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ホスフィン官能基の構造・電子性・合成・反応・配位子応用まで徹底解説

ホスフィン(phosphine)は、三価のリン(P)原子に3つの置換基(R)が結合した官能基で、一般式は –PR₃ で表されます。
有機化学では還元剤として、また有機金属化学では金属配位子(リガンド)として極めて重要な役割を担っています。

この記事では、ホスフィンの基本構造、電子的性質、主な合成法、反応性、配位子としての機能、さらにはクロスカップリングやアズール反応など触媒反応への応用について解説します。

ホスフィンの構造と特徴

基本構造

R₃P(例:PPh₃、PMe₃)

ホスフィンとアミンの違い

ホスフィンの電子特性と分類

電子供与性(σドナー)とπ受容性(πアクセプター)

立体特性:円錐角(cone angle)

代表的ホスフィン化合物

ホスフィンの合成法

① PCl₃のアルキル化

PCl₃ + 3 R–MgBr → PR₃ + 3 MgBrCl

② アリールリチウムとの反応

PCl₃ + 3 PhLi → PPh₃

③ 工業的には加水素化リン(PH₃)を中間体に使用

ホスフィンの反応性

① 酸化反応

PR₃ + O₂ → OP(=O)R₃(ホスフィンオキシド)

② 還元剤としての使用

③ リン–カルベン類縁体の中間体形成

Ph₃P=CH₂ → Wittig試薬

ホスフィンの配位子としての機能

金属中心との結合

配位子チューニングの自由度

代表的金属–ホスフィン錯体

ホスフィンの触媒応用例

① スズクロスカップリング(Stille反応)

Ar–SnBu₃ + Ar'–X + Pd(0)/PR₃ → Ar–Ar'

② スズレス反応(Suzuki–Miyaura反応)

Ar–B(OH)₂ + Ar'–X + Pd(0)/ホスフィン → Ar–Ar'

③ ヘック反応

Ar–X + CH₂=CH–R + Pd(0)/ホスフィン → Ar–CH=CH–R

④ 不斉触媒反応

ホスフィンの安全性と取扱い

まとめ:ホスフィンは電子制御・反応設計に欠かせない有機リン官能基

次回は「ホスホン酸エステル(–P(=O)(OR)₂)」をテーマに、ホスホン酸との違い、反応性、用途、神経毒性との関係まで解説していきます。

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