E/Zの決め方(CIP則):cis/transで迷わない
二重結合は回転できない
だから置換基の並びが固定され、立体異性(E/Z)が生まれる
ここで迷う原因は、cis/trans と E/Z を混同することと、優先順位(CIP則)の手順が固定されていないこと
この記事では、E/Zを「毎回同じ手順」で決められるように、CIP則を最短テンプレ化する
この記事でできること
- cis/trans と E/Z の違いを説明できる
- CIP則で優先順位を付け、E/Zを一発で判定できる
- 引っかけ(同位体、多重結合、分岐、長い置換基)で事故らない
- E/Zが「回転できないことの帰結」だと理解できる
先に結論(E/Z判定テンプレ)
- 二重結合の左右それぞれで、置換基2つの優先順位をCIP則で決める
- 左右で最優先(1位)の置換基どうしを見る
- 1位同士が同じ側 → Z(Zusammen=一緒)
- 1位同士が反対側 → E(Entgegen=反対)
1. cis/trans と E/Z の違い
cis/trans は「適用できるときだけ」便利
cis/trans は「同じ置換基が左右に1つずつある」など、単純な場合に使える
しかし置換基が4種類になると cis/trans は曖昧になり、使えない
E/Z は常に一意に決まる
置換基が何であっても、CIP則で優先順位を付ければ必ず決まる
試験では基本 E/Z を使うのが安全
2. CIP則(優先順位)の基本:まず原子番号
ルール1:二重結合に直接つながる原子の「原子番号」が大きい方が優先
例
- Br > Cl > S > O > N > C > H
- だから、Br付きの置換基は大体最優先になりやすい
すぐ使える注意
「置換基の大きさ」ではなく「直接結合している原子の原子番号」で決める
ここが最大の誤答ポイント
3. 直接原子が同じなら:次の原子へ(分岐で決着)
ルール2:直接原子が同じなら、その次に結合している原子群を比較する
比較は「原子番号の大きい順に並べて」辞書順で行う
例:CH3 と CH2CH3
- どちらも直接原子はCで同点
- 次の原子群:
- CH3のCが結合しているのは(H, H, H)
- CH2CH3のCが結合しているのは(C, H, H)
- C > H なので、CH2CH3が優先
分岐があるとき
“遠く”ではなく、“早い段階”で重い原子に出会う方が優先になる
だから分岐(置換の多い炭素)を持つ側が優先になりやすい
4. 多重結合の扱い:同じ原子が複数あるとみなす
ルール3:二重結合・三重結合は「相手原子が複数個ある」として展開して比較
例
- C=O は、Cが(O, O, …)に結合しているとみなす
- C≡N は、Cが(N, N, N)に結合しているとみなす
これで“次の原子比較”が機械的にできる
5. 同位体の扱い
ルール4:同位体は質量数が大きい方が優先
例:D(重水素)> H
試験でたまに出る引っかけなので、知っているだけで得点できる
6. 判定の実例(手順を固定する)
例1:2-ブテン(CH3–CH=CH–CH3)
各炭素にCH3とHが付く
優先順位は CH3(C)> H
1位同士(CH3)が同じ側ならZ、反対側ならE
この例はcis/transも使える(cis = Z、trans = E)
例2:CH3–CH=CH–Cl(置換基が4種)
左側:CH3 vs H → CH3が優先
右側:Cl vs H → Clが優先
1位(CH3)と1位(Cl)が同じ側ならZ、反対ならE
cis/trans では曖昧なのでE/Zが安全
7. よくあるミスと対策
ミス1:置換基の“サイズ感”で優先順位を決める
CIPは原子番号
大きく見えても、直接原子がCならまずC同士で比較になる
ミス2:直接原子が同じときに止まる
次の原子群を「原子番号の大きい順に並べて」比較する
ここまでやれば必ず決着する
ミス3:多重結合の比較を間違える
多重結合は“複数の同じ原子がある”とみなして展開
これをルール化すると事故が減る
ミス4:cis/trans と E/Z を混同する
cis/trans は使えるときだけ
迷ったら必ずE/Zで書く(採点が安定)
練習問題(演習)
解答:
① 二重結合の左右それぞれでCIP則により置換基の優先順位を決める
② 左右で1位の置換基を選ぶ
③ 1位同士が同じ側ならZ
④ 1位同士が反対側ならE
解答:
Clが優先
理由:二重結合炭素に直接結合している原子の原子番号がCl(17)>C(6)だから
解答:
CH2CH3が優先
理由:直接原子はどちらもCで同点だが、次の原子群が(C,H,H)と(H,H,H)で、C>Hのため
解答:
Dが優先
理由:同位体は質量数が大きい方が優先だから
解答:
二重結合はπ結合を含み回転するとπ重なりが壊れるため自由回転できず、置換基の相対配置が固定されてE/Zという立体異性が生じる
次に読む記事
- σ結合とπ結合:二重結合が回転できない理由(E/Zの物理的根拠)
- コンフォメーション入門:Newman投影とanti/gauche(回転できる場合との対比)
- 求核剤・求電子剤の見分け方:反応点の探し方(π結合の反応性に接続)
