コンフォメーション入門:Newman投影とanti/gauche
σ結合は回転できる
その結果生まれる“同じ分子の別の姿”がコンフォメーション(配座)
配座は、SN2やE2の立体要件、置換基の反発、生成物比の説明など、後の章で何度も効いてくる
この記事では
・Newman投影の描き方(見方のルール)
・staggered / eclipsed
・anti / gauche(特にブタン)
を「試験で即使えるテンプレ」に落とし込む
この記事でできること
- 「配座」と「立体異性体」を区別できる
- Newman投影を迷わず描ける(前炭素/後炭素の描き分け)
- staggered / eclipsed を見分け、どちらが安定か説明できる
- ブタンの anti / gauche を判定し、エネルギー差の理由(立体ひずみ)を言える
先に結論(ここだけ読めばOK)
- 配座=単結合回転で入れ替わる“同じ分子の姿”
- Newman投影=C–C結合を真正面から見た図(前炭素は中心、後炭素は円の外側)
- 基本は staggered(互い違い) が低エネルギー、eclipsed(重なり) が高エネルギー
- ブタンの最安定は anti(置換基が180°)
- ブタンの gauche(60°) は anti より高エネルギー(置換基同士の立体反発=steric strain)
1. コンフォメーションとは
コンフォメーション(配座)は、単結合(σ結合)の回転で生じる原子の空間配置の違い
多くの場合、回転が速すぎて「別物として単離」できない
それでも、どの配座が多いか(安定か)は、反応性や生成物比に直結する
2. Newman投影の描き方(テンプレ)
2-1. 何を見ている図?
Newman投影は「C–C結合を真っすぐ覗き込んだ図」
見る向きを決めたら、その結合の手前の炭素が“前炭素”、奥が“後炭素”
2-2. 描き方のルール(固定)
- 前炭素:点(または小さなY字)として描き、3本の結合を中心から出す
- 後炭素:円で描き、3本の結合を円周から出す
- 前と後で「どの置換基がどこに付いているか」を間違えない
2-3. 最短で描く手順
- 見る結合を決める(例:C2–C3)
- どちら側から見るか決める(例:C2 → C3 を見る)
- 前炭素(C2)に付く3つの置換基を、120°間隔で配置
- 後炭素(C3)に付く3つの置換基を、円の外側に配置
- 角度(ジヒドロ角)を変えて、staggered / eclipsed / anti / gauche を作る
3. staggered と eclipsed(エタンで固定)
3-1. staggered(互い違い)
前後の結合が重ならず、最も離れている配置
一般に低エネルギーで安定
3-2. eclipsed(重なり)
前後の結合が重なり、置換基同士が近づく配置
一般に高エネルギーで不安定
この不安定化は「torsional strain(ねじれひずみ)」として扱う
4. anti と gauche(ブタンで完成させる)
anti/gauche は「置換基があるアルカン」で重要になる
一番の定番がブタン(C2–C3結合を見たNewman投影)
4-1. anti(180°)
2つのメチル基が 180° 離れた staggered 配座
置換基が最も離れているため最安定
4-2. gauche(60°)
2つのメチル基が 60° の staggered 配座
eclipsed ではないのに anti より高エネルギーになる
理由は、メチル基同士が近づいて起こる steric strain(立体ひずみ)
4-3. eclipsed(最大値が複数ある)
ブタンのeclipsedは全部同じではない
メチル同士が正面衝突する eclipsed(0°)が最も高エネルギーになりやすい
H–H、H–CH3、CH3–CH3 で“コスト”が違う、という発想が重要
5. 試験での使い方(判定テンプレ)
5-1. 最安定配座を選べ
ルールは単純
- まず staggered を選ぶ(eclipsedは基本不利)
- 大きい置換基同士は anti に離す(可能なら180°)
- antiが取れないなら、次点として gauche が候補
5-2. 「なぜgaucheが不利?」と聞かれたら
ねじれひずみではなく、置換基同士が近づく steric strain(立体ひずみ)で説明する
ブタンの問題はここを言えるかで差がつく
5-3. E2に直結する超重要ポイント
E2は anti-periplanar(anti配向)が必要
Newman投影で「β-H と脱離基がantiに並ぶ配座」を探せるようにしておくと、E2問題が一気に楽になる
よくあるミスと対策
前炭素と後炭素が入れ替わっている
「どちら側から見たか」を最初に宣言して固定する
C2 → C3 と決めたら、最後までそれで描く
staggeredなのにanti/gaucheを言い間違える
anti/gaucheは「置換基同士のジヒドロ角」で決める
・180°=anti
・60°=gauche
まず“置換基(大きい基)同士”を見る
エネルギーの理由が混ざる
使い分け
- eclipsedが高い:torsional strain
- gaucheがantiより高い:steric strain(置換基の反発)
練習問題(演習)
解答
anti:メチル基同士のジヒドロ角が180°
gauche:メチル基同士のジヒドロ角が60°
解答
メチル基同士が近づいて立体反発(steric strain)が生じるため
解答
置換基(結合)が重なってねじれひずみ(torsional strain)が大きくなるため
解答
β-Hと脱離基がanti-periplanar(anti配向)に並んでいること
次に読む記事
- E1/E2の入口:SNとの競合・温度・強塩基の整理(anti配向が得点源になる)
- 立体障害と反応性:SN2が遅い理由(Newmanで“混み合い”が見える)
- E/Zの決め方(CIP則):cis/transで迷わない(立体の別軸を整理)
