2S,3R) と D-allo (2R,3R) | C2 のみ | ジアステレオマー |
| D-Thr (2R,3S) と L-allo (2S,3S) | C2 のみ | ジアステレオマー |
| D-Thr (2R,3S) と D-allo (2R,3R) | C3 のみ | ジアステレオマー |
まとめると、エナンチオマーの対が2組あり、組どうしはすべてジアステレオマーです。1つの分子から見ると、エナンチオマーは1つだけ、ジアステレオマーは2つあります。
タンパク質に使われるのは L-トレオニン、すなわち (2S,3R) 体です。「アロ(allo)」は「もう一方の」という意味の接頭語で、同じ L/D 系列(C2 の配置)のまま C3 の配置だけが逆のものにつけられています(L-アロトレオニンは L-トレオニンの C3 エピマー)。
2,3-ジブロモブタン——メソ体があって3種類
C2 と C3 が不斉中心で、配置の組み合わせはやはり (2R,3R)・(2S,3S)・(2R,3S)・(2S,3R) の4通りです。トレオニンとの違いは、C2 も C3 も (CH3, Br, H, 相手の炭素) という同じ置換基の組をもつことです。
(2R,3S) 体は分子内に対称面をもつため、鏡像と重ね合わせることができます。これがメソ体で、不斉中心を2つもつのに光学不活性です。結果として、2,3-ジブロモブタンの立体異性体は3種類(エナンチオマー1組+メソ体1つ)になります。
| (2R,3R) | (2S,3S) | メソ体 (2R,3S) | |
|---|---|---|---|
| (2R,3R) | — | エナンチオマー | ジアステレオマー |
| (2S,3S) | エナンチオマー | — | ジアステレオマー |
| メソ体 | ジアステレオマー | ジアステレオマー | —(鏡像も自分自身) |
酒石酸
2,3-ジブロモブタンと同じ型(両端が同じ置換基の組)です。(R,R)体と(S,S)体がエナンチオマーの関係にあり、メソ酒石酸はそのどちらに対してもジアステレオマーです。
パスツールが酒石酸塩の結晶を手で選り分けたのは、この系のエナンチオマーのほうでした(くわしくはエナンチオマーと光学活性)。
メソ体の見分け方と、数が減る理由
不斉中心が n 個あるとき、立体異性体は最大で 2n 個です。「最大で」と書くのは、メソ体があるとそれより少なくなるからです。
なぜ4つが3つになるのか
2,3-ジブロモブタンの (2R,3S) 体を鏡に映すと、手順のとおり全部の記号が入れ替わって (2S,3R) 体になります。ところが、この分子は左右が同じ置換基の組でできているので、端から数え直すと「C2」と「C3」の名前が入れ替わり、(2S,3R) は (2R,3S) と同じ分子を別の向きから呼んだだけになります。
つまり「(R,S) と (S,R)」は、トレオニンでは別々の2種類として数えられたのに、2,3-ジブロモブタンでは同じ1種類を2回数えていたのです。だから 4 − 1 = 3 種類になります。
分子の形で言い直すと、(2R,3S) 体は C2–C3 結合の中点を通る対称面をもち、左半分と右半分が互いの鏡像になっています。片側の不斉中心が偏光を回す向きと、もう片側が回す向きが逆で打ち消し合うので、旋光度は 0 です。
判定の手順そのもの、メソ体とラセミ体の違いはメソ体の見分け方でくわしく扱っています。
置換基の組が違えば 2n のまま
メソ体ができるかどうかは、2つの不斉中心が同じ置換基の組をもつかどうかで決まります。似た名前の化合物で比べると違いがはっきりします。
| 化合物 | 2つの不斉中心の置換基 | メソ体 | 立体異性体の数 |
|---|---|---|---|
| 2,3-ブタンジオール | どちらも (CH3, OH, H, 相手の炭素) | ある | 3 |
| 2,3-ペンタンジオール | C2 は CH3、C3 は C2H5 をもつ(組が違う) | ない | 4 |
| 酒石酸 | どちらも (COOH, OH, H, 相手の炭素) | ある | 3 |
| トレオニン | C2 は NH2/COOH、C3 は OH/CH3(組が違う) | ない | 4 |
cis/trans(E/Z)異性体もジアステレオマー
ジアステレオマーは「不斉中心の配置が一部だけ逆」の組だけではありません。cis/trans 異性体(幾何異性体)もジアステレオマーです。
なぜ鏡像にならないのか
cis-2-ブテンと trans-2-ブテンで考えます。二重結合のまわりの6つの原子は同じ平面上にあり、その平面そのものが分子の対称面になります。したがって cis-2-ブテンを鏡に映しても cis-2-ブテンのままで、trans 体にはなりません。cis 体の鏡像は cis 体自身なので、cis 体と trans 体は鏡像の関係にありません。立体異性体で鏡像でない組なので、定義どおりジアステレオマーです。
ここから分かるのは、ジアステレオマーにはキラリティーが要らないということです。エナンチオマーは定義上キラルな分子どうしですが、ジアステレオマーはアキラルな分子どうしでも成り立ちます。
物性もはっきり違います。cis-2-ブテンは2つのメチル基が同じ側にあるので双極子モーメントが打ち消し合わず、沸点は trans 体よりわずかに高くなります。マレイン酸(cis)とフマル酸(trans)では、マレイン酸だけが加熱で分子内の酸無水物を作りやすく(2つの –COOH が同じ側で近い)、水への溶けやすさも融点も大きく違います。
環の cis/trans
環の上の2つの置換基の cis/trans も同じ扱いです。1,2-ジメチルシクロペンタンでは、cis 体は対称面をもつメソ体 (1R,2S)、trans 体は (1R,2R) と (1S,2S) のエナンチオマー対で、立体異性体は3種類です。cis 体と trans 体の関係はジアステレオマーです。
1,2- や 1,3-二置換体のように、置換基のついた環炭素が不斉中心になる場合は、環の cis/trans は「不斉中心が2つある化合物の話」と同じもので、cis/trans という呼び方と R/S の呼び方が、同じ立体異性体の2つの名前になっています。1,4-ジメチルシクロヘキサンのように不斉中心が無い場合でも、cis/trans はジアステレオマーです。シクロヘキサンでの安定性の比較はシクロヘキサンの立体化学で扱っています。
二重結合と不斉中心が両方あるとき
立体異性を生む二重結合も、数え方では不斉中心と同じく「1つ」と数えます。たとえば 3-ペンテン-2-オール CH3CH=CH–CH(OH)CH3 は、C2 の不斉中心と C3=C4 の二重結合をもつので 22 = 4 種類です。
| 組 | 違うところ | 関係 |
|---|---|---|
| (2R,3E) と (2S,3E) | C2 のみ(鏡像) | エナンチオマー |
| (2R,3Z) と (2S,3Z) | C2 のみ(鏡像) | エナンチオマー |
| (2R,3E) と (2R,3Z) | 二重結合のみ | ジアステレオマー |
| (2R,3E) と (2S,3Z) | 両方(ただし鏡像ではない) | ジアステレオマー |
最後の行に注意してください。鏡に映しても E/Z は変わらない(平面の幾何は鏡像で保たれる)ので、(2R,3E) の鏡像は (2S,3E) です。E/Z が違う組は、R/S がどうであれエナンチオマーにはなりません。
なぜ物性が違い、分離できるのか
ここがジアステレオマーの実務上の核心です。
エナンチオマーは、原子間の距離も結合角もまったく同じ「鏡像」なので、物理的性質が完全に一致します。融点も溶解度も極性も同じ。だから蒸留でもカラムでも分けられません(キラルな環境を持ち込まない限り)。
ジアステレオマーは違います。配置の一部だけが逆なので、分子の形そのものが別物です。結合でつながっていない原子どうしの距離が変わり、立体反発の大きさも変わる。分子内水素結合ができるかどうか、双極子がどちらを向くかも変わります。結果として融点・溶解度・極性・1H NMR の化学シフトが原理的にはすべて異なります。
物性が違うのは、分子そのものだけではありません。2つのジアステレオマーへ向かう遷移状態どうしも、互いにジアステレオマーの関係にあり、エネルギーが違います。だからキラルな触媒が無くても、分子の中にすでにある不斉中心が、新しい不斉中心のでき方を偏らせることができます。これがジアステレオ選択的な反応の土台です(ジアステレオ選択的合成)。一方、エナンチオマーへ向かう遷移状態どうしは鏡像でエネルギーが同じなので、アキラルな原料とアキラルな条件からはラセミ体しか得られません。
ラセミ体を分ける——光学分割の原理
「エナンチオマーは分けられない」なら、どうやって光学活性な化合物を手に入れるのか。答えはいったんジアステレオマーに変えるです。
ラセミ体のカルボン酸に、光学活性なアミン(たとえば(−)-ブルシンや(R)-1-フェニルエチルアミン)を加えて塩を作ります。
| ラセミ体の成分 | 加える分割剤 | できる塩 | 2つの塩の関係 |
|---|---|---|---|
| (R)-酸 | (R)-アミン | (R,R)-塩 | ジアステレオマー (溶解度が違う → 再結晶で分離) |
| (S)-酸 | (R)-アミン | (S,R)-塩 | 上の塩とジアステレオマー |
ここで鏡像関係が崩れる理由を、前の手順で確かめておきます。(R,R)-塩の鏡像は (S,S)-塩ですが、アミンは (R) 体しか加えていないので、(S,S)-塩はどこにもありません。実際にできる (R,R)-塩と (S,R)-塩は「一部だけ逆」の組なので、ジアステレオマーです。逆に言えば、加えるアミンがラセミ体やアキラルなものでは、片方のエナンチオマーだけを取り出せません(光学分割になりません)。
分けたあとで酸を加えてアミンを外せば、片方のエナンチオマーが単独で得られます。分けられないものを、分けられるものに変換してから分ける——立体化学の定番の戦略です。分割剤の選び方、キラル HPLC や酵素分割との比較はラセミ体の光学分割にまとめています。
同じ発想はEvans 不斉アルドール反応の不斉補助基にも生きています。キラルな補助基を一時的に付けてジアステレオマーの関係にし、立体を作り分けてから外す、という流れです。
エピマーとアノマー
ジアステレオマーの中には、よく使われる特別な呼び名をもつものがあります。どちらも「ジアステレオマーの一種」であって、別の分類ではありません。
エピマー——1か所だけ配置が違うジアステレオマー
不斉中心を2つ以上もつ分子で、1か所だけ配置が逆のジアステレオマーどうしをエピマーといいます。糖が代表例です。
| 組 | 違う炭素 | 関係 |
|---|---|---|
| D-グルコースと D-マンノース | C2 のみ | C2 エピマー(ジアステレオマー) |
| D-グルコースと D-ガラクトース | C4 のみ | C4 エピマー(ジアステレオマー) |
| D-マンノースと D-ガラクトース | C2 と C4 | ジアステレオマー(2か所違うのでエピマーではない) |
| D-グルコースと L-グルコース | C2〜C5 のすべて | エナンチオマー |
ある不斉中心だけを反転させる変化をエピマー化といいます。カルボニル基の隣(α位)の不斉中心は、塩基や酸の存在下でエノール(エノラート)を経て平面になり、もう一度プロトン化されるときにどちらの面からも H がつけるので、配置が入れ替わります。
ここで違いが出るのが、不斉中心が1つか複数かです。不斉中心が1つだけの分子で同じことが起きればラセミ化(エナンチオマーが等量に近づく)、ほかにも不斉中心があればエピマー化(ジアステレオマーの混合物になる)です。ジアステレオマーどうしはエネルギーが違うので、エピマー化では 1:1 にならず、安定なほうに偏った比で落ち着きます。
アノマー——環状の糖のアノマー炭素だけが違うエピマー
グルコースのような糖は、水溶液中で分子内のヒドロキシ基がアルデヒドに付加して環状のヘミアセタールになります。このとき元のカルボニル炭素(C1)が新しい不斉中心(アノマー炭素)になり、C1 の配置だけが違う2つの環状体ができます。これをアノマー(α 体と β 体)といいます。
アノマーはジアステレオマーなので、比旋光度も融点も違います。純粋な α 体または β 体を水に溶かすと、開鎖形を経て互いに変換し、旋光度が時間とともに変わって一定値に落ち着きます。これが変旋光(ムタローテーション)です。平衡の比が 1:1 にならないのも、両者のエネルギーが違うジアステレオマーだからです。環化のしくみと α/β の描き方は炭水化物(糖質)の解説で扱っています。
例題
例題1:関係を答える
次の組の関係(同一物・エナンチオマー・ジアステレオマー)を答えなさい。
- (a) (2S,3R)-トレオニン と (2S,3S)-トレオニン
- (b) (2R,3R)-酒石酸 と (2S,3S)-酒石酸
- (c) (2R,3S)-酒石酸 と (2S,3R)-酒石酸
- (d) (2R,3R)-2,3-ジブロモブタン と メソ-2,3-ジブロモブタン
解答:(a) C3 だけが逆なのでジアステレオマー(L-トレオニンと L-アロトレオニン)。(b) 両方逆で、対称面もないのでエナンチオマー。(c) 両方逆に見えるが、どちらもメソ酒石酸を指すので同一物。(d) メソ体はキラルな異性体のどちらとも鏡像ではないのでジアステレオマー。
例題2:立体異性体の数
次の化合物の立体異性体の数を答えなさい。
- (a) 2,3-ブタンジオール CH3CH(OH)CH(OH)CH3
- (b) 2,3-ペンタンジオール CH3CH(OH)CH(OH)CH2CH3
- (c) 3-ペンテン-2-オール CH3CH=CH–CH(OH)CH3
- (d) 1,2-ジメチルシクロペンタン
解答:(a) 不斉中心2つで最大4。2つの不斉中心が同じ置換基の組をもつのでメソ体があり、3種類。(b) 置換基の組が違うのでメソ体はなく、4種類。(c) 不斉中心1つと立体異性を生む二重結合1つで 22 = 4種類。(d) 不斉中心2つで最大4。cis 体がメソ体なので3種類(cis のメソ体1つ+trans のエナンチオマー対)。
例題3:糖の関係
D-グルコースと D-ガラクトース、α-D-グルコピラノースと β-D-グルコピラノースの関係を、それぞれ最も具体的な名前で答えなさい。
解答:前者は C4 の配置だけが違うので C4 エピマー、後者は環状体の C1 だけが違うのでアノマー。どちらも広い意味ではジアステレオマーです。答案では「ジアステレオマーのうちエピマー(アノマー)」と、上位の分類も添えると誤解されません。
まとめ
立体化学を最初から通して整理したい場合は四面体中心の立体化学へ進んでください。
よくある質問
2つの構造のすべての不斉中心の配置(RとS)を比べます。すべてが逆ならエナンチオマー、一部だけが逆で残りが同じならジアステレオマーです。ただし、すべてが逆でも分子内に対称面があるメソ体なら同一物です。立体異性の要素が不斉中心1つだけの分子(二重結合の cis/trans なども無いもの)では、ジアステレオマーは生じず、エナンチオマーだけになります。
配置の一部だけが逆なので分子の形が別物になり、融点・溶解度・極性といった物理的性質が異なるからです。シリカゲルカラムでRf値が違い、再結晶でも分けられます。エナンチオマーは鏡像で原子間の距離や角度がすべて同じため物理的性質が完全に一致し、キラルな環境を持ち込まない限り分離できません。
メソ体は、不斉中心を複数もつのに分子内に対称面があるため鏡像と重ね合わせられる化合物です。メソ体と、同じ構造式をもつキラルな立体異性体とは、鏡像の関係にないのでジアステレオマーです。たとえばメソ酒石酸は(R,R)-酒石酸と(S,S)-酒石酸のどちらに対してもジアステレオマーで、融点や溶解度が異なります。
はい。cis-2-ブテンとtrans-2-ブテンのようなcis/trans異性体は、立体異性体で互いに鏡像の関係にないのでジアステレオマーです。二重結合のまわりは平面で、その平面が対称面になるため、cis体の鏡像はcis体自身でありtrans体にはなりません。環の上の置換基のcis/trans異性体も同じくジアステレオマーです。
分けられないエナンチオマーを、いったん分けられるジアステレオマーに変えるという原理です。ラセミ体のカルボン酸に光学活性なアミンを加えると2種類の塩ができ、これらはジアステレオマーの関係なので溶解度が違い、再結晶で分離できます。分離後に酸で処理してアミンを外せば、片方のエナンチオマーが得られます。
