コンフォメーション入門:Newman投影と anti / gauche
単結合のまわりでは、結合を切ることなく分子が回転できるため、同じ分子であっても立体的な形は一つに定まりません。
このように、結合回転によって生じる分子の立体配置の違いをコンフォメーションと呼びます。
コンフォメーションの違いは、分子のエネルギーや安定性に影響し、反応性や立体化学を考える際の重要な手がかりになります。
ここでは、Newman 投影を用いたコンフォメーションの表現方法と、anti 配座および gauche 配座の意味を整理します。
単結合の回転とコンフォメーション
炭素–炭素単結合は σ 結合であり、結合を切ることなく回転することができます。
そのため、エタンやブタンのような分子では、回転角の違いに応じてさまざまな立体配置が連続的に存在します。
これらの立体配置は、互いに異なる構造式として描かれることがありますが、結合の切断を伴わずに相互変換できる点で、構造異性体とは区別されます。
コンフォメーションは、あくまで同一分子の内部回転による立体的な姿の違いを表す概念です。
Newman 投影による表現
コンフォメーションを視覚的に表現する方法として、Newman 投影がよく用いられます。
Newman 投影では、炭素–炭素結合をその軸方向から見た図として分子を表します。
手前の炭素に結合した三つの置換基は、中心から放射状に伸びる三本の線で描かれます。
奥側の炭素に結合した三つの置換基は、円の周囲に配置されます。
この表現を用いると、二つの炭素に結合した置換基同士の位置関係を直感的に把握できるようになります。
とくに、置換基が互いに重なって見える配置や、ずれて配置されている様子を明確に区別できる点が利点です。
eclipsed 配座と staggered 配座
Newman 投影で、手前と奥の炭素に結合した置換基が重なって見える配置を eclipsed 配座と呼びます。
この配置では、結合している原子同士が近接するため、電子雲の反発が大きくなり、エネルギー的に不安定になります。
一方、手前と奥の置換基が互いにずれて配置されている場合を staggered 配座と呼びます。
この配置では、原子同士の反発が最小化されるため、eclipsed 配座に比べてエネルギーが低く、安定です。
エタンのように置換基がすべて水素である場合でも、eclipsed 配座と staggered 配座の間には明確なエネルギー差が存在します。
これは、ねじれ歪みと呼ばれる電子的反発の違いに由来します。
anti 配座と gauche 配座
ブタンのように、置換基の大きさが異なる分子では、staggered 配座の中にも安定性の差が現れます。
とくに、大きな置換基同士が互いに反対側に位置する配置を anti 配座と呼びます。
anti 配座では、立体的な反発が最も小さくなるため、一般に最も安定なコンフォメーションとなります。
一方、大きな置換基同士が約 60 度の位置関係にある配置を gauche 配座と呼びます。
gauche 配座では、置換基同士が比較的近接するため、anti 配座に比べて立体反発が大きくなり、エネルギーがやや高くなります。
このように、staggered 配座であっても、置換基の相対配置によって安定性が異なる点に注意が必要です。
コンフォメーションと反応性の関係
分子がどのコンフォメーションをとりやすいかは、反応性にも影響を与えます。
反応が進行する際には、反応点が立体的に露出している配置や、反応に有利な配向をとるコンフォメーションが選択的に関与することがあります。
そのため、反応機構を考える際には、単に構造式を平面上で眺めるだけでなく、どのような立体配置が現実に取りやすいかを意識することが重要です。
練習問題
解答:単結合の回転によって生じる、同一分子内の立体配置の違いを指す概念です。
解答:炭素–炭素単結合をその軸方向から見た視点で分子を表現します。
解答:一般に、anti 配座では大きな置換基同士が最も離れて配置されるため立体反発が最小となり、gauche 配座よりも安定になります。
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