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スルホン酸官能基の構造・酸性・合成・反応・応用まで徹底解説

スルホン酸(sulfonic acid)は、有機化学の中でも特に酸性の強い官能基として知られ、構造式は–SO₃Hで表されます。
硫黄原子が酸素と結合し、強い電荷偏りと共鳴安定化をもつため、その酸性度はカルボン酸よりもはるかに高い(pKa ≈ –1)という特徴があります。

また、スルホン酸基は反応性に優れ、多くの化合物へ導入されるほか、界面活性剤、医薬品、ポリマー、色素などへの応用が広がっています。

スルホン酸基の構造と電子特性

スルホン酸基は、硫黄原子(S)に3つの酸素原子と1つの炭素基が結合した構造です。
構造式は以下の通り:

R–SO₃H

このような構造により、スルホン酸基は水に非常によく溶ける性質を持ちます(特に塩形態で顕著)。

スルホン酸の酸性

スルホン酸は、pKaが–1前後という極めて強い酸性を示します。
これはカルボン酸(pKa ≈ 4~5)やフェノール(pKa ≈ 10)よりも格段に強く、水中でも完全に電離するため、強酸(Strong acid)に分類されます。

酸性の理由

スルホン酸の合成法

① 芳香族スルホン化

もっとも基本的かつ工業的に利用される合成法。
芳香環に濃硫酸または発煙硫酸(SO₃/H₂SO₄)を作用させることで、スルホン酸基が導入されます。

Ar–H + SO₃/H₂SO₄ → Ar–SO₃H + H₂O

② アルカンのスルホン化

高温・高圧下で、直鎖アルカンとSO₃を反応させることでアルキルスルホン酸を合成(界面活性剤の合成に利用)

③ スルホン酸エステルや塩への変換

スルホン酸の主な反応

① スルホン酸塩の形成

酸塩基反応により、安定なスルホン酸塩(–SO₃⁻M⁺)を形成。これにより水溶性や界面活性が向上します。

② スルホン酸エステルの形成

R–SO₃H + R'–OH → R–SO₃R' + H₂O

代表例:トシルエステル(Ts–OR) → 脱離基として有効(有機合成で重要)

③ 求電子置換反応の可逆性

④ クロスカップリング反応への活用

芳香族スルホン酸塩は、金属触媒存在下でクロスカップリングに用いられることもあります(条件次第)

スルホン酸基の応用例

① 界面活性剤

② 固体電解質・高分子材料

③ 医薬品原料・化学品合成

④ 染料・顔料

スルホン酸の安全性と取扱い

まとめ:スルホン酸は強酸性と高反応性を兼ね備えた多機能官能基

次回は「チオール(–SH)」をテーマに、構造・反応性・酸性・酸化反応・生体機能(システインなど)について詳しく解説していきます。

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