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σ結合とπ結合:二重結合が回転できない理由

「二重結合は回転できない」
これは有機化学の立体(E/Z、cis/trans)を支える最重要ルール

でも、暗記で終わらせるより
σ結合とπ結合の“重なり方”を理解すると、回転できない理由が直感で納得できる
さらに、共鳴・芳香族・反応機構(付加反応)まで一気に繋がる

この記事でできること

先に結論(ここだけ読めばOK)

1. σ結合とは:正面衝突(head-on overlap)

σ結合の特徴

どんな軌道でもσは作れる

s–s、s–p、p–p、混成軌道同士(sp3–sp3 など)
とにかく「正面衝突」ならσ

2. π結合とは:横向き重なり(side-by-side overlap)

π結合の特徴

π結合は「向き」に敏感

p軌道の平行が崩れると、横向き重なりが消える
ここが回転できない理由の核心になる

3. 二重結合は「σ+π」

二重結合(C=C)の内訳

sp2が鍵

二重結合の炭素は一般にsp2
sp2だとp軌道が1本残り、それがπ結合に使われる
そして、このp軌道が「同じ向きで平行」に並ぶ必要がある

4. 二重結合が回転できない理由(本題)

回転=p軌道の平行が崩れる

C=Cの片方を回転させると、p軌道がねじれて平行でなくなる
すると横向き重なりが失われ、π結合が成立しない
つまり、回転するには一度π結合を壊す必要がある

だから回転障壁が大きい

単結合の回転はσ結合を保ったまま行える
二重結合の回転は「π結合を切る」コストが必要
この差が回転できる/できないの本質

図:回転するとπ重なりが崩れてπ結合が切れる

5. 回転できないから生まれる立体異性(E/Z)

単結合:回転で同一化する(配座)

例:ブタンのanti/gauche
回転で入れ替わるので、基本は同一分子の別の姿(コンフォメーション)

二重結合:回転できないので固定される(立体異性)

二重結合の両側に置換基があると、配置が固定されてE/Z(cis/trans)が区別される
ここは「配座」と「立体異性体」を混同しないのが重要

6. 三重結合(C≡C)との比較(補強)

三重結合は σ+π+π
2本のπ結合が互いに直交しており、構造は直線(sp)
回転という概念が二重結合ほど問題になりにくいが、いずれにせよπ結合を含むため自由回転はできない

7. 反応性へのつながり(入口だけ)

π結合は電子が露出しやすい → 求核/求電子反応点になる

π電子はσより外側に広がり、攻撃されやすい
だからアルケンは付加反応を起こしやすく、カルボニルもπ結合が反応の中心になる

共鳴は「π系が連続している」から起こる

π結合と孤立電子対がつながると、電子が動かせる(共鳴)
これは「二重結合は回転できない」と同じく、p軌道の向き(平行性)が本質

よくあるミスと対策

「二重結合は強いから回転できない」で止める

強い/弱いではなく、π結合が横向き重なりで、向きがズレると消えるのが本質
回転=πを壊す、という一文に落とすと強い

配座と立体異性を混同する

練習問題(演習)

問題1|単結合が回転できる理由を、σ結合の性質から一言で説明してください。

解答:
σ結合は結合軸に沿った正面衝突で、回転しても軌道の重なりが大きく崩れにくく、結合を保ったまま回転できるため

問題2|二重結合が回転できない理由を、π結合の性質から一言で説明してください。

解答:
π結合はp軌道の横向き重なりで、回転するとp軌道の平行が崩れて重なりが消え、π結合を壊す必要があるため

問題3|「配座」と「立体異性体」の違いを、回転可能性で説明してください。

解答:
配座は単結合回転で相互に変換できる同一分子の姿
立体異性体は(例:二重結合)回転できないため相互変換が困難で、別の異性体として区別される

問題4|二重結合を持つ炭素が一般にsp2である理由を一言で。

解答:
sp2混成なら未混成p軌道が1本残り、それ同士の横向き重なりでπ結合を作れるため

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