アルケンの命名法:IUPAC命名の基本
アルケンを学ぶときは、構造と反応性だけでなく、正しく名前を付けられることも重要です。
命名法は一見すると細かい規則の集まりに見えますが、考え方の順序を押さえれば、かなり整理して理解できます。
アルケンの命名で中心になるのは、二重結合を最優先で扱うことです。
アルカンの命名と似ている部分もありますが、主鎖の選び方や番号の付け方では、二重結合の位置が特に重要になります。
ここでは、IUPAC命名法に基づいて、アルケンの基本的な命名手順を整理します。
アルケンの基本的な名前の作り方
アルケンの母体名は、炭素数を表す語幹に、二重結合を表す語尾を付けて作ります。
アルカンでは語尾に -ane を用いますが、アルケンでは -ene を用います。
たとえば、炭素数が二つで二重結合を一つもつ分子は ethene、炭素数が三つで二重結合を一つもつ分子は propene になります。
炭素数が四つなら butene、五つなら pentene です。
つまり、まずは分子の中から二重結合を含む主鎖を見つけ、その炭素数に応じた母体名を選ぶことが出発点になります。
主鎖は「二重結合を含む最長鎖」を選ぶ
アルケンの命名では、主鎖の選び方が最初の重要なポイントです。
主鎖は、必ず二重結合を含んでいなければなりません。
そのうえで、二重結合を含む炭素鎖の中から、できるだけ長いものを選びます。
単に炭素数が多い鎖を選ぶのではなく、二重結合を含んでいることが絶対条件です。
この規則は、アルケンの性質が二重結合に強く支配されることを反映しています。
したがって、分岐が多い構造を読むときでも、まずは「どの鎖が二重結合を含んでいるか」を確認することが大切です。
番号は二重結合に最も近い端から付ける
主鎖が決まったら、次に炭素番号を付けます。
このときは、二重結合にできるだけ小さい番号が与えられるように、鎖の端を選びます。
たとえば、四炭素鎖に二重結合がある場合、二重結合が1位にあるなら 1-butene、2位にあるなら 2-butene となります。
このように、アルケンでは二重結合の位置番号が命名の中核になります。
置換基がある場合でも、まずは二重結合の位置番号が最小になることを優先します。
アルカンの命名では置換基の位置が目立ちますが、アルケンでは二重結合の位置の方が優先順位が高いと考えると整理しやすくなります。
二重結合の位置は名前の中に明示する
アルケンでは、二重結合がどこにあるかを名前の中で示す必要があります。
そのため、母体名の前に二重結合の位置番号を付けます。
たとえば、CH2=CHCH2CH3 は 1-butene、CH3CH=CHCH3 は 2-butene です。
二重結合の位置が異なると、同じ分子式でも別の構造異性体になるため、この番号は省略できません。
なお、三炭素鎖の propene のように、どちらから番号を付けても二重結合の位置が自動的に決まる場合には、位置番号を省略して書かれることもあります。
ただし、学習段階では位置番号を意識して考える方が安全です。
置換基があるアルケンの命名
主鎖にアルキル基などの置換基が結合している場合は、置換基の位置と名前を母体名の前に付けます。
この考え方自体はアルカンと同じです。
たとえば、二重結合を含む四炭素鎖にメチル基が結合していれば、主鎖を butene とし、その前に methyl を付けて命名します。
このときも、番号付けはまず二重結合の位置が最小になるように行い、そのうえで置換基の位置を決めます。
置換基が複数ある場合には、di-, tri- などの接頭辞を用い、位置番号をすべて示します。
また、異なる置換基が複数ある場合は、アルファベット順に並べます。
複数の二重結合をもつ場合
分子内に二重結合が二つ以上ある場合には、語尾として diene、triene などを用います。
この場合も、主鎖はすべての二重結合をできるだけ多く含むように選びます。
たとえば、二つの二重結合をもつ四炭素鎖なら butadiene になります。
二重結合の位置は、それぞれの位置番号を示して、1,3-butadiene のように表します。
このときも、番号は二重結合の位置番号の組が最小になるように付けます。
つまり、最初の二重結合の番号が小さくなることを優先し、それでも同じなら次の番号を比較するという考え方です。
環状アルケンの命名
環状化合物に二重結合がある場合は、cycloalkene の形で命名します。
たとえば、六員環に二重結合が一つあれば cyclohexene です。
環状アルケンでは、二重結合を構成する炭素が1位と2位になるように番号を付けます。
そのうえで、置換基の位置番号ができるだけ小さくなるように全体の番号を決めます。
環構造では番号の付け方が少し複雑に見えますが、まず二重結合の位置を固定し、その後に置換基の位置を最小化するという順序で考えると混乱しにくくなります。
cis/trans や E/Z は命名の一部として重要になる
アルケンでは、二重結合の回転が制限されるため、同じ結合順序でも立体配置の異なる異性体が存在します。
そのため、必要に応じて cis/trans や E/Z の表記を名前の前に付けて区別します。
たとえば 2-butene には、cis-2-butene と trans-2-butene があります。
さらに一般的には、CIP順位則に基づいて E/Z 表記を用います。
したがって、アルケンの命名では、構造式を平面的に読むだけでなく、立体配置まで含めて名前に反映させる必要があります。
この点が、アルカンの命名との大きな違いの一つです。
命名で迷ったときの考え方
アルケンの命名で迷ったときは、手順を固定すると整理しやすくなります。
まず二重結合を含む最長鎖を選び、次に二重結合に最小番号が付くように番号を振り、その後で置換基の位置と名前を決めます。
この順序を守れば、複雑な構造でもかなり安定して命名できるようになります。
命名法は暗記だけで処理しようとすると混乱しやすいので、規則の優先順位を意識して判断することが大切です。
練習問題
解答:二重結合を含む炭素鎖であることです。
解答:二重結合にできるだけ小さい番号を与えることです。
解答:-diene を用います。
解答:1位と2位が与えられます。
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